【コラム】ASKA逮捕でほくそ笑む安倍政権ー「衆愚」メディアにつける薬はあるのか?

摩訶不思議なことに、政権が大きな問題を抱えていて、メディアの攻勢が強まってくると、芸能人やら有名人の逮捕とかメディアの関心を変えさせるようなことが「偶然」起きることがよくある。そうなると、メディア、特にテレビや週刊誌などは、こぞってそうした「ホットな話題」に飛びつき、どうでもいいようなことに延々と時間や誌面をさき、電波やら森林資源をムダにする。今回の CHAGE and ASKAのASKA逮捕、それに対するメディアの反応も数々の悪しき前例と同じことにならなければ、と願う。

志葉は芸能記者ではないので、そんなに詳しくはなかったし、何よりも興味がなかったのだが、それでもチャゲアスのASKAのヤク中問題は、結構前からなんとなく聞いていた。業界では有名な話だったと思われる。いずれにしても、このタイミングでのASKA逮捕は安倍首相にとっては嬉しいことだろう。テレビや雑誌は集団的自衛権ではなく、ASKAのことを延々と垂れ流し、書きたてるだろうし、多分、Yahoo!でのニュース閲覧数トップもASKA逮捕の話題になるだろうからだ。

だが、報道媒体としてのメディアは本来、権力が暴走する際にその問題点を広く人々に伝え、暴走を食い止めるのが、最も重要な役割である。その様な意味で、報道関係者は、「優先順位」を理解するべきだろう。ASKAが逮捕されても、世間一般の人々の生活にはほとんど影響ない。だけど、集団的自衛権の行使容認は、戦後の日本の平和主義を根本から変えること。それを憲法を変えるのではなく、安倍首相の決定だけで決めるという、民主主義国家としてもヤバイ話だ。この辺りの優先順位がわからない報道関係者は仕事辞めた方がいい。適性がないだけでなく有害だからだ。視聴率やら雑誌の売上、つまりカネの方がジャーナリズムより大事なら、報道なんて仕事は辞めて、株でもやればいい。

報じなくてはならない、安倍政権の問題は集団的自衛権行使の是非だけではない。例えば、「正社員ゼロ」「残業代ゼロ」「過労死促進」なブラック国家に日本を変えようとしている。これまで専門26業種を除き、派遣は原則3年まで、それ以降は正社員化する必要があるとしていた派遣労働を、「3年ごとにその業務につく人を変えればいい」と派遣労働者を文字通り使い捨てする、派遣法の改悪案が今国会で審議中だ。長時間労働や仕事上の強いストレスが原因で、死亡したり自殺を図ったり、また病気になって労災と認定された人は2012年度で813人と過去最悪。それにもかかわらず、安倍政権は労働時間の規制緩和をはかる。「希望者」の労働者の労働時間配分を「個人の裁量に委ねる」という方針を示したのだ。だが、立場の弱い労働者が、意に沿わず「希望者」とさせられるのは、容易に想像できる。

漫画『美味しんぼ』の被曝と鼻血をめぐる表現に対し、「根拠のない風評に対しては国として全力を挙げて対応する必要がある」と語った安倍首相だが、自身の全く根拠の無い上、実害を隠蔽する「アンダーコントロール」発言の責任を問われることが、今、正に進行中だ。つい先日も、福島第一原発の海側にある測定用井戸で採取された地下水に含まれるトリチウム濃度が過去最高値を更新。汚染水からセシウム等を除去する多核種除去装置「ALPS」はまたも機能停止した。

これらのことに比べれば、一芸能人の逮捕など瑣末な問題であり、どうでもいいことだ。放送時間も誌面も限られている中、「ジャーナリズム」という観点から何を優先して報道すべきなのか、報道関係者には、よく考えてもらいたい。マスコミの中にも良心的な人がいるし、特に現場の人間にはジレンマを抱えつつ頑張っている人々もいる。そういうジャーナリスト達の努力を無碍にしないよう、番組の責任者や各誌の編集長らには、ぜひともお願いしたいところだ。また、商業ジャーナリズムにおいて、やはり視聴率や雑誌売上は重要という側面もある。だからこそ、視聴者や読者は番組や雑誌などへ意見するべきであるし、良心的なジャーナリズム活動に対しては、応援することもして欲しい。

結局のところ、メディアの質というものは、受け手の側の質ということでもあるのだから。

パレスチナやイラクなどの紛争地での現地取材、脱原発・自然エネルギー取材の他、入管による在日外国人への人権侵害、米軍基地問題や貧困・格差etcも取材、幅広く活動するジャーナリスト。週刊誌や新聞、通信社などに寄稿、テレビ局に映像を提供。著書に『13歳からの環境問題』(かもがわ出版)、『たたかう!ジャーナリスト宣言』(社会批評社)、共編著に『原発依存国家』(扶桑社新書)、『イラク戦争を検証するための20の論点』(合同ブックレット)など。イラク戦争の検証を求めるネットワークの事務局長。

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