3.11 原発事故「棄民」の日本政府に国連が突き付けた勧告―「誠実な対応を」NGOや避難者が訴え

今月8日に行われた原発事故対応の勉強会で展示された巨大な折り鶴。筆者撮影

 今日11日で、東京電力の福島第一原発事故(2011年3月11日)から、7年となる。これに合わせ、今月8日、参議院議員会館で、環境NGOや人権団体、原発事故の自主避難者などによる勉強会が催された。勉強会では、国連の人権審査による東電福島第一原発事故関連の勧告を中心に、自主避難者の現状や、今なお放射能汚染の深刻な福島県浪江町・飯舘村での調査結果が報告され、日本政府が国連の勧告をただちに実行することを求める声が相次いだ。

〇原発事故対応への国連勧告とは?その内容

 昨年11月、国連人権理事会の普遍的定期的審査(UPR)では、原発事故関連で日本政府に対し、各国から以下のような勧告が行われた。これは、国際社会が、現在も原発事故後の日本の対応に関心を持ち、かつ大いに懸念していることの現れである。

・「福島県の放射線量が高い地域からの自主避難者に対し、住宅面、経済面その他の生活援助、事故当時子どもだった人への定期的な健康モニタリングなどの支援を継続すること」(オーストリア)

・「男性、女性両方に再定住に関する意思決定プロセスへの、完全かつ平等な参加を確保するため、福島第一原発事故の全ての被災者に、国内避難民に関する指導原則を適用すること」(ポルトガル)

・「許容放射線量を年間1ミリシーベルトに戻し、避難者及び住民への支援を継続することによって、福島県に住んでいる人々、特に妊婦および児童の心身に対する最高水準の権利を尊重すること」(ドイツ)

・「福島第一原発事故の被災者および何世代もの核兵器被害者に対し、医療、サービスへのアクセスを保証すること」(メキシコ)

 これらの中でも、とりわけ国連人権理事会で反応が大きかったのは、ドイツからの勧告だと、国際環境NGO グリーンピース・ジャパン広報の城野千里氏は報告。「避難解除の基準の年間被ばく量が、(ICRP=国際放射線防護委員会の定める年間被ばく許容量の)1ミリシーベルトではなく、20ミリシーベルトであることが、非常に驚かれ、かつ懸念されていました」(同)。

〇現在も深刻な飯舘南部、浪江の汚染

原発事故対応についての国連勧告勉強会。筆者撮影。
原発事故対応についての国連勧告勉強会。筆者撮影。

 国連UPR勧告に対し、今月16日に日本政府は正式な態度表明をするが、原発関連の4つの勧告については、今月5日、「受け入れる」と外務省は発表している。

 グリーンピース・ベルギーの放射線防護専門家ヤン・ヴァンダ・プッタ氏は、「避難基準を1ミリシーベルトへ引き下げることを、日本政府は『長期目標』とし、いつまでに引き下げるかを定かにしていませんが、UPR勧告を受け入れた以上、今すぐに引き下げるべきです。事故後7年を経過し、各地の放射線量が減衰した現在、一部の地域を除けば、年間被ばく量を1ミリシーベルト以下に抑えることは達成可能です」と訴えた。

 他方、昨年9月から10月にかけ行った詳細な調査を下に、プッタ氏は「飯舘村南部や浪江町の津島、室原、末森、大堀の各地区は今なお、放射線量が極めて高く、これらの地域の避難指示解除はすべきではありません」とも指摘する。「年間1ミリシーベルト以下まで、放射線量が下がるには、飯舘村南部や浪江町津島では今世紀半ば、大堀では来世紀初頭までかかります。山林に囲まれている地域では完全な除染は難しく、効果も限定的で、飯舘村南部での定点観測では2016年に比べ、2017年の方が空間線量が上がっているスポットもありました」(同)。

【動画】事故7年目の我が家へ 福島県浪江町- 菅野さんのストーリー

〇住宅支援打ち切りで困窮する自主避難者

 年間20ミリシーベルト以下ではあるものの、事故以前にくらべ空間線量が高い地域から避難した、いわゆる自主避難者の状況も厳しくなっている。「避難の協同センター」代表世話人で、原発事故後、福島県郡山市から神奈川県へと娘と共に避難している松本徳子氏は「2017年3月末に福島県による住宅無償支援が打ち切られ、自主避難者は皆、生活が苦しくなっています」と訴えた。多くの場合、自主避難は母子避難であり、「貧困に陥るケースが多い」と松本氏は語る。「避難の協同センター」が確認したところ、福島県からの自主避難者が多い山形県では、行政への自主避難者の相談内容の約7割が「生活資金」なのだという。本来、自主避難者は「原発事故子ども・被災者支援法」での支援対象とされており、日本政府はUPR勧告に対しても、そのように答えているが、松本氏は「はっきり言って支援は全然行われていないのが実情です」と指摘する。

〇原発事故被災者の健康の権利を守れ

 自主避難者への支援を行わず、避難基準となる被ばく限度量も年間20ミリシーベルトから1ミリシーベルトへとすぐに引き下げない―そうした国や福島県の対応は、UPR勧告でその適用が求められた「(国連の)国内避難民に関する指導原則に反することです」と伊藤和子弁護士(特定NPO法人ヒューマンライツ・ナウ事務局長)は指摘する。「避難している女性やこどもの苦難、苦しみながら福島県で子育てをいているお母さんたちの声は、残念ながら政治に反映されていません」(伊藤氏)。

国内避難民に関する指導原則15 国内避難民が有する権利(d) 自らの生命、安全、自由もしくは健康が危険にさらされるおそれのあるあらゆる場所への強制送還または当該場所における再定住から保護される権利

 また、福島県で行われてきた県民健康調査が今後縮小されていくことに関しても、UPR勧告と矛盾するのではないか、伊藤氏は指摘。「今回の勧告に先立つ、2015年の国連健康に関する権利特別報告者のアナンド・グローバー氏による勧告では、福島県に限定せず年間被ばく量が1ミリシーベルトを超える地域での、甲状腺がん調査のみならず包括的な健康調査を行うべきだとしているのですが、こうした勧告を日本政府は無視したままです」(伊藤氏)

〇勧告を受け入れたふりは許されない

原発事故直後の福島第一原発。筆者撮影。
原発事故直後の福島第一原発。筆者撮影。

 この間、原発事故被災者側に立って、様々な訴訟や被災者支援に関わってきた海渡雄一弁護士は「日本政府が原発事故関係のUPR勧告を受け入れたことは、喜ばしいことですが、一方で、UPR勧告に対する日本政府の返答を読むと、受け入れたふりだけして、勧告されたことを実際には実行しないのでは、とも懸念しています」と語る。「(原発事故対応に関する)今までの政策で十分ですと言いながら、勧告を受け入れたかのようなふるまうことは、正に国際社会に対して二枚舌を使うことになります。勧告を受け入れるとした以上、国際社会の監視もより厳しくなる。本当に勧告されたことを実行していくのか、私達としても注視して発信していきたいと思います」(海渡氏)

 あの史上最悪レベルの原発事故から、7年。原発事故を忘れないということは、毎年3月に関連ニュースを報じるだけではなく、原発事故の対応について、きちんと監視・検証していくということなのだろう。筆者も報道に関わる者の端くれとして、肝に銘じておきたい。

(了)