農産物の7割が依存するミツバチの危機―遅れる日本の農薬規制、欧州はネオニコ系農薬禁止進む

ドイツ・ボンでの農薬メーカー年次総会で抗議する養蜂家達(写真:ロイター/アフロ)

 生態系や人体への悪影響の懸念から、欧米での規制が進む農薬。特に近年は「世界の昆虫の50万種が絶滅の危機にある」「昆虫の消失は人類にとって大惨事となる可能性」との報告(フィンランド自然史博物館のペドロ・カルドーソ博士らの研究)がまとめられるなど、昆虫がかつてない危機にさらされていることが明らかになってきた。昆虫は、農産物を含む多くの植物の受粉に貢献しており、様々な動物のエサとなるなど、生態系を支える存在。日本での農薬規制は欧米に比較して遅れていたが、今月19付の日経新聞によれば、今年4月以降、日本でも農薬の安全性の評価が厳格になるという。そこで、今回の配信では、日本では広く使われているネオニコチノイド系農薬について各国の規制状況や、なぜ欧州などでは規制が進んでいるのかをまとめた。

今回の主な内容

・農産物の7割が依存するミツバチの危機

・ネオニコ系農薬への規制が進む欧州、遅れる日本

・昆虫以外にも悪影響

・日本の農業の未来のためにも脱農薬

◯農産物の7割が依存するミツバチの危機

 世界の昆虫の約4割が今後数十年の内に絶滅する―そんなショッキングな論文が学術誌「バイオロジカル・コンサベーション」2019年4月号)に掲載されました。これはオーストラリアのシドニー大学、クイーンズ大学の研究者らの研究で、「昆虫の大絶滅が地球の生態系に与える影響は控えめに言っても壊滅的」を警告しています。昆虫は、生態系の中で非常に重要な役割を担っています。「ポリネーター(送粉者)」、つまり、植物の花粉を運ぶ役割です。花をつける被子植物は、地球上の陸上植物の約9割を占めていますが、そのほとんどが、送粉者によって花粉を運んでもらい、繁殖しています。逆に言えば、送粉者である昆虫がいなくなってしまったら、被子植物もまた滅んでしまうのです。では、なぜ昆虫たちは絶滅の危機にあるのでしょうか。「生息地の消失」「温暖化」「外来種」などの他、「農薬の使用」が昆虫たちへの脅威としてあげられています。そして、送粉者の中でも、特に重要な役割を担っている、ミツバチたちが世界各地で大量死しており、その大きな原因として疑われているのが、ネオニコチノイド系の農薬なのです。

 ミツバチは数々の昆虫の中でも、特に優秀な送粉者です。世界食料農業機関(FAO)によれば、世界のほとんどの国の食料の90%をまかなっている100種類以上の農作物種のうち、70%以上がミツバチを経由して受粉しているとのことです。また、FAOの研究チームは、2014年10月に発表した報告書の中で、ミツバチを脅かしているのが、ネオニコチノイド系農薬であることを指摘しています。

 ネオニコチノイド系農薬とは、タバコに含まれるニコチンに似た化学物質を主な成分とする農薬です。昆虫の神経伝達を阻害(そがい)する効果があり、農薬の他、身近なところでは、園芸用の殺虫剤、ゴキブリ等の駆除剤、ペット用ノミ駆除剤にも使われています。

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パレスチナやイラクなどの紛争地での現地取材、脱原発・自然エネルギー取材の他、入管による在日外国人への人権侵害、米軍基地問題や貧困・格差etcも取材、幅広く活動するジャーナリスト。週刊誌や新聞、通信社などに寄稿、テレビ局に映像を提供。著書に『13歳からの環境問題』(かもがわ出版)、『たたかう!ジャーナリスト宣言』(社会批評社)、共編著に『原発依存国家』(扶桑社新書)、『イラク戦争を検証するための20の論点』(合同ブックレット)など。イラク戦争の検証を求めるネットワークの事務局長。

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