ガザ攻撃から1年で問われる「命より金」な安倍政権―国際的な動きに逆行、イスラエルと関係強化

イスラエル軍の攻撃で破壊されたガザ北部の住宅地 撮影:志葉玲

イスラエル軍によるパレスチナ自治区ガザへの、50日間にわたる攻撃が終了してから今日26日で1年。だが、停戦合意後も本質的な問題は解決されず、破壊しつくされた地域の復興も全く進んでいない。こうした中で、安倍政権の下、ガザ攻撃後も日本はイスラエルとの関係強化を進めている。

病院に次から次へと運び込まれる遺体。土砂や灰を被り変色した赤ん坊の頭部は、無残にも割れ、脳みそがこぼれ落ちていた。顔や腕などに重度の火傷を負い、「痛み止めが欲しい!」を呻き叫ぶ少年。まだ幼い子どもらの遺体を、イスラエル軍の無人攻撃機を警戒しながら、悲痛な面持ちで埋めていく親族ら。昨年夏、筆者がガザで観たものは「地獄」というべきものだった。

あれから、早いもので、もう一年になる。だが、停戦合意にあったはずのガザ封鎖解除は行われず、破壊された家々の再建もイスラエル当局の許可が必要で、かつ封鎖のため充分な資材がないゆえに、復興は全く進んでいない。

ガザへの人道支援活動を行っている日本のNGO「パレスチナこどものキャンペーン」が先月にまとめた統計を読むと、ため息が出てくる。

昨夏の攻撃の死者は2251人。70%以上が民間人で子どもが551人、女性が299人。

負傷者は1万1000人以上。

73の病院と診療所が損壊し、そのうち27は閉鎖したまま。

250校が損壊、多くの学校が避難所になったまま新学期を迎える。

1万8000戸の家屋が全壊あるいは大破。

50万人(人口の28%)が避難民になり、停戦後の現在も10万人が避難生活を続ける。

37万人以上の子どもに緊急の心理ケアが必要

などなど。ガザ攻撃の現地市民への影響の大きさが浮き彫りになり、現在も続く封鎖が人々を苦しめていることを感じざるを得ない。

昨年のガザ攻撃や、国際法違反のヨルダン川西岸地区での入植地建設などの数々の暴挙に、この間、イスラエルを支持、あるいは見てみぬふりしてきた国々もさすがに批判的になっている。イスラエル軍がガザの民間人の避難場所となっていた国連の学校を爆撃(しかも3回も攻撃)したことについては、国連の潘基文事務総長も「犯罪行為」と強く批判し、イスラエルにとって最大の支援国である米国ですら、米国務省のサキ報道官も爆撃を「恥ずべきだ」と、米国としては異例の厳しさで批判した。また、イスラエルにとって最大の貿易相手であるEU諸国でもイスラエルとの貿易を見直す動きが進んでいる。フランスやイギリス、ドイツなどEU主要国は、イスラエルがパレスチナ人の土地を奪い建設している入植地での生産物についての援助を打ち切り、一部の生産物については輸入制限もかけらている。こうした動きは、対イスラエル経済制裁も視野に入れているものでもある。

◯安倍政権だけがイスラエルと急接近

世界中でイスラエル批判が高まる中、同国と急接近しているのが、安倍政権だ。昨年5月、今年1月にネタニヤフ首相と安倍首相が会談。軍事・安全保障分野でも協力することで合意し、さらに今年中に日本とイスラエルの投資協定を結ぶとしている。こうした安倍政権の動きについて、NGO「パレスチナの平和を考える会」の役重善洋事務局長は「国際的な流れに逆行するもの」と批判する。「ガザ攻撃が行われた昨年、イスラエルへの世界の投資は前年比で半分まで落ち込みました。世界中から孤立しつつあるイスラエルにとって、戦争犯罪や国際法違反を気にしない安倍政権は、数少ない仲間というわけです。ただ、安倍政権はイスラエルとの関係強化し、武器輸出することでアベノミクスの延命を、と考えているのかもしれませんが、イスラエル側もむしろ日本のマーケットをあてにしているので、上手くいかないでしょう」(役重氏)。

役重氏らがガザ攻撃から1年にあわせ、行ったデモ。巨大バナーの2200cmの長さは、昨夏のガザ攻撃で殺された人数を表し、描かれた壁は、西岸地区のを分断する分離壁
役重氏らがガザ攻撃から1年にあわせ、行ったデモ。巨大バナーの2200cmの長さは、昨夏のガザ攻撃で殺された人数を表し、描かれた壁は、西岸地区のを分断する分離壁

こうした安倍政権の下、「イスラエルの軍産複合体が日本に来ようとしている」と役重氏は言う。「無人爆撃機をはじめとしたロボット兵器開発で有名なテクニオン・イスラエル工科大学が京都に拠点を置こうとしていると京都の『けいはんな学研都市』に研究拠点を設置しようとしています。報道によれば、テクニオン大学は、この研究拠点で高齢者・障害者用の支援ロボットや災害用ロボット等の共同研究を進めていくとしています。しかし、こうした技術が軍事転用できることは火を見るよりも明らかです。テクニオン大学がイスラエル軍や軍需企業と提携して開発してきた無人攻撃機や家屋破壊用の無人ブルドーザー等は、パレスチナ人に対する民族浄化、人権侵害に大きな役割を果たしてきました」(役重氏)。テクニオン大学招致を進める、京都府商工労働観光部 特区・イノベーション課へ、役重氏が技術の軍事転用の懸念を伝えると、最初は誘致を喜んでいた同課の担当者も押し黙ってしまったのだという。

役重氏は「パレスチナへの戦争犯罪や国際法違反について、日本でも、もっと多くの人々に知ってもらいたいし、行動してもらいたい」と語る。「ガザでは、今も180万人の住民が封鎖下での生活を強いられています。西岸地区でも、全長700キロメートル、高さ最大8mにも及ぶ“アパルトヘイトウォール”(筆者注:いわゆる分離壁)と軍事検問所、違法入植地が人々の自由と人権を奪っています」。

イスラエルの対パレスチナ軍事攻撃や占領政策に欧米すら愛想をつかしている中で、安倍政権の下、日本だけが「命より金」と言わんばかりの外交政策を進めている。昨夏のガザ攻撃停戦から1年という節目に、日本の人々もパレスチナの状況を観て、安倍政権の外交政策の是非についても考えるべきなのだろう。