【スクープ】激白!テレ朝の闇―セクハラ隠蔽、労働争議へ報復、民放労連脱退の「真相」とは

テレビ朝日本社(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

 在京キー局の労働組合としては、初の脱退―テレビ朝日労働組合が、日本民間放送労働組合連合会(民放労連)からの脱退を申し入れ、今月25日の民放労連の定期大会で承認されたことは、各メディアで一斉に報じられた。これらの報道では、「活動方針の違い」「組合費の負担軽減」が主な脱退の理由とされている。だが、筆者が複数のテレビ朝日関係者らに聞くと、「真の原因」はテレビ朝日の人気報道番組「報道ステーション」の元チーフプロデューサーのセクハラに端を発する、同番組の社外スタッフ派遣切り問題にあるのだという。

◯報ステ派遣切り問題の集会に報復

 今月25日、民放労連の定期大会で新たに中央執行委員長に就任した高木盛正氏(TBS労組委員長)は、次のように発言した。

MIC(日本マスコミ文化情報労組会議)のいわゆるスポンサーへの行動が(テレ朝労連の)脱退の大きな原因だったことは間違いありません。これはちゃんと聞いております。ただ、このことがあまり大げさになると、誰にとってもよろしくないので、そのあたりはテレ朝労組さんの方で気を遣って、あまり大きな原因ではないという風にしているという風に認識をしてください」

 高木・民放労連委員長の発言にあるMICとは、新聞、放送、出版、映画等のそれぞれの労働組合の連合会等で構成された組織で、民放労連もMICの加盟団体だ。そして「MICのスポンサーへの行動」とは、テレ朝の看板番組「報道ステーション」で、長く番組を支えてきたベテランの社外スタッフ約10人が、昨年12月、契約打ち切りを突然に宣告されたことに対し、MICが社外スタッフ支援の集会を今年2月に開催、集会宣言をテレ朝のスポンサー各社に送付したことだ。

 匿名のテレ朝関係者は「MICの行動がテレ朝経営陣を激怒させ、テレ朝労組にも抗議した」のだという。「経営陣側は"集会を開いたら週刊誌に載る、スポンサーがまたそれを嫌がる。集会は絶対だめだ"と、テレ朝労組に言っていたのです」(同)。つまり、テレ朝労組が民放労連から脱退したのは「報ステ社外スタッフ支援集会への報復」であり、それが民放労連の高木委員長のMICに対する非難めいた発言にも現れているというのである。

 高木・民放労連委員長の発言についてテレ朝労組に問い合わせると「(民放労連から)脱退してしまいましたので存じ上げません」「脱退の理由は『運動方針の相違解消』および『財政健全化』の2点です」との回答であった。また、報ステ派遣切り問題については、「私どもテレビ朝日労働組合も派遣スタッフの雇用を守るという点において、会社が派遣スタッフに対して誠意を持って丁寧に説明することや次の職場を早めに確保するために尽力することを協議の上確認しておりました」という。

 だが、あるテレ朝関係者は、こう憤る。「確かに、テレ朝労組も全く動いていなかったわけではありませんが、報ステをやめさせられた社外スタッフの人々が別の番組のスタッフとして再就職できたのは、MICが動いてくれたおかげです。感謝こそすれ、MICにテレ朝労組が逆ギレするなんて絶対におかしい」

 また、別のテレ朝関係者は「テレ朝労組が派遣切りをやめてほしいと、会社側に言ってみたけどダメでした」と言う。「それで社外スタッフの人々は、MICの方に相談するという流れになり、だからこそ、MICはテレ朝のスポンサーにも集会宣言を送ったのです」(同)。

◯セクハラ告発者潰し、"8階の意向"

 そもそも、報ステ派遣切り自体もその経緯におかしなところがあった。当時、テレビ朝日広報部は筆者の取材に対し「『報道ステーション』のリニューアルの一環」「契約を更新しないスタッフについては、別の番組への移動を派遣元の会社と話し合っている」と説明していた。だが、あるテレ朝関係者はこう語る。

 「昨年8月末にテレビ朝日社員で『報道ステーション』のチーフプロデューサー(CP)であった桐永洋氏がセクハラ問題で解任されたことが関係しているのでしょう。番組リニューアルを口実に、物言うベテラン社外スタッフ達をまとめて派遣切りした。そう、テレ朝社内では受けとめられていました」

 

 テレ朝関係者らの話を総合すると、桐永洋氏のセクハラ問題は社内調査でも明らかになっており、複数の被害者達がいたとのこと。それは報ステ担当の社外スタッフのみならず、テレ朝社員達も知っていたにもかかわらず、情報漏えいを恐れた経営陣側は、見せしめのように立場の弱い社外スタッフを番組から外したというのだ。

