北極圏で猛暑、38度の衝撃―灼熱地獄と酸欠で人類滅亡の現実味、自然エネ躍進と森林回復は希望

ロシア北部等の北極圏の各地で異常高温 NASAのウェブサイトより

 「私たちの地球は明確な警告を発しています。早急で大胆な温暖化対策の必要性は、これまで以上に緊急性を増しています」―今月20日、北極圏であるシベリア北部のベルホヤンスクでは38度という異常高温を記録。アントニオ・グテーレス国連事務総長は、温暖化の進行している懸念、温暖化対策の必要性を自身のツイッターで訴えた。北極圏は世界平均の2倍と、温暖化の進行が著しい地域であり、また北極圏での温暖化の進行は、地球全体の温暖化をさらに進行させる恐れがある。さらに温暖化がさらなる温暖化をもたらすという悪循環を招き、人間の力で温暖化を止めることが難しくなる「温暖化の暴走」を招きうるのだ。その最悪の結末は、生存不可能な高温や、酸素不足による人類の絶滅とも言われる。今回のシベリア北部での異常高温の意味するもの、「温暖化の暴走」とは何か、その結果がもたらす危機、私達は何をすべきか等について解説する。

◯「地球で最も寒い町」で38度の衝撃

 ロシア・シベリア北部にあるベルホヤンスクは、人間が暮らす町としては、最も寒いと言われ、冬期には、マイナス67.8度という低温を記録したこともある。夏は温暖な時期もあり、今の季節の平均的な気温は20度前後だという。ところが、今月はシベリア各地で30度超えとなり、今月20日にはベルホヤンスクで38度という異常高温となった。このことは「北極圏での史上最高気温」と、各国のメディアが驚きと共に報じている。今回の異常高温は、直接の原因は南側からの暖かな高気圧がシベリア上空で停滞し続けたことだが、上空のジェット気流が大きく蛇行し、南北の暖かな空気或いは寒気が一箇所にとどまり続けることによって異常な高温や低温、さらには干ばつや大雨による水害が起きやすくなる、ということが近年、頻繁に観測されている。そのメカニズムは詳細には解明されていないものの、地球温暖化の影響であることは、多くの科学者達が同意するものである。

画像出典:https://www.climateemergencyinstitute.com
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 北極圏での温暖化の進行は極めて深刻な問題だ。なぜならば、北極圏は太陽から地球に届く熱を逃がす役割を持つ、言わば「地球の温度管理システム」だからだ。北極圏の海氷や大地を覆う雪は巨大な鏡のような効果を持ち、太陽から地球に届く光を反射し、熱を大気圏外に逃がしているのだ。しかし、温暖化により海氷や地表の雪が失われると、海や大地が熱を吸収するようになってしまい、つまり、温暖化がさらなる温暖化を招くという、悪循環に陥ってしまうのだ。

◯「温暖化の時限爆弾」が作動する?

 問題は、北極圏が膨大な有機炭素の貯蔵庫であり、気温や海水温の上昇による永久凍土やメタンハイドレードの溶解が、大気中に膨大なCO2やメタンガスといった温室効果ガスを放出させ、温暖化をさらに加速させるということであり、既にそれが起き始めているかもしれないということだ。IPCC( 国連気候変動に関する政府間パネル)の第5次報告書によれば、北極圏の有機炭素の量は「現在大気中に二酸化炭素(CO2)として存在する炭素の少なくとも2倍の量を保持している」とのことで、もし、これらがCO2やメタンガスとして大気中に大量放出されるようなことになれば、「それがさらに地球温暖化を増幅することになる」と指摘しているのである。特にメタンガスはその50%程が、北極圏やその近くの北半球に貯留されていると言われ、メタンガスはCO2の約25倍もの温室効果を持つ、強力な温室効果ガスだ。既に、シベリア等の北極圏では、永久凍土の下に眠るメタンハイドレード(氷状となったメタンガス)の融解が進み、メタンガスの放出は始まっている。また深海や陸棚(大陸周辺をとりまく、概ね水深約200mまでの浅い海域)には、膨大なメタンハイドレードが蓄積されている。この海底に蓄えられているメタンハイドレードの一部は、周囲の海水温があと数度上がると融解し始めるというのだ。こうした陸や海からのメタンハイドレードの融解について、温暖化についての著名な研究者であるジャームズ・ハンセン博士は「温暖化の時限爆弾」と評している。

画像出典:https://www.climateemergencyinstitute.com
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◯「温暖化の暴走」が進むとどうなるか

 温暖化が温暖化を招く暴走状態になった場合、一体どのようなことになるのか。2018年に亡くなった宇宙物理学者のスティーヴン・ホーキング博士はその晩年、「このままでは人類はあと100年以内に絶滅する」と繰り返し警告していた。ホーキング博士は2017年7月、英国放送協会(BBC)のインタビューで、地球温暖化防止の国際的な合意「パリ協定」から、米国トランプ政権が離脱を表明したことを博士は厳しく批判。

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Yahoo!ニュース個人アクセスランキング上位常連、時に週刊誌も上回る発信力を誇るジャーナリスト志葉玲のわかりやすいニュース解説と、写真や動画を多用した現場ルポ。既存のマスメディアが取り上げない重要テーマも紹介。エスタブリッシュメント(支配者層)ではなく人々のための、公正な社会や平和、地球環境のための報道、権力や大企業に屈しない、たたかうジャーナリズムを発信していく。

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パレスチナやイラクなどの紛争地での現地取材、脱原発・自然エネルギー取材の他、入管による在日外国人への人権侵害、米軍基地問題や貧困・格差etcも取材、幅広く活動するジャーナリスト。週刊誌や新聞、通信社などに寄稿、テレビ局に映像を提供。著書に『13歳からの環境問題』(かもがわ出版)、『たたかう!ジャーナリスト宣言』(社会批評社)、共編著に『原発依存国家』(扶桑社新書)、『イラク戦争を検証するための20の論点』(合同ブックレット)など。イラク戦争の検証を求めるネットワークの事務局長。

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