日常的に「違法ウナギ」を食べる日本人―魚を食べ続けるため、何をすべきか?

シラスウナギの密猟 比で業者を摘発(写真:ロイター/アフロ)

 絶滅が危惧されているにもかかわらず、「土用の丑の日」といったスーパー等小売店での大量販売、大量廃棄が問題となっているニホンウナギ。生物種の保全、漁業資源の持続可能な利用という観点から大いに問題であるだけでなく、これらのウナギは実は、その約半分が不適切に漁獲・流通している「違法ウナギ」なのです。今回の定期購読記事では、日本人の食生活に重要な海産物をいかに適切かつ持続可能に消費していくのかについて論じていきたいと思います。

◯ウナギとIUU漁業

 先日、シラスウナギ(ウナギの稚魚)の密輸出を計画した男達が逮捕された事件は、日本のウナギ消費の闇を考える上で、極めて示唆に富むものです。報道によれば、大阪府警が、シラスウナギを不正に香港へと持ち出そうとしたとして、男7人を関税法違反で逮捕したとのことです。調べに対し、男達は「以前から国外へ持ち出していた」と供述しているとのこと。以前から、実際にはウナギの漁獲が行われていない香港から輸入されるシラスウナギが「違法ウナギ」である可能性の高いことが指摘されていましたが、今回の逮捕及び供述から、「違法ウナギ」の密輸ルートが解明されることが期待されます。

 世界中の海で、漁業資源の枯渇が懸念されつつある中で、IUU漁業を撲滅することの必要性が叫ばれています。IUU漁業とは、違法(Illegal)・無報告(Unreported)・無規制(Unregulated)な漁業のこと。FAO(国連食糧農業機関)によれば、世界の海洋水産資源は、2015年の時点で十分な資源量があり、増産余力のある海産物はわずか7%にまで低下しているとのことです。そのため、漁獲の適切な管理が求められているのですが、FAOによればIUU漁業の水揚げは最大で年間2600万トンにも及ぶとされます。日本全体の漁獲量は約327万トン(2017年統計)ですから、いかにIUU漁業が蔓延り、環境に負荷を与えているかが推して知るべきでしょう。

水産庁ウェブサイトから 世界の水産資源状況
水産庁ウェブサイトから 世界の水産資源状況

 IUU漁業というと、つい先日も中国の「暗黒船団」による大規模なスルメイカの乱獲が国際的なニュースとなりましたが(関連記事)、実は日本もIUU漁業と無縁ではありません。とりわけ日本では、ウナギの養殖とIUU漁業の関連が疑われています。絶滅危惧種であるニホンウナギは、ほぼ全てが養殖で生産されていますが、稚魚(シラスウナギ)の人工ふ化技術は商業的には確立しておらず、河口で採取した稚魚や、海外から輸入した稚魚を養殖池に放流して育てられています。しかし報告されたシラスウナギの漁獲量と養殖池に放流された量(池入れ量)には、輸入量を差し引いても大きな開きがあり、IUU漁業によるものだと考えられています。水産庁の統計によると、2010年から2019年にかけてのニホンウナギの稚魚のうち、漁獲の報告のない「国内採取」、つまりIUU漁業の割合は、平均で3割、多い年で5割以上だとのことです。さらに、輸入されている稚魚もその約半数がIUU漁業によるものだとの疑いがあります。輸入元の大半が、実際にはウナギの漁獲が行われていない香港からなのです。この「香港のシラスウナギ」は、「違法ウナギ」である可能性が高いのです。

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パレスチナやイラクなどの紛争地での現地取材、脱原発・自然エネルギー取材の他、入管による在日外国人への人権侵害、米軍基地問題や貧困・格差etcも取材、幅広く活動するジャーナリスト。週刊誌や新聞、通信社などに寄稿、テレビ局に映像を提供。著書に『13歳からの環境問題』(かもがわ出版)、『たたかう!ジャーナリスト宣言』(社会批評社)、共編著に『原発依存国家』(扶桑社新書)、『イラク戦争を検証するための20の論点』(合同ブックレット)など。イラク戦争の検証を求めるネットワークの事務局長。

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