上川陽子法相の欺瞞「難民申請の厳格化・効率化」―実際は難民締め出し強化

東京入管に拘束されている家族の解放を求めるクルド難民達。筆者撮影。

 難民条約の義務を果たさず、迫害から逃れてきた人々を冷遇する人権後進国―日本の難民受け入れの実態は、今年、ますます悪化しそうだ。今月12日、法務省は、日本国内で難民認定を申請する外国人の急増を受け、難民認定制度の新たな運用を始めると発表した。法務省は「難民申請の審査の効率化や乱用防止の厳格化が目的」と説明するが、今回の運用の変更は難民受け入れ強化にはつながらないと、専門家らは見ている。

〇実態は「強制退去の効率化」

 今回の運用変更の大きなポイントとして、難民申請者を書類審査で2か月以内に以下の4種に振り分けることがある。すなわち、

【A案件】保護の必要性が強い案件

【B案件】難民条約上の迫害事由に明らかに該当しない事情を主張している案件

【C案件】再申請で、正当な理由なく前回と同様の主張を繰り返している案件

【D案件】上記以外の案件

と区分した上で、Aには、速やかに在留資格と就労許可を与える一方で、BとC、再申請のDには在留資格を与えず、審査と並行して、強制退去の手続きを進めるという。一見、「難民認定の効率化」につながるようにも見える。だが、その実態は、現行の出入国管理法で「申請中は強制送還されない」と定められた難民申請から、申請者の多くを締め出して、すみやかに強制退去の手続きに移行させるという、「強制退去の効率化」というべきものだ。

 日本での難民らの申請等の支援をしている弁護士のネットワーク「全国難民弁護団連絡会議」(全難連)は、今回の法務省の運用変更に強い危惧を抱いているという。そもそもの問題として、日本の難民申請の審査では、祖国での迫害の恐れが強い、難民性の高い人々も、難民として認定されづらい、という問題がある。全難連は、その声明の中で、以下のように指摘する。

「実際、日本で不認定を受けた後に他国で庇護申請をして難民認定を受けたり、ある集団の構成員からの申請で他国ではその集団の構成員であることさえ確認できれば難民認定を出しているのに、日本では何度もインタビューして長い時間をかけて不認定としたりする例が後を絶たない」(全難連)。

  

 A案件以外の再申請に対し、一律に在留制限をしているのも大問題だ。

「迫害の恐れがありながら、入管当局側から、『難民でない』とされた人たちが、自国に帰れず、やむを得ず再申請したら『濫用・誤用』とされてしまう」と全難連は指摘する。難民申請の審査の透明化や、不認定ありきの姿勢自体を見直すことも必要だろう。

 また「明らかに難民に該当しない」とするB案件については、法務省は「母国での人間関係・金銭トラブルや就労目的を想定」としているが、実際には、難民条約上の理由に該当しうるケースも、B案件にされることを、全難連は懸念している。例えば、同性愛者への迫害や部族間の衝突などが「私的なトラブル」として、B案件として処理されてしまうことだ。

 難民申請者自身が、自分がAからDのどれに振り分けられたかが確認できないという問題もある。

「適正な手続きが確保されるためには、本人にどの分類に振分けられたのか伝えられ、B案件やC案件に振り分けられた場合には、振り分けた理由の教示とともに釈明の機会が与えられなければならない」(全難連)。

〇上川法相は「難民の受け入れを消極的にするという趣旨ではない」と言うが

 法務省は、今回の運用変更について「難民の受け入れを消極的にするという趣旨ではない」(上川陽子法務大臣)と強調し、マスコミもそうした主張を批判的な分析もせず、たれ流しているが、実際には、「真の難民の迅速かつ確実な保護」についての具体策は何もない一方で、難民申請の再申請を「濫用・誤用」とし、強制退去の手続きを効率化するというものが、その実態だろう。それは、ただでさえ「難民に冷たい」と諸外国から評される日本の難民受け入れが、ますます消極的なものになることに他ならない。

 紛争地から命からがら逃げてきた人々を不当に拘束し、迫害の待つ祖国に追い返すということを、日本はいつまで続けるのか。政府与党は勿論のこと、野党側の国会議員も、今回の法務省の運用変更が果たして妥当なものなのか、今国会で取り上げるべきだろう。

(了)