ヨドバシカメラ前で43日間の抗議-日本企業も人事ではない「パレスチナ占領加担」リスク

ヨドバシ梅田前でのアピール
ヨドバシ梅田前でのアピール

師走の日暮れ後、大阪駅前のヨドバシカメラ「マルチメディア梅田」前では、白い息を吐きながら10人程度の人々がプラカードを掲げ立っていた。そこには、「売らないで、買わないで、違法イスラエル製品」「ボイコット イスラエル製品」などと書かれている。この「イスラエル・ボイコット マラソンデモ」の参加者らは、今年(2014年)11月12日から同年12月24日までの43日間、交代で大阪と京都のヨドバシカメラ前でのアピールを行ってきた。なぜ、寒空の下、人々はヨドバシカメラ前に43日間も立ち続けたのか。

○ヨドバシカメラとイスラエル関連企業

「イスラエル・ボイコット マラソンデモ」実行委員会には、「パレスチナの平和を考える会」「ATTAC関西」などの14の市民団体が賛同している。デモ実行委員会メンバーは、デモの目的についてこう語った。

「今年の夏、イスラエルが2100人以上のガザ住民を殺戮したことに対し、国際社会からは多くの批判の声が上がりました。しかし、パレスチナでは違法な占領とアパルトヘイト(人種隔離政策)が今も続けられています。かつて南アフリカでは、国際的なボイコット運動が広く取り組まれ、アパルトヘイト廃絶に大きく貢献しました。今、パレスチナでも同様の呼びかけが行われ、イスラエルに対するボイコット運動が世界中に広がりつつあります。そこで私たちは、これ以上ガザの悲劇を繰り返させないため、また、パレスチナにおける占領・封鎖・人権侵害を終わらせるため、今回のアクションを行いました。」

なぜ、ヨドバシカメラをターゲットにしたのだろうか。

「ヨドバシカメラは、パレスチナ西岸地区内のイスラエル入植地で製造されている家庭用炭酸水製造機ソーダストリームを販売し続けています。また、パレスチナ人の移動の自由を奪うイスラエル軍検問所における生体認証システムを開発・納入しているヒューレット・パッカード社のパソコンやプリンターを販売しています。さらにヨドバシカメラは、イスラエル軍・警察の通信システムや、入植地におけるレーダー監視システムを供給しているモトローラ・ソリューションズの入庫管理システムも利用しています。パレスチナの封鎖・占領に直接・間接にかかわっている企業が、ヨドバシカメラを通じて何も知らされていない消費者から利益を得ているのです」(同)

確かに、近年、特に欧州などでイスラエル製品に対するボイコット運動が活溌になってきている。中でも、ソーダストリームは、ハリウッド女優のスカーレット・ヨハンソン氏がアピール役を引き受け、国際的な批判を招いたことが記憶に新しい。批判にさらされたヨハンソン氏は「ソーダストリーム社はパレスチナ人にも雇用の機会を与え、平等な賃金、平等な待遇、平等な権利が享受されるための支援に尽力しており、イスラエルとパレスチナの平和の懸け橋となっている」と反論したが、ソーダストリーム社はイスラエルが国際法に違反してパレスチナ自治区内に建設している入植地に生産工場を置いており、このことが国際的なボイコットの対象とされる所以なのだ。実際、入植地問題は、中東和平を妨げる大きな問題の一つである。入植者を保護する名目でイスラエルの警察や軍が、パレスチナ自治区での人権侵害を行う他、イスラエル人入植者自体が、パレスチナ人の村々を襲い、住民を殺傷したり、オリーブ畑を破壊したりするなどのテロ行為を行っている。また、東エルサレルムでの入植地建設では、元々、現地に住んでいたパレスチナ人の人々を強制的に追い出し、家々を破壊するなどの問題も起きているのだ。

イスラエルの分離壁に土地を分断された西岸地区ビルイン村では毎週デモが行われる。
イスラエルの分離壁に土地を分断された西岸地区ビルイン村では毎週デモが行われる。

○ヨドバシカメラ側の対応は?

