太陽光、風力に駆逐され原発はオワコン化ー安倍ジャパンだけが直視しないエネルギー産業の激変

日立製作所は英国での原発建設の凍結を発表した(写真:つのだよしお/アフロ)

 原発再稼働や新設を「どんどん進めるべき」―今年1月15日の定例会見での、中西宏明・経団連会長の発言は、原発がオワコン化、衰退産業化していることへの焦りから出たものだろう。安倍政権は原発輸出をその成長戦略に掲げたものの、結果は惨敗だ。中西氏が会長を務める日立製作所がイギリスで計画していた原発建設も凍結されるなど、日本の原発輸出は全案件が頓挫。その背景には、躍進する自然エネルギーを相手に、原発が競争力を失い、各国で削減・撤廃されていることがある。同月24日、公益財団法人「自然エネルギー財団」はメディア懇談会を開催。具体的なデータと共に、世界のエネルギー事情の大きな変化について、報告を行った。

○自然エネルギーと原発の明暗

 「原発の全世界の発電電力量に占める比率は、ピーク時の17%から、2017年に過去最低の10%まで低下しました」「成長を続ける自然エネルギーとは対照的です」―24日、都内で開催されたメディア懇談会で、自然エネルギー財団の石田雅也・自然エネルギービジネスグループマネージャーは、そう強調した。IEA(国際エネルギー機関)と、英エネルギー企業BPのデータを自然エネルギー財団がまとめたものによれば、全世界の発電電力量に占める原発の比率は、2017年時点で10%に対し、自然エネルギーは24%。さらに今後の予想では、2040年に原発が9%なのに対し、自然エネルギーは41%にまで上昇するというのだ。

自然エネルギー財団報告書「競争力を失う原子力発電」より
自然エネルギー財団報告書「競争力を失う原子力発電」より

 *報告書「競争力を失う原子力発電」

https://www.renewable-ei.org/activities/reports/20190123.php

○コスト増大、米国で相次ぐ原発の運転終了

 原発の競争力低下の大きな要因は、福島第一原発事故を受けての安全対策強化や建設が長期間にわたることなどによる、発電コストの増大だ。世界最大の原発大国である米国でも「近年では経済性の面で問題を抱える発電所が増えています。特に電力市場が自由化されている州では厳しい状況になっています」(石田氏)という。世界的な通信社ブルームバーグが分析したところ、2017年に全米61カ所の原子力発電所のうち、半数以上の34カ所が赤字の状態。こうした中、利益を出せなくなった原子炉の運転終了が全米各地で相次いで始まっている。

自然エネルギー財団報告書「競争力を失う原子力発電」より
自然エネルギー財団報告書「競争力を失う原子力発電」より

 「2013年以降、7つの原子炉が運転を終了し、さらに12基の原子炉運転可能な期間を残した状態で2025年までに終了することを発表しました。このほかに各州の補助金を受けられなかった場合には、10基の原子炉が運転を終了する見込みです」「新設の原子炉もわずかで、仮にそれらの新設が行われたとしても、2025年までに米国の原発の設備容量は、ピーク時の1990年と比較しておよそ15~20%の縮小する見込みです」(石田氏)。

○自然エネルギーの劇的なコストダウン

自然エネルギー財団報告書「競争力を失う原子力発電」より
自然エネルギー財団報告書「競争力を失う原子力発電」より

 原発を衰退産業化させている要因として、自然エネルギーの発電コストの劇的な低下も大きい。「コストが高い」「非効率」だと言われ続けた自然エネルギーだが、温暖化対策による普及の拡大や技術革新、価格競争などにより、近年、急速なコストダウンが進んでいる。

 「世界的な投資顧問・資産管理会社のLazardによると、電源別の発電コストをLCOE*で評価した結果、陸上風力と太陽光は原子力や石炭火力の半分以下に、さらにガス火力よりも低くなって最も経済性に優れた発電方法であることが判明しました」(石田氏)

*均等化発電原価のこと。建設費や運転維持費・燃料費など発電に必要なコストと利潤などを合計して、運転期間中の想定発電量をもとに算出される指標。

自然エネルギー財団報告書「競争力を失う原子力発電」より
自然エネルギー財団報告書「競争力を失う原子力発電」より

 新設するスピードの圧倒的な差も、原発が自然エネルギーに追いやられる要因だ。過去10年、世界で最も原発を新設してきた中国においても、風力発電が2013年の時点で原発の発電量を追い抜き、2017年にはその差は、約380億キロワット時まで開いた(自然エネルギー財団報告書より)。

○「オワコン」原発を推進し続ける安倍ジャパン

 原発の衰退産業化が世界的に顕著になっている中、なおも原発を推進し続けているのが、日本だ。昨年発表の「エネルギー基本計画」では、2030年の日本全体の発電量1兆650億キロワット時と予測、そのうち20~22%を原発によって供給することを目標としている。だが、この目標は非現実的と言えるだろう。現在42基ある国内の原子炉の内、大飯原発や伊方原発などの4基が老朽化などにより、廃炉が決定。さらに福島第二原発の4基の原子炉も廃炉される。つまり残された原子炉は34基。自然エネルギー財団の試算では、政府の2030年の電力構成目標を実現するためには「34基の原子炉を全て再稼働させ、かつ、運転期間40年を経過した老朽原発の原子炉の寿命を60年にまで延長すること、計画中の新規原子炉2基を2030年までに稼働させること」が必要だとしている

自然エネルギー財団によるメディア懇談会。筆者撮影
自然エネルギー財団によるメディア懇談会。筆者撮影

 自然エネルギー財団の報告書では政府の2030年にむけた目標は「実現しない可能性が高い」と分析。その結果として「原子力発電が目標に満たない分を化石燃料に頼らざるを得なくなる。2030 年度までに日本の温室効果ガス排出量を26%削減(2013年度比)する目標の達成が危うくなってしまう」と警鐘を鳴らしている。そのような事態をさけるためには、「(現行のエネルギー基本計画で)20~24%としている2030年の電力構成の自然エネルギーの目標を、より引き上げること、省エネ対策を可能な限り行うこと」が必要だとしている。

○脱原発、自然エネルギーの推進を

 これまで、日本の政財界は、自然エネルギーに対し「コストが高い」「天候任せで不安定」と後ろ向きであった。だが、民主党政権時代の2012年に、自然エネルギーによる電力の固定価格買取制度が導入されて以後、日本でも自然エネルギーがようやく普及しつつある。それでも、日本の自然エネルギーは世界標準のそれに比べ発電コストは高めであるが、2020年までに実施される電力の発送電分離により、改善されることが期待できる。すなわち、現在、東京電力などの大手電力会社が独占的に握っている送配電事業が自由化されることにより、大手電力会社の一方的な都合で行われてきた自然エネルギーの電力網への接続制限や出力抑制が緩和されるならば、コストダウンにつながるからだ。また、普及が広がれば、広域での電力融通や、蓄電システムの活用により、「天候に左右され不安定」という弱点を補えることは、欧州での実例からみても明らかである。

 これまで指摘されてきた事故リスクや核廃棄物の処理などの問題に加え、経済性でも不利になってきた原発に固執するべきではない。日本としても、自然エネルギーの拡大と省エネにより、エネルギー自給と温暖化防止を両立させていくべきなのだ。

(了)