「法治国家」失格!憲法違反の安保法制(戦争法案)が閣議決定される日本が、コスタリカから学ぶべきこと

イラク戦争支持はコスタリカ憲法に違反と提訴したロベルト・サモラ氏。2005年撮影

集団的自衛権の行使を容認することや、武器や兵員の輸送など米軍等への支援を可能とする―「戦争法案」とも批判される安保法制の関連法案*について、安倍政権は今日14日夕方、閣議決定した。さらに明日15日、安保法制関連法案が国会に提出される見込みだ。だが、集団的自衛権の行使など、現在の憲法下で禁じられたことを閣議決定すること自体が、重大な憲法違反だ。憲法は国の最高法規であり、政府がこれを守らないのならば、日本は法治国家として破綻していると言えるだろう。他方、諸外国では政府の決定や政策が合憲か違憲かを判断し、違反・侵害から憲法を守る「憲法裁判所」制度がある。中でも、「軍隊のない国」としてその平和主義が知られるコスタリカでは、当時の大統領がイラク戦争を支持したことは違憲であるとして、最高裁憲法法廷が支持撤回を命じたという事例があるのだ。コスタリカ研究家で北九州市立大学非常勤講師(国際関係学)の足立力也氏に、現在の日本と当時のコスタリカの状況について聞いた。

○政権が憲法を無視ー現在の日本とイラク開戦時のコスタリカの類似点

「現在の日本の状況とイラク戦争開戦時のコスタリカの状況は国民を無視したかたちで権力者が勝手な決定をしたという部分でよく似ていると言えます。安倍首相は先の訪米での米国議会での演説で、まだ国会での法案審議もしていないうちに、安保法制の法案成立を公約してしまいました。コスタリカでも2003年のイラク戦争開戦時に、当時のパチェコ大統領が、国会などにも全く説明のないまま、イラク攻撃を支持を当時の米国のブッシュ政権との間で密約していました。コスタリカの国民はその9割以上がイラク戦争に反対していましたが、米国での報道で初めて自分の国がイラク戦争を支持する事実を知らされた、というわけです。パチェコ大統領のイラク戦争支持に対し、コスタリカの国民は、大いに憤りました」(足立氏)。

足立力也氏
足立力也氏

コスタリカは、「軍隊の無い国」「非武装中立国家」として知られている。1948年に激しい内戦を経験した同国では、内戦終結後の1949年に常備軍を撤廃する憲法が施行された。また中米諸国の内戦激化を受け、コスタリカは1983年11月、当時のモンへ大統領が「積極的永世非武装中立宣言」を宣言。中米諸国や米国に働きかけ、停戦を呼びかけた。そして、モンへ大統領の後をついだアリアス大統領が中米諸国での内戦を終結へと導き、ノーベル平和賞を受賞した。こうした平和国家としての歩みを、コスタリカの人々は誇りとしており、だからこそ同国の憲法の理念に反するパチェコ大統領の決定に対し、人々が行動を起こした、と足立氏は解説する。

○大学生が大統領を提訴、イラク戦争支持を撤回させる

「コスタリカでは、パチェコ大統領のイラク戦争支持が報じられると、すぐに何人もの人々が最高裁憲法法廷に、イラク戦争支持は違憲であると提訴しました。そのうちの一人が、当時大学生だったロベルト・サモラさんです。2004年9月、最高裁憲法法廷は、サモラさんの主張を認め、大統領のイラク戦争支持を無効とし、米ホワイトハウスのウェブサイトにある有志連合のリストからコスタリカを削除することを要請するよう命じました。そして、これに米国側も応じたのです。大変興味深いのは、政府の役人までが違憲訴訟を行ったことです。住民保護局の行政官であるホセ・マヌエル・エチャンディ氏は、『戦争のどちらかに与するということは、その敵対勢力がコスタリカを敵とみなし、コスタリカの国民が攻撃の対象となるリスクを抱えることだ』として、最高裁憲法法廷に提訴しました。日本でも安保法制によって、日本人が攻撃の対象となるリスクが懸念されていますが、エチャンディ氏は『住民保護局の行政官だからこそ、その職務に従い提訴した』と語っているのです」。

米軍に爆撃されたバグダッドの市街地。イラク戦争は戦争犯罪のオンパレードだった。
米軍に爆撃されたバグダッドの市街地。イラク戦争は戦争犯罪のオンパレードだった。

○憲法を守る制度と精神が必要!

足立氏は、現在の日本の状況について、制度面も精神面で憲法を守るものが欠けていると、指摘する。

「今年の憲法記念日は、各所で活発な議論があり、護憲、改憲、ともども、さまざまに意見が出され、それぞれ報道されましたた。しかし、今は護憲か改憲かを議論する以前の段階であることがもっと強調されるべき時ではないかと思います。憲法を変えるか変えないかという議論と、現在ある憲法が順守されているかどうかという議論は全く別の話です。そしてまさに現在、現行憲法は現行政権によって破られているのです。もちろん、これまでも憲法が守られていないという議論はあり、司法判断もたくさん出ています。その中には、違憲判決が下されたことも決して少なくはありません。最近の例で言えば、いわゆる『一票の格差』問題がそうです。しかし、コスタリカの最高裁憲法法廷のように、政府に対して憲法に従えと命令するような強大な権限や、それを行使しようという姿勢は、日本の最高裁にはありません。また、一般的に日本の人々にとって、違憲訴訟を起こすということは、心理的にとてもハードルが高い。これに対して、コスタリカでは、普通の一般市民が、国に対してそれは憲法違反じゃないの、と気軽に違憲訴訟を提訴できる。彼自身が認めているように、前出のロベルト・サモラさんは別にスーパーヒーローでもなんでもなく、普通の学生でした」(足立氏)

最高法規である憲法を、政権が蹂躙している際、国民が何ができるか。制度面においても、民主主義をどのようにとらえ、行動できるかという精神面においても、今こそ、日本はコスタリカから学ぶべきなのだろう。

(了)

*安保法制の問題点については以下記事を参照

戦争犯罪でも支援するのか!?―日本を「イスラム国」より酷い米軍の共犯者とする安倍政権の安保法制

パレスチナやイラクなどの紛争地での現地取材、脱原発・自然エネルギー取材の他、米軍基地問題や貧困・格差etcも取材、幅広く活動するジャーナリスト。週刊誌や新聞、通信社などに寄稿、テレビ局に映像を提供。著書に『たたかう!ジャーナリスト宣言』(社会批評社)、共編著に『原発依存国家』(扶桑社新書)、『イラク戦争を検証するための20の論点』(合同ブックレット)など。イラク戦争の検証を求めるネットワークの事務局長。

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