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【加計問題】「危険なウイルスの漏出100%起きる-専門家が指摘」、内部文書公開の市民団体が警告

志葉玲フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)
内部文書について報告する「今治加計獣医学部問題を考える会」の黒川氏(中央)。

 安倍首相の友人が理事長を務める学校法人加計学園による獣医学部の新設が、安倍首相の強い意向で進められていた疑惑に関連して、また新たな問題が浮上した。加計学園の獣医学部が建設中の愛媛県今治市の市民団体「今治加計獣医学部問題を考える会」の黒川敦彦共同代表は昨日23日、獣医学部校舎の図面を公開。さらに同日都内で行われた民進党の加計問題調査チームの会合で、「危険なウイルスや病原菌の漏出対策が不十分で、重大なバイオハザード(生物災害)が100%起きると、図面を見た専門家達から指摘された」と報告。「獣医学部周辺の住民にとっては大変重大な問題」と懸念した。

◯結核菌や鳥インフルエンザetc人にも感染する危険なウイルスを管理できるか?

 加計学園が建設をすすめる獣医学部は、バイオセーフティレベル3(BSL3)、つまり、バイオハザード対策の管理レベルの厳しさが上から二番目の研究施設を持ち、家畜などの感染症についての研究を行うとしている。これに対し、当初から、結核菌や狂犬病、鳥インフルエンザなどの人にも感染する危険なウイルス・細菌を扱うことについての加計学園や今治市の説明が不十分だと感じていた黒川氏。今回、獣医学部の建設に関する図面等52枚の内部文書を入手、これらを専門家達に見せ、意見を聞いたという。匿名を条件に黒川氏の要望に応じた専門家達の答えは正に驚くべきものだった。

◯ずさんすぎる施設、学生や職員が感染の恐れ

 黒川氏に回答した国立研究所OBの意見を一部抜粋して紹介しよう。

「通常BSL3でウイルスが漏れた場合は、閉鎖の上、劇物のホルマリンなどで施設ごと殺菌消毒を行わなければならない。そのため、通常BSL3実験室は敷地で独立した建物にして隔離して建設するものである。ところが、獣医学部棟全体のどこにも、ウイルス実験で必要な法的規制を受ける、液体窒素の保管場所、毒劇物の保管場所、有機溶媒、等々の保管場所が確認出来なかった」

「加計学園の設計ではBSL3と同居するBSL2のフロア全体も封鎖・殺菌消毒をしなければならないので、ウイルスが漏れた場合、封鎖範囲が通常のBSL3よりはるかに広くなり、感染事故の拡大が防げない。しかも、BSL3実験室が教職員の研究室が並ぶ、廊下のそばに置かれており、日常的に常駐する教職員や学生の感染を防げない」

「ビルの5Fにそのような実験室を配置すると、ウイルスが漏れた場合、容易に階下の学生や教職員に感染した空気や廃液が流れ落ち、甚大な感染を引き起こすことになる」

「外部や内部からのウイルスの移動、侵入を防ぐため必須の車両消毒装置の設置がない。洗い場・準備室:実習、実験、研究用の機材の洗浄、滅菌作業の準備場所の整備が不明である」

加計学園獣医学部の校舎図面
加計学園獣医学部の校舎図面

 また、国立研究所の動物実験施設管理専門家も次のように指摘したという。

「ウイルスに汚染される、使用済みケージ、SPF清浄動物、感染動物死体部屋の空気が、同じ狭い廊下を通過する構造となっている。これでレベル3のウイルスを取り扱ったら簡単にバイオハザードがおきる」

※SPFとは、発育に悪い影響をおよぼす特定の病気に 感染していない、健康で清浄な動物のこと。

「SPFの前の廊下に『前室』とあるがコレ自体が『インチキ』。ウイルスを外と遮断するため、各部屋に入ってから前室があり、そこで着替えやサンダルの履き替えをするはず。でなければ、一か所で感染があれば、全室で動物をすべて殺処分し滅菌しなければならなくなるからである。こんなSPFでは、微生物学的清浄度はあっという間に保てなくなる。洗浄室が1か所しかなく、しかも検疫や感染エリアから遠い!」

◯周辺住民の安全のために徹底的な分析と議論を

 今回、黒川氏に回答した専門家二人は、いずれも「お粗末で手抜きなBSL3実験設備」「獣医学部の教育・研究に使用できない」と極めて厳しい評価を下している。報告を受けた、民進党の国会議員が「大学設置・学校法人審議会のメンバーの中には図面を見れる人はいないのか?」と問い質したが、文科省側は「メンバーについては控えさせて頂く」とはぐらかすなど、まともに答えなかった。

 加計学園側は、23日、報道各社に対してに書面で「実験室はBSL3の病原体を取り扱う施設の基準を満たして計画している」と反論したものの、上記のような指摘がある以上、より詳細かつ具体的な説明が求められることは必至だ。

 加計学園の獣医学部の図面は、黒川氏によって公開されており、ネットを使える人なら誰でも閲覧可能だ。

図面の公開と声明文

 地域住民の生命や安全にも関わることだけに、徹底的な分析や議論が行われるべきだろう。

(了)

フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)

パレスチナやイラク、ウクライナなどの紛争地での現地取材のほか、脱原発・温暖化対策の取材、入管による在日外国人への人権侵害etcも取材、幅広く活動するジャーナリスト。週刊誌や新聞、通信社などに写真や記事、テレビ局に映像を提供。著書に『ウクライナ危機から問う日本と世界の平和 戦場ジャーナリストの提言』(あけび書房)、『難民鎖国ニッポン』、『13歳からの環境問題』(かもがわ出版)、『たたかう!ジャーナリスト宣言』(社会批評社)、共著に共編著に『イラク戦争を知らない君たちへ』(あけび書房)、『原発依存国家』(扶桑社新書)など。

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