安倍政権と福島県の「避難者いじめ」―原発事故自主避難者への住宅支援打ち切り

福島市内をデモ行進する自主避難者やその支援団体

福島第一原発事故で避難した少年に対するいじめ問題がメディアを騒がしているが、今、原発事故で自主避難した人々の多くが、安倍政権と福島県の非情な仕打ちに苦しんでいる。内堀雅雄・福島県知事は、自主避難者への無償住宅提供を来年3月に打ち切ることを決定、安倍政権もこれに同意した。このままでは、多くの自主避難者達が路頭に迷うことになってしまう。今月4日、自主避難者たちが「住みかを奪うな」と福島市で抗議集会を行い、市内をデモ行進した。

〇自主避難者1038世帯が住まいを失う危機に!?

いわゆる自主避難者とは、強制的に避難をさせられる年間被ばく線量が「20ミリシーベルト以上」の原発事故避難区域の外であるが、高い空間放射線量から自主的に避難した人々のこと。福島県は、自主避難者たちの県内外の避難先の住居を「みなし仮設住宅」として家賃を負担してきたが、内堀知事が来年3月に支援を打ち切ることを決定。だが、自主避難者は母子での避難が多く経済的に余裕がない上、自主避難者への東電からの賠償は、最高でも「大人12万円」「子ども、妊婦72万円」という金額が一度きり支払われるだけと、わずかなものだ。今月5日に発表された福島県の調査では、住宅支援対象とされてきた1万2239世帯のうち、約1038世帯が来年3月以降の転居先が決まっていないという。県は「個別訪問などで対応していく」としているが、自主避難者たちが路頭に迷う可能性が現実味を帯びてきている。

〇安倍政権は責任を放棄

なぜ支援の打ち切りを決定したのか。福島県庁に問い合わせると、「事故当初は混乱もあり、原発事故避難区域外からの避難者への支援も行ったが、福島県の復興もすすんでおり、避難の必要性はなくなっている」とのことだ。ただ、自主避難者の人々は、「避難区域外でも健康が守られる保証はない」等と納得していない。原子炉等規制法では一般人の年間被ばく量は「1ミリシーベルト以下」にすべきとされているのに対し、福島第一原発事故後の避難基準は「年間20ミリシーベルト」と住民に原発作業員並みの被爆を許容しているからだ。そもそも、自主避難者も含め、原発事故被災者が避難するか地元にとどまるかを自己決定でき、いずれの場合も国が支援するということは、原発事故後に施行された子ども被災者支援法で定められたことだ。本来、福島県ではなく、むしろ日本政府にこそ、避難者への支援義務がある。だが、安倍政権はJRが自力で進めるとしたリニア新幹線事業に3兆円、米国が抜けて頓挫することが確実なTPPに2015年以降、1兆1900億円もの予算(関連情報)を投じてきた一方で、子ども被災者支援法関連には予算を付けない。福島県としても「政府に対し子ども被災者支援法に支援への予算配分を求めてきたが、住宅支援へは予算がつけられていない」と県の担当者は言う。来年3月の打ち切られる住宅支援の経費は約70億円。リニアやTPPなどのバラマキに比べたら、微々たる額だが、法で定められた自主避難者への支援する責任を、安倍政権は放棄している。

〇支援打ち切りこそ「避難者いじめ」

こうした中、今月4日、自主避難者への支援打ち切りに反対する集会が福島市で行われ、当事者や支援団体関係者が訴えた。福島市から北海道へ妻子とともに避難中の中手聖一さん(「避難の権利」を求める全国避難者の会)は、「避難者をじわりじわりと追い込んで、ついに打ち切りが目の前まで迫ってきました。不本意ながら福島に戻る事を決めた友人もいます」と悔しさを滲ませる。「(子ども被災者支援法に定められた)避難の権利をなし崩しにしてはいけません」(中手さん)。

涙ながらに話す松本さん
涙ながらに話す松本さん

郡山市から神奈川県に娘と共に避難している松本徳子さんは、自民党の福島県議幹部に支援継続を求めた際、「勝手に逃げたくせに、何だ」と罵倒されたことを報告。「私自身も帰りたいのに、帰れない」と涙ながらに語った。自主避難者への生活支援などを行っている「避難の共同センター」の瀬戸大作さんは「原発事故で避難した児童がいじめにあっている件で、マスコミから問い合わせがきたが、いじめは一過性の問題ではない。支援打ち切り決定などで、自主避難者が追いつめられているのに、それを放置してきたことこそ、避難者いじめだ」と憤った。集会では、「自主避難者に面会もしない、県庁前で訴えていても目も合わさない」と内堀知事の対応にも批判の声が相次いだ。

〇問われる原発事故後の日本

放射性物質の除染の費用は5兆円にも上るとみられ、税金の投入も検討されている
放射性物質の除染の費用は5兆円にも上るとみられ、税金の投入も検討されている

集会後、参加した人々は、デモ行進をはじめ、「原発事故を忘れるな」「被害者を切り捨てるな」等と書かれたムシロの旗を手に、JR福島駅や福島県庁周辺を練り歩いた。原発事故で住み慣れた故郷から泣く泣く避難せざる得なかった上に、ようやく得られた避難先での生活も脅かされている原発事故の被害者たち。一方で、原発事故対応の費用を、電力自由化で参入した新電力にも負担させるなど、原発を持つ大手電力が優遇され、避難計画や災害対策も不十分なままに原発が再稼働されようとしている。問われているのは、福島県だけではなく、この国全体の在り方なのだろう。

(了)