志位委員長に完敗した安倍首相にさらに戦場ジャーナリストがツッコミ―どこまでも対米追従な安保法制

 先の5月28日の衆院特別委員会での、安保法制(戦争法案)をめぐる志位和夫・日本共産党委員長の質疑は鬼気迫るものがあった。安倍首相の答弁の矛盾を次々に突き、たたみかけるように論破していく。筆者はいわゆる「無党派層」であるが、28日の志位委員長の徹底的に理詰めの追及には唸らされた。ともかく、28日の審議で浮き彫りになったのは、どこまでも対米追従であり、例え、それが国連憲章違反の違法な戦争であっても、米国の戦争であれば、ムリな屁理屈をこねてでも支持しようとする安倍政権の実態だった。

○国連憲章違反の戦争でも支援するのか?!

例えば、以下の質疑。

志位「米国が先制攻撃の戦争を行った場合でも、集団的自衛権を発動するのか?」

首相「国連憲章に反する行為に対して、わが国が武力をもって協力することはない

志位「米国の戦争を一度も批判したことがない日本政府に、自主判断ができるのか?」

 1945年に国連憲章が発効して以来、基本的に戦争というものは禁じられている。例外は、他国から侵略を受けた際に応戦する自衛のための戦争と、人道上のカタストロフィーが防ぐために、国連安保理で武力行使容認決議を得て行う軍事介入のみだ。

 これに対し、米国はしばしば、自国が攻撃されていない上、国連安保理でも武力行使容認決議が議決されていないのにかかわらず戦争をおこなってきた。志位委員長が例にあげたように、グレナダ侵攻(1983年)、リビア爆撃(1986年)、パナマ侵攻(1989年)はいずれも国連安保理での武力行使容認決議を得ておらず、国連で米国批難決議が採択されている。そして、これらの決議に日本はことごとく棄権あるいは反対してきた。要するに、これまでの経緯を観ても、米国のいいなりの日本が、それが国連憲章違反の戦争だったとしても、それを批判できるだけの根性があるのか、ということを志位委員長は問うているのだ。

 実際、安倍首相自身が28日の答弁の中で国連憲章違反の米国の戦争を擁護した。2003年3月のイラク戦争では、米国は国連安保理で武力行使容認を得ないまま、イラクへの攻撃を開始。しかも、戦争の口実とされた「イラクが持つ大量破壊兵器の脅威」は、実際には存在せず、米国自体がその誤りを後に認めたのだ。これらの事実にもかかわらず、28日の答弁で、安倍首相は次の様に発言している。

「イラク戦争に対するわが国の立場は、岸田大臣から答弁させてもらった通りであって、当時、フセイン大統領は、大量破壊兵器を所有していないことを証明できる立場にあったのにもかかわらず、それを行わなかった。そして国連決議に違反し続けた、ということ」

出典:https://www.youtube.com/watch?v=x8wM9L2lUp0

 要するに、悪いのは米国でもそれを支持した日本でもなく、フセイン元イラク大統領だと主張しているわけである。だが、この答弁は2つの重大なツッコミどころがある。ここからは、イラク戦争から現在の状況まで10年以上を注視し続けてきた筆者がツッコミを入れさせてもらおう。

○イラク戦争正当化の安倍首相の詭弁

来日し議員会館で講演するブリクス元UNMOVIC委員長(2010年筆者撮影)
来日し議員会館で講演するブリクス元UNMOVIC委員長(2010年筆者撮影)

 まず第一に、イラク側は査察に応じていたし、国連の査察団もイラクは脅威ではないとの認識を深めていた。それにもかかわらず、米国側が勝手に戦争を始めたことだ。イラク戦争開戦直前まで、現地で査察を行っていた「国連監視査検証査察委員会(UNMOVIC)」の

