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まるで「天安門」、阿鼻叫喚の国会前―安保法制反対デモを警察側が過剰警備で弾圧、一部参加者の逮捕も

志葉玲フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)
16日の国会前。異常な数の警官がデモ参加者をぎゅうぎゅう詰めに。撮影:志葉玲

「どけ!どけ!」一際大きな怒号があがったかと思うと、デモ参加者を抱えた警察官らがすごい勢いで突っ込んでくる。危うく、突き飛ばされ、カメラを落とすところだった。緊迫する国会情勢を反映してか、16日の国会前の警備状況は異常な状況。取材していた筆者の頭には「天安門」という言葉がよぎった。

筆者はここ数日、毎日国会前を取材しているが、16日の警察の警備体制は明らかにいつもと異なっていた。「カマボコ」と呼ばれるバスのような大型護送車で文字通り壁を作り、抗議する人々を歩道に押し込めた。「カマボコ」と歩道の間に若干、通り道は確保されていたが、すぐにいっぱいとなり、人々はぎゅうぎゅう詰めにされ、気分を悪くする人々が続出。大多数のデモ参加者はそれでも理性的に抗議活動を続けていたものの、一部の参加者らが警察官らと押し合いになり、筆者が見ている前だけで数人が逮捕された(一部報道では「13人逮捕」)。こうした騒乱もあって、学生団体SEALDsも一時的に抗議のスピーチやコールを中断せざる得なくなった(その後、再開)。これに先立ち、「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動」の高田健さんは、マイクを握り「警察側は、ことあるごとに『事故が起きないよう規制している』と主張するが、こんな警備体制では参加者の安全はとても確保されない。警察は過剰警備をやめるべきだ!」と批難していたが、警察側の圧力はどんどん増していったのであった。

デモ参加者を拘束する警察官ら 撮影・提供:Hitohiko Shichida
デモ参加者を拘束する警察官ら 撮影・提供:Hitohiko Shichida

地下鉄の出口を塞ぎ、人々が将棋倒しになりそうになるなど、先月30日の国会包囲大規模デモでも、警察側の過剰警備に対し、同日のデモを主催した総がかり行動は「人命軽視」と強く批判、申し入れをおこなっていたが、それ以後、むしろ過剰警備はどんどん強化されていると言える。とりわけ、16日は、政府与党が一方的に審議を打ち切ると宣言した時点で抗議活動に数万人規模の参加者が集まることは予想できたはずなのに、「カマボコ」で人々を押し込めるのでは、混乱は必至だった(実際、総がかり行動の中途発表で約3万人が集まったとされる)。先月30日や今月14日、安保法制に抗議する人々が国会前に溢れかえる空撮写真は、マスコミでも大きく報道され、安保法制の成立を急ぐ安倍政権への反発の大きさを、あらためて印象づけた。現場の警官に聞くと、「今日(16日)は始めから抗議者達を溢れさせない方針だった」と言う。先月30日、今月14日の再来を防ぐため、安倍政権が警察庁に圧力をかけたのではないか、と勘繰りたくなる程の厳戒態勢だった。

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デモを行うという憲法21条などに保障された言論表現の自由を妨げ、人々の身の安全まで危機にさらすような過剰警備が、一体誰のために行われたのか。明日以降も国会前で連日抗議が予定されているが、警察側は、ともかく人々の安全や表現の自由を最大限考慮すべきであるし、この間の過剰警備の問題は国会でも追及されるべきだろう。

(了)

*写真の無断使用を禁じます。

フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)

パレスチナやイラク、ウクライナなどの紛争地での現地取材のほか、脱原発・温暖化対策の取材、入管による在日外国人への人権侵害etcも取材、幅広く活動するジャーナリスト。週刊誌や新聞、通信社などに写真や記事、テレビ局に映像を提供。著書に『ウクライナ危機から問う日本と世界の平和 戦場ジャーナリストの提言』(あけび書房)、『難民鎖国ニッポン』、『13歳からの環境問題』(かもがわ出版)、『たたかう!ジャーナリスト宣言』(社会批評社)、共著に共編著に『イラク戦争を知らない君たちへ』(あけび書房)、『原発依存国家』(扶桑社新書)など。

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