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【難民鎖国】東京入管が炎上ツイートを「削除しない」と開き直るので、国連からの勧告を列挙しますよ!

志葉玲フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)
東京入管のツイッターアカウント。その投稿が波紋を呼んでいる。

 東京入国管理局(東京入管)が、路上や橋に書かれた「FREE REFUGEES(難民に自由を)」という落書きに対し、公式ツイッターに「落書きは止めましょう」「少しひどくはないですか」との投稿をしたことが、波紋を呼んでいる。東京入管含め、法務省・入国管理局は難民に対して異常に厳しく、難民認定率は0.1%と低い上、帰国できない事情のある難民達に帰国を迫り、収容施設に無期限で拘束。被収容者へ十分な医療を受けさせず、対応の遅れからの死亡例も幾度も起きている(関連情報)。これらの問題についての国連から度重なる是正勧告を受けているにもかからわらず、制度も運用も改善されていない。そのため、東京入管のツイッターには「落書きより人権侵害の方が酷いのでは」等の批判コメントが殺到する「炎上」状態となり、こうした状況をイギリスの有力紙「ガーディアン」も取り上げている。

◯東京入管の投稿に批判殺到

 騒動の発端は、東京入管の公式ツイッターアカウントでの、今月20日の投稿だ。

 東京入管はこの投稿を公式アカウントのトップに固定している。固定ツイートは、タイムラインの中で流されず、アカウント上では常時閲覧できることから、東京入管がこの投稿をアピールしたいということがうかがい知れる。

 筆者の取材に対し、東京入管は「福山宏・東京入管局長を含む幹部で話し合ってツイッターで注意喚起することにした」と回答。また、落書きには入管の文字は無いにもかかわらず、なぜ東京入管が反応したかについては、「内容から、また品川駅から東京入管への経路にあったことから、我々に対する意見だと判断した」という。

 確かに、落書きは迷惑行為であり、器物損壊罪の適用対象とされることもある。だが、東京入管を含む法務省・入国管理局の難民への冷遇ぶり・人権軽視は、国内外の人権団体や弁護士、そして国連の人権関連の各委員会からも批判されているだけに、東京入管の投稿は、猛烈な反発を買った。

 東京入管の投稿には英紙ガーディアンも反応。同紙は、2017年に1万9628件の難民申請があったにもかかわらず、難民として認定されたのは、たった20人であったことや、2015年に安倍晋三首相が国連での記者会見でシリア難民の受け入れを問われた際、「人口問題としては女性や高齢者の活躍が先」と答えたこと関連情報)にも触れながら、東京入管に批判が殺到していることをとりあげている。

◯度重なる国連から日本への勧告

 日本の難民の状況や入管の問題に詳しい児玉晃一弁護士は、今回の東京入管の投稿に対し、以下のようにコメント。

 児玉弁護士は、自身の事務所ブログで、日本の入管に対する国連の人権関連の委員会の勧告をまとめている(関連情報)。それを要約すると、

・自由権 第4回政府報告書審査(1998年)

 収容されている者に対する暴力及びセクハラ、長期収容等を指摘。

・人種差別撤廃第1・2回政府報告書審査(2001年)

 難民への相当な生活水準と医療についての権利を確保すること等を勧告。

・拷問等禁止 第1回政府報告書審査(2007年)

 入管に「難民ではない」とされた人々が拷問を受ける恐れのある国へ強制送還されることを懸念。「難民認定申請を二次的に審査する独立機関を設置すべきである」と勧告。

・自由権 第5回政府報告書審査(2008年)

 2006 年改正出入国管理及び難民認定法が、拷問の危険がある国への難民申請者の送還を明文で禁止していないこと、申請の数に対し難民認定の割合が低いままであること、難民認定手続にかなりの遅延があり、その間申請者は就労を禁じられ、かつ、限られた社会扶助しか受けられないこと等を懸念。

・人種差別撤廃第3・4・5・6回政府報告書審査(2010年)

 「一般国民の難民問題に関する理解不足のほか、難民達が庇護に関する情報を適切に入手できないこと、手続についての理解不足、言葉及びコミュニケーションの問題及び文化の分断」等を懸念。

・拷問等禁止 第2回政府報告書審査(2013年)

 難民を迫害の恐れのある国へ送り返すことを禁じる絶対的な原則であるノン・ルフールマン原則に、入管関連の立法及び運用を一致させるようにすることを勧告。難民認定申請者を入管の収容施設に収容することについても「最後の手段としてのみ使われ、収容が必要な場合でも収容期間を可能な限り短くするようにして、上限を導入すること」等を勧告。

・自由権 第6回政府報告書審査(2014年)

 退去強制中の不当な扱いによる死亡事件(関連情報)に懸念。出入国管理及び難民認定法の改正にもかかわらず、ノン・ルフールマン原則が実際には実効的に実施されていないことや、収容決定に係る独立した審査もない中での長期にわたる行政収容があることを懸念。

・人種差別撤廃第7・8・9回政府報告書審査(2014年)

 難民及び庇護希望者に関する自治体や地域社会の間の差別撤廃を促進すること、収容の代替措置を優先すべきことを勧告。

・人種差別撤廃第10−11回政府報告書審査(2018年)

 極めて低い難民認定率に懸念。「過去の勧告の繰り返しになるが」と強調した上で、難民認定申請者の収容について「最後の手段」「最短期間」、「収容の代替措置を優先的に行うべき」と勧告。

◯「投稿削除しない」と開き直り、国連の勧告には「お答えできない」

 「難民に自由を」という落書きを批判する前に、東京入管はその難民への対応が、国連の人権関連の委員会から何度も批判され、勧告を受けていることを受け止めるべきではないか。筆者が東京入管に聞くと「それについては我々はお答えできる立場ではない」(東京入管・総務課)とはぐらかす。難民受け入れについての政策は、日本政府自体の問題ではあるとはいえ、十分な医療を受けさせないで死に至らしめる、自殺未遂した被収容者を懲罰房に閉じ込め、さらに精神的に追い詰める等の東京入管の振る舞いは、やはり責任を問われるものだ。問題のツイートについても「削除はしない」と東京入管は開きなおる。

 日本に逃げてきた難民達の支援を行っている弁護士達がつくる「全国難民弁護団連絡会議」は、今国会での入管法改正案審議を受けて、難民認定の審査の業務を法務省・入国管理局から切り離し、難民の庇護について独立した専門性を有する機関を新たに創設すべき、と政府に要請している(関連情報)。もはや、難民に関わる業務を行う資格がないと断じられていることを、福山宏・局長はじめ東京入管の職員一同は、もっと深刻に受け止めるべきであろう。

(了)

フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)

パレスチナやイラク、ウクライナなどの紛争地での現地取材のほか、脱原発・温暖化対策の取材、入管による在日外国人への人権侵害etcも取材、幅広く活動するジャーナリスト。週刊誌や新聞、通信社などに写真や記事、テレビ局に映像を提供。著書に『ウクライナ危機から問う日本と世界の平和 戦場ジャーナリストの提言』(あけび書房)、『難民鎖国ニッポン』、『13歳からの環境問題』(かもがわ出版)、『たたかう!ジャーナリスト宣言』(社会批評社)、共著に共編著に『イラク戦争を知らない君たちへ』(あけび書房)、『原発依存国家』(扶桑社新書)など。

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