委員長だったハンス・ブリクス氏は「2002年から2003年2月までイラクで700回に及ぶ査察を行った。その上で、国連安保理には、大量破壊兵器は一切見つからなかった、と報告した」と語る。ブリクス氏は米国の情報は非常にいい加減なものだったとも言う。「私は米国とイギリスにこう言った。『大量破壊兵器は一体どこにあるのか。もし教えてくれれば、そこに査察に行きましょう』と。彼らは100箇所くらいを教えてくれ、私達は30箇所を査察したが、全部査察する前に戦争が始まってしまった。この30箇所でも通常兵器や書類は発見したものの、大量破壊兵器はなかった」。ブリクス氏は「戦争は防げたはずだった」と強調する。つまり、米国の確度の低い情報を鵜呑みにして、査察の現場からの報告を無視したのは、日本政府だ。それを棚にあげての「イラクが、大量破壊兵器を所有していないことを証明しなかった」という安倍首相及び外務省の主張は、全く不誠実極まりない詭弁なのである。

英イラク戦争検証委員会のウェブサイト。ブレア元首相も呼び出され追及された。
英イラク戦争検証委員会のウェブサイト。ブレア元首相も呼び出され追及された。

 第二に、イラク戦争は国連決議違反の戦争だということは、もはや国際的に動かしがたい事実である。安倍政権や外務省は、湾岸戦争時でのイラク非難決議である安保理決議678(1990年)、同687(1991年)とイラクへ査察を求める決議1441(2002年)を組み合わせて、イラク戦争の正当性を主張している。しかし、これは証拠不足などからイラク攻撃容認の安保理決議を得られかった米国をフォローするために、日本の外務官僚らがひねり出した屁理屈だ。

 イラク攻撃の有志連合に加わっていたイギリスやオランダでは、イラク戦争が国連決議の違法な戦争であったことが、検証の中で明らかにされている。イギリスでの検証委員会では、2010年1月、イラク開戦当時の外務省・首席法律顧問だったマイケル・ウッド氏と元副主席法律顧問だったエリザベス・ウイルムスハースト氏が証言が証言。ウッド氏は2003年1月、ジャック・ストロー外相(当時)に「国連決議1441は、フセインに対し核兵器施設の査察に応じるよう最後の機会を与えたが、これを考慮しても、既存の安保理決議だけでは、合法にイラクに武力行使を行えない」「国連安保理決議に基づかない武力の行使は侵略罪になる」等と報告したが、ストロー外相は同氏の報告を拒絶したという。こうした経緯について、ウイルムスハースト氏は「嘆かわしいものだった」と批判している。

 やはりイラク攻撃の有志連合の一員だったオランダで2009年に公表された検証結果においても、米英軍のイラク侵攻は「国際法上の合法性を欠く」とし、イラク侵攻を支持したオランダ政府の決定は「正当化できない」と結論づけられた。そのため、当初、イラク戦争を支持していたオランダ政府も、その支持を撤回させられることとなったのである。注目すべきは、オランダのイラク戦争検証委員会が「1990年代の安保理決議も軍事力行使の合法性を付与しない」と断じていることだ。つまり、安倍政権や外務省の主張もバッサリと否定されているのである。

○粛々と対米追従―際立つ不誠実さ

米軍の爆撃を受けたイラク西部ファルージャの民家。2004年筆者撮影
米軍の爆撃を受けたイラク西部ファルージャの民家。2004年筆者撮影

 28日の質疑で「国連憲章に反する行為に対して、わが国が武力をもって協力することはない」と明言した安倍首相だが、イラク戦争が国連憲章に反するものだったことを認めず、一貫として、米国を擁護し続けている。その論理破綻ぶりは目を覆わんばかりだ。何より、少なくとも10万人、統計によっては100万人以上が殺されたというイラク戦争に米軍の物資や人員を輸送するなどの加担したことについて(関連記事)、まったく反省がない。人の命を何とも思っていないのだろう

 安保法制は、戦後70年の日本の「平和国家」としてのあり方を根本から変え、また自衛隊の隊員の生き死にや、日本の一般市民が直面するテロリスクに、直接関わってくるものだ。法案の立案者として、もっと真剣に考え、もっと真摯に語ることが求められているのだが、28日答弁は、安倍首相や閣僚らがウソや詭弁を平然と並べ立てることを、改めて明らかにしたと言えるのだ。

(了)