バイデン政権で日本の基幹産業も激変―日本車は絶体絶命のピンチに?

2017年北米自動車ショーを視察するバイデン氏(写真:ロイター/アフロ)

 今秋の米国大統領選でバイデン氏が次期大統領となったことで、「100年に一度の大変革期」と言われる自動車業界の激変はますます加速することになる。バイデン政権の下、米国はかつてない規模での温暖化対策を行うこととなり、現在のガソリンや軽油などを燃料とする内燃機関を持つ車(ICE)から、電気自動車などの走行中にCO2を排出しないゼロエミッションカー(ZEV)への移行を進めるからだ。また、来年2021年から、欧州で車メーカーごとのCO2排出量が規制されるCAFE規制が始まり、実質、「脱ICE」、ガソリン/ディーゼル車への規制となる。さらに、今や世界最大の自動車市場である中国も「2035年までに販売台数に占める新エネルギー車の割合を50%以上とする」という自動車技術ロードマップを今年11月に発表した。こうした中、日本の自動車メーカーにとっても今後、厳しい試練が待ち受けているといえるだろう。トヨタのプリウスなどハイブリッド車では実績のある日本の自動車メーカーであるが、電気自動車では、日産が大健闘しているものの、日本全体としては米国や中国、欧州のメーカーの後塵を拝しているのが現実だ。日本の基幹産業は、正に大きな岐路に立っているのだ。

○バイデン政権で自動車業界が激変する

 温暖化防止のための全世界的な取り組みであるパリ協定から離脱したトランプ政権と異なり、バイデン次期大統領は、むしろ温暖化対策を「クリーンエネルギー革命」だとして最優先政策の一つとしている。パリ協定への復帰は勿論、CO2を排出しない経済・社会の実現のため、200兆円以上の財政支出を行うと、その公約で明言している。電気自動車などのZEVの推進はその具体策の一つだ。

米国では、既にカリフォルニア州でギャビン・ニューサム知事が同州内におけるガソリン車の新車販売を2035年までに禁止すると発表し、同年までに州内で販売する全ての新車をZEVとすることを義務付けるとの知事令を今年9月に発令している。また、同州はトランプ政権の下で緩和された自動車の排ガス規制に対し、より厳格な規制を適用すべく、トランプ政権と対立していたが、バイデン政権はカリフォルニア州にならい、米国での排ガス規制を強化していくだろう。米国では、オバマ政権の下で、2022~2025年製の自動車の温室効果ガス排出量を毎年5%ずつ削減する基準が制定されていたが、トランプ政権の下で毎年1.5%ずつの削減に緩和された。これに対し、バイデン氏はオバマ政権時より温室効果ガス排出量の削減量を厳しいものとするとしている。さらに、電気自動車の普及のネックとなっていた充電インフラの不足に対し、2030年末までに50万台を超える新しい公共の充電器を設置することで対応するとしている。このインパクトは非常に大きい。さらに連邦政府調達で4年間に4000億ドルの米国製品を購入する「バイ・アメリカン」政策の一環として、公用車300万台を、全て電気自動車に買い換えるともしている。また、オバマ政権によって定められた、電気自動車一台あたり最大で7500ドル(本稿執筆時点で約78万円)の税控除で各メーカーあたり20万台としていた上限を拡大することも大きい。消費者にとっては事実上のキャッシュバックとなるからだ。正に電気自動車のメーカーにとっては強力な追い風となる。

 米国は、日本からの自動車の輸入国として、常に首位をキープしてきた。2019年の統計でも、中国、オーストラリアなど、2位以下10位までの国々の日本車輸入合計額を、米国(全体の約35.8%、約4兆2889億円)が一国だけで上回っている。その米国が本格的にガソリン/ディーゼル車から電気自動車へとシフトしていくのなら、自動車メーカーのみならず日本経済自体へも影響を与えるのかも知れない。

○脱ガソリン/ディーゼル車の国際的な流れ

 ガソリン/ディーゼル車から電気自動車へのシフトは、来年から欧州で本格的に施行される極めて強力な燃費規制によっても促されることだろう。

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パレスチナやイラクなどの紛争地での現地取材、脱原発・自然エネルギー取材の他、入管による在日外国人への人権侵害、米軍基地問題や貧困・格差etcも取材、幅広く活動するジャーナリスト。週刊誌や新聞、通信社などに寄稿、テレビ局に映像を提供。著書に『13歳からの環境問題』(かもがわ出版)、『たたかう!ジャーナリスト宣言』(社会批評社)、共編著に『原発依存国家』(扶桑社新書)、『イラク戦争を検証するための20の論点』(合同ブックレット)など。イラク戦争の検証を求めるネットワークの事務局長。

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