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「公明党に失望」平和学の世界的権威ガルトゥング博士が批判―公開書簡で池田大作氏に安保法制反対呼びかけ

志葉玲フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)
講演するガルトゥング博士 撮影:志葉 玲

「正直なところ、公明党にはがっかりしている。平和の党を名乗っていた同党は、今や戦争の党に成り下がってしまった…」

先月、来日したヨハン・ガルトゥング博士は、自民党と共に安保法制の成立を目指す公明党を厳しく批判した。

ノルウェー出身のガルトゥング博士は、1957年からこれまでに100以上の国家間、宗教間紛争を調停した経験を持ち、オスロ国際平和研究所など多くの平和研究機関設立に貢献、紛争解決の手法としてトランセンド理論(超越法)を発案し、1987年にもう一つのノーベル賞と言われる「ライト・ライブリフッド賞」を受賞するなど、平和学の世界的な権威。これまでに発表した平和に関する文献は共著を含み1600以上、著書は160を数え、「平和学の父」として名高い。

ガルトゥング博士は先月、各地での講演やメディアの取材で、安保法制について「世界でもっとも好戦的な国である米国と日本が共に戦争を行うことは、日本を安全にするどころか、危険にさらす」として、明確に反対。さらに、公明党の支持母体である創価学会の池田大作名誉会長や創価学会の会員たちに、安保法制反対呼びかけているのだ。

「安全保障関連法案に反対する創価大学・創価女子短期大学関係者 有志の会」に寄せた公開書簡の中で、ガルトゥング博士は同会の行動と基本的立場を「全面的に支持する」と表明。かつて対談し共著も出した池田名誉会長を「古くからの友人」と呼び、「公明党は現在では好戦的な自民党と連立しています。紛争の解決や和解にはなんの役にも立たない破壊的戦争とは明確に一線を画し、九条を北東アジアの『平和の傘』とされんことを」と訴えている。

安保法制に公然と反対する創価学会員も増えつつある。先月30日の国会包囲デモにて
安保法制に公然と反対する創価学会員も増えつつある。先月30日の国会包囲デモにて

安保法制の成立を目指す公明党の姿勢には、創価学会内部からも批判が相次いでおり、国会前の安保法制反対デモに、創価学会の会員たちが参加。前出の「有志の会」では反対署名も集めている。さらにガルトゥング博士のみならず、やはり池田会長との共著がある米国の反核団体「核時代平和財団」のデイビット・クリーガー会長や、カラヤアン大学学長のホセ・V・アブエバ博士らも安保法制に反対し「有志の会」支持することを表明した。

公明党の山口那津男代表は先月26日、出演した報道番組の中で、「合意の形成に努め、議論の成熟を可能な限り求めて結論を出したい」と述べ、今国会中に成立させる意向を改めて示した。同番組の中で「創価学会員の大半から安保法制の賛同を得ている」と語るなど、強気の姿勢を崩していないが、ガルトゥング博士らの呼びかけが、創価学会内の安保法制批判をさらに広げていくことも、十分あり得ることだろう。

(了)

以下、「安全保障関連法案に反対する創価大学・創価女子短期大学関係者 有志の会」に寄せられたガルトゥング博士の公開書簡全文。

皆さんの行動と基本的立場を全面的に支持します。あの法案は違憲であり、9条の第一項第二項に違反しているだけでなく、両項がその根拠としている基盤全体を破壊するものであり、日本を70年前に戻してしまうものです。私は、平和の党だったはずの公明党に深く失望しています。公明党が支持している法案は、「集団的自衛」という誤った方向性のもとに、現在の世界で最も好戦的な国家と同盟するためのものです。これは日本を危険な軍拡競争へ引きずり込み、いとも簡単に戦争へ向かわせるものであり、世界で最も好戦的な国家と共同歩調をとることで、日本を自ら選択していない戦争に巻き込むものです。それよりも、公明党、創価学会、学術者の皆さん、そしてすべての皆さんが、日本全体として、根源的な矛盾の解決にとりかかるべきです。そして現実の積極的平和を北東アジア地域に作り上げるべきであり、それは北東アジア共同体となるでしょう。

私の古くからの友人である池田大作氏に呼びかけます。池田氏と私は平和についての対談集を出版し、多くの言語に訳され、創価学会と公明党の指針にもなってきました。その公明党は現在では好戦的な自民党と連立しています。紛争の解決や和解にはなんの役にも立たない破壊的戦争とは明確に一線を画し、九条を北東アジアの「平和の傘」とされんことを。

ヨハン・ガルトゥング

平和・開発・環境のためのネットワーク

トランセンド・インターナショナル創立者

出典:http://sokauniv-nowar.strikingly.com/

フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)

パレスチナやイラク、ウクライナなどの紛争地での現地取材のほか、脱原発・温暖化対策の取材、入管による在日外国人への人権侵害etcも取材、幅広く活動するジャーナリスト。週刊誌や新聞、通信社などに写真や記事、テレビ局に映像を提供。著書に『ウクライナ危機から問う日本と世界の平和 戦場ジャーナリストの提言』(あけび書房)、『難民鎖国ニッポン』、『13歳からの環境問題』(かもがわ出版)、『たたかう!ジャーナリスト宣言』(社会批評社)、共著に共編著に『イラク戦争を知らない君たちへ』(あけび書房)、『原発依存国家』(扶桑社新書)など。

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