これらの問題について、ヨドバシカメラ側はどう考えているのか。「イスラエル・ボイコット マラソンデモ」賛同団体の「ストップ!ソーダストリーム キャンペーン」有志は、デモを行う前に、ソーダストリームの販売中止などを求め、ヨドバシカメラの社長宛に要請書を送ったものの、返答はなかったという。また、デモ賛同団体有志が今月7日にソーダストリーム販売について責任者との話合いのため、アポを申し込んだところ、警察を呼ばれたのだという。

「いきなり売り場に行って店員を驚かしても良くないと思い、まずインフォメーションセンターにいた警備員の方に要件を伝えました。すると、アポイントメントがないとつなげられないとのことだったので、そのアポを取りたいのですがというと、責任者が来るのでお待ちくださいと言われました。ところが、それから20分ほど待たされた挙句、いきなり曽根崎警察署員がやってきて、『あなた方が居座っていると通報を受けて来たのですが・・・』という驚愕の騙し討ち的展開に直面しました。どういうことかと先の警備員に説明を求めたところ、もう一人の警備員から『商品については直接店員に話をするか、電話で問い合わせてください』と警察官もいる前で言われました。そこで4階の売り場に移動し、ソーダストリームの実演販売をしている売り子さんに要件を伝えると、『担当者を呼ぶのでちょっと待ってください』と言われました。それで待っていると、今度はひどく慌てた様子の曽根崎署の公安警察官一名と共に施設管理会社の職員が顔を引きつらせてやってきました。そして一切私達の要件を聞こうともせずに、営業妨害だからすぐ出ていってください、と言われました(中略)。ヨドバシカメラのウェブサイトには『店頭でのお客様からのご意見、ご要望を各店のスタッフがおうかがいします』、『店頭でおうかがいしたご意見、ご要望に対して、きちんと対応します』と書いてあるのですが、現実とのあまりのギャップに頭を抱えざるを得ません」(申し入れ参加者談)。

これらの対応は、「施設管理会社としてのもので、あくまでもヨドバシカメラの意向を示す必要はない」(施設管理会社の職員が、申し入れ参加者に説明)というものだった。では、ヨドバシカメラとしては、一体どういうスタンスなのか。筆者がヨドバシカメラ本社広報に電話で問い合わせたところ、以下のような返答を得た。

「当初、ソーダストリーム社側からは『(人権などで)問題ない』との説明を受けていた。だが、今後の商品の扱いについては、引き続き扱うか否か、社内で検討したい」(ヨドバシカメラ本社広報)

今夏のガザ地区への攻撃でイスラエルに対する国際的批判は高まっている。
今夏のガザ地区への攻撃でイスラエルに対する国際的批判は高まっている。
今夏のガザ攻撃で負傷したガザの子ども
今夏のガザ攻撃で負傷したガザの子ども

○「占領加担」ビジネス追放へ国際的な動き

企業はただ金儲けすれば良いのではなく、企業倫理や社会的な責任を求められる。すなわち、労働基準法などの法令を順守することや環境への配慮などだ。中でも、ここ最近、注目すべきは「占領に加担しない」という動きが国際的に広まりつつあることだろう。今年に入りEU17か国以上が自国企業に対して入植地ビジネスに関わることの経済的政治的リスクについて公式に警告を発している。さらにイスラエル現地紙「ハアレツ」の報道によれば、EUは対イスラエル経済制裁を検討しているのだという。最大のイスラエル支援国である米国でも、今年6月、全米で190万人の会員を抱えるキリスト教団体「アメリカ長老協会」が、イスラエルのパレスチナ占領に加担しているとして、モトローラ社、ヒューレット・パッカード社、キャタピラー社からの資本引き上げを決定した。国連においても、昨年1月末、国連人権理事会調査団が全入植地の撤退と入植地ビジネスの終結を要請、国連理事会もこれを歓迎し、勧告を履行するよう加盟国を求める決議を採択している。こうした流れの中、安倍政権はイスラエルとの経済・軍事的な結びつきを強めているが、日本企業の経営者らは、イスラエルとのビジネス、特に「占領加担」とされるようなビジネスには、関わるべきか否か、充分に検討すべきなのだろう。また「占領加担企業」とみなされる企業の商品を販売しているのは、ヨドバシカメラだけではない。製品をつくるメーカーだけではなく、それらの製品を販売する小売店の倫理もまた問われてくるのだ。