 派遣切りされた社外スタッフ達は、中東情勢や沖縄の基地問題、原発や災害、事件報道などに精通。森友・加計問題や「桜を見る会」関連の報道にもかかわっていたなど、まさに番組の中核を担っていた。そのため、派遣切りされる当事者である社外スタッフだけでなくテレ朝社員含めて報ステの現場は、皆、派遣切りには否定的だったという。それにもかかわらず、前出のテレ朝関係者は「誰も逆らえませんでした」と言う。「それは、テレ朝幹部含め社内で皆が"報ステ派遣切りは8階の意向"と解釈していたからです」(同)。

 テレ朝本社ビルの8階には、早河洋・テレビ朝日会長兼CEOの部屋がある。つまり、報ステ派遣切りは早河会長兼CEOじきじきの指示であると、テレ朝社内ではみなされていたのだ。

◯テレ朝に自浄能力はあるか?

 番組CPのセクハラを隠蔽するため、番組を支えてきたベテラン社外スタッフ達をまとめて「派遣切り」とし、彼らに味方したMICへの報復のために、テレ朝労組に圧力をかけた―テレ朝関係者らの証言が本当ならば、今回の民放労連からのテレ朝労組の脱退の背景にあるものは、あまりに禍々しい。筆者はテレ朝労組に以下のような質問を送った。

「テレ朝関係者への当方の取材によると、報ステ派遣切りや、同番組の政権批判のトーンダウンの背景として、早河洋・会長兼CEOの意向があると聞く。また、テレビ朝日放送番組審議会の委員長が、安倍政権の応援団を自認する幻冬舎社長の見城徹氏であることが、昨今の報ステの報道にも影響しているというのは、いくつかのメディアが指摘しているところである。テレビ朝日労働組合として、報道機関としての中立公正・客観的立場を保つために、何らかの意見(例えば、見城氏のような政権に近すぎる人間を番組審議委員会のメンバーにするべきでない等)を経営陣に申し入れているのか?」

 これに対するテレ朝労組の回答は「特に申し入れていません」というものだった。

 また、テレ朝経営陣から、派遣切りされた報ステ社外スタッフに対し、最終的にどのような説明がされたのかとの問いに対しても「経営陣から派遣スタッフに説明する場はなかったと思います」(テレ朝労連)との回答であった。

◯民放労連委員長の不審な言動

民放労連ウェブサイトのスクリーンショット
民放労連ウェブサイトのスクリーンショット

 民放労連の高木委員長の言動にも不審な点がある。上述のように「MICのスポンサーへの行動がテレ朝労連の脱退の大きな原因」と高木委員長は発言したが、報ステ派遣切りを問う集会では、MICだけでなく当時の民放労連の委員長も主催者挨拶を行っていた。そして集会宣言をテレ朝のスポンサーに送ることも、あらかじめ合意されていたことであった。それにもかかわらず、何故、高木委員長はMICだけを「悪者」にするような発言をしたのか。今月25日に催された民放労連の定期大会では、高木委員長は広告収入の減少など厳しいテレビ業界の財政事情にからみ、民放労連の会費を下げることを言及。「少なくとも労連に関しては、何千万かまだ予算を切れるところがあります」と語っている。つまり、テレ朝労組脱退の責任をMICに押し付ければ、民放労連がMICに支払う会費を大幅に削ることができる―そのような意図が働いているのではないか。筆者が問いただすと、高木委員長は「私はつい最近、委員長に就任したばかりなので、(報ステ派遣切りについては)何も知らない」「予算の削減は総合的に行うことを検討中で、MIC会費だけを削るつもりはない」との回答だった。

◯「社会の公器」として責任自覚を

 おかしいことにおかしいと声を上げた者が不当に扱われる。「報復」を恐れ、事なかれ主義に陥る。善良かつ勇気ある人間が馬鹿を見る―そのような状況の中では、メディア人として社会正義を語ることは難しいだろう。今回の記事はテレ朝を攻撃するためのものではなく、むしろ良心的なテレ朝関係者の必死の訴えに応えるべく書いたものだ。メディアは単なるビジネスではなく、人々の知る権利を保障する「社会の公器」。その責任の重さを忘れるならば、テレビ業界の凋落はいよいよ深刻なものとなるだろう。

(了)

パレスチナやイラクなどの紛争地での現地取材、脱原発・自然エネルギー取材の他、入管による在日外国人への人権侵害、米軍基地問題や貧困・格差etcも取材、幅広く活動するジャーナリスト。週刊誌や新聞、通信社などに寄稿、テレビ局に映像を提供。著書に『13歳からの環境問題』(かもがわ出版)、『たたかう!ジャーナリスト宣言』(社会批評社)、共編著に『原発依存国家』(扶桑社新書)、『イラク戦争を検証するための20の論点』(合同ブックレット)など。イラク戦争の検証を求めるネットワークの事務局長。

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