田母神元空自幕僚長に戦場ジャーナリストが噛みつく-本当の戦争の悲惨さ知らないネトウヨ親父は引退すべき

 最初に断っておくが、今回書くのは記事というより、コラムだ。そう、イラク戦争やレバノン戦争、ガザ侵攻などのパレスチナ紛争etcといった、戦争取材を重ねてきた者としての、一意見である。

 東京都知事選に田母神俊雄・元航空自衛隊幕僚長が出馬するという。保守政党からの支持も得られない泡沫候補であり、いちいち相手にするのもどうか、とも思うが、かつてナチスが台頭した際も、当時の知識人達は「まさかあんなバカ達が政権を取ることはないだろう」とタカをくくっていたというから、やはり発言しておくべきなのだろう。さて、私が言いたいことは、要約すれば、

「本当の戦争の悲惨さを知らないネトウヨ親父は大人しく引退しなさい」

ということだ。田母神氏は、元空自幕僚長という経歴やその過激な発言から一部のネット右翼に人気であるようだが、本当の戦争というものを経験していないという点では、彼の支持層と同じ「ネトウヨ親父」にすぎない。血と膿と死臭の混じった吐き気のする臭い、降り注ぐ爆弾の下での阿鼻叫喚、いつ殺されるかわからない前線兵士の恐怖、罪の無い市民を殺してしまったが故の兵士達の葛藤……私が戦争取材で実際に経験し、見聞きしてきたことのどれも、田母神氏は経験したことがなかろう。当然だ。彼も含め自衛隊は、戦争を禁じた平和憲法に守られ、直接の戦闘を経験しないで済んできたからである。それにもかかわらず、田母神氏が「集団的自衛権の行使を認めるべき」などを繰り返し主張しているのは、もはや滑稽にすら映る。集団的自衛権の行使」は、結局のところ「米国の戦争への巻き込まれ権」だ。米国が攻撃を受けた際、日本が攻撃を受けていなくても、米国と一緒になって戦闘行為を行う、ということである。私は自衛官や元自衛官達に取材したことがあるが、彼らは「日本の人々を守るために自衛官になった」と言う。断じて、米国の戦争の片棒担ぎをしたいわけではない。

 田母神氏は自らの講演で「徴兵制こそ日本再生に必要」「男とは闘って女を守るもの」とも発言している。だが、勇ましい発言をする権力者らが実際の有事の際には、自分たちのみ安全を確保しながら号令をかけ、若者たちをムザムザと無駄死にさせてきたのは、歴史の常である。そもそも田母神氏自身に「闘って女を守る」覚悟があるかも疑わしい。2012年10月16日に在日米軍兵士による集団強姦事件が発生した際、田母神氏は自身のツイッターに

「沖縄女性暴行事件でテレビが連日米兵の危険性を訴えるが、この事件が起きたのは朝の4時だそうです。平成7年の女子高生暴行事件も 朝の4時だったそうです。朝の4時ごろに街中をうろうろしている女性や女子高生は何をやっていたのでしょうか。でもテレビはこの時間については全く報道しないのです」

出典:https://twitter.com/toshio_tamogami/status/259433401663246338

と投稿した(同月20日)。夜中に歩いていれば米兵にレイプされても仕方ないと言わんばかりの神経自体が噴飯ものだが、平成7年の沖縄米兵少女暴行事件の発生時刻は朝4時ではなく夜8時であり、女子高生ではなく女子小学生である。当時、田母神氏には、「セカンドレイプの上にデマまで流すのか」などと批難が殺到したが、田母神氏は未だ弁明も謝罪もしていない。田母神氏に是非聞きたいのだが、「男は闘って女を守る」のではなかったのか。それとも、沖縄の女性や子どもは例外で、米軍犯罪から守らなくても良いということなのか。こうした矛盾は、田母神氏の支持層にも共通する。口を開けば「愛国」「日本を守る」と息巻くくせに、いざ、米軍犯罪が発生すると、被害者よりも加害者に味方するのだ。何が「愛国」「日本を守る」なのか、全く意味不明である

 政治家の資質として最も重要なことの一つは、持てる全ての能力を使って、戦争だけは絶対に避け、話し合いで解決するという姿勢の有無だ。あまりに安易に戦争やその被害を語り、戦争を行うことを躊躇しないような人物は政治に関わるべきではない。というか、そういう政治家こそ、人々にとっての最大の敵だ。戦争で傷つくのは、結局普通の人々、最も罪がなく、弱い立場の人々なのだ。だから、田母神氏には政界進出などという野望を持たず、大人しくご隠居生活を送ることをオススメする。先の戦争に関する歴史認識から、事実上、懲戒処分されたにもかかわらず、7000万円もの退職金を得たのだから、それ以上のことを望むべきではない。

 そして、本稿をお読みの読者諸氏に警告しておきたい。田母神氏よりスマートな物言いをしているが、本質的に同類であるばかりか、権力者という点で比較にならない程危険であるのは、他でもない安倍晋三首相。安倍政権は「今年4月にも集団的自衛権についての憲法解釈見直しの素案をまとめる」としている。冗談でも比喩でもなく、リアルに「軍靴の音」はすぐ側まで迫っているのだ。

パレスチナやイラクなどの紛争地での現地取材、脱原発・自然エネルギー取材の他、入管による在日外国人への人権侵害、米軍基地問題や貧困・格差etcも取材、幅広く活動するジャーナリスト。週刊誌や新聞、通信社などに寄稿、テレビ局に映像を提供。著書に『13歳からの環境問題』(かもがわ出版)、『たたかう!ジャーナリスト宣言』(社会批評社)、共編著に『原発依存国家』(扶桑社新書)、『イラク戦争を検証するための20の論点』(合同ブックレット)など。イラク戦争の検証を求めるネットワークの事務局長。

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