特定秘密保護法が濫用されまくるのは確実な理由について

「憲法違反」「国民の目をふさぐ」「民主主義を破壊する」…各方面での批判が高まる特定秘密保護法案だが、政府与党は今日26日、野党の修正協議を待たずに強行採決を行うとの報道も流れている。その内容については、ご存知の方々も多いかもしれないが、一応、おさらいすると、以下のようなものだ。

◯特定秘密保護法案とは?何が問題?

1. 政府・与党の恣意的な裁量で「特定秘密」を指定

外交や安全保障などに関する情報を「特定秘密」として、政府や警察庁長官などの「行政機関の長」が指定。在日米軍関係やTPP、原発関係など、国民に知られたくない情報を政府・与党が自らの都合で「特定秘密」に指定される恐れがある上、第三者機関によるチェックもない。「特定秘密」をいつ公開するのかも政府次第で、永久に秘密とされる恐れもある。

2. 厳罰化と情報提供者の萎縮

公務員でも民間人でも「特定秘密」を漏らした人には、最高で懲役10年および1000万円以下の罰金が科せられる等、現行の国家公務員法、自衛隊法に比べても厳罰化。こうした厳罰化により、公務員その他の情報を持つ人々が内部告発をためらったり、本来は処罰の対象外である情報まで出さなくなる恐れが。

3. 情報提供者だけでなく、情報を求めた側も処罰の対象に

情報を提供しただけでなく、情報を求めた側も処罰の対象に。つまり、報道関係者や NGO・市民団体、その他のありとあらゆる団体・個人も処罰の対象になりうる。報道機関や市民団体がその活動を制限され、憲法に定められた国民の「知る権利」を奪うことが懸念される。

4.国会議員も情報を得られない―議会制民主主義の否定

政府が指定した「特定秘密」は原則、国会議員も議論どころか、知ることすらできない。国会議員が「国民の代表」として、国会で様々な案件を審議するという、議会制民主主義の根本の部分を否定するものである。例外として、非公開の委員会で国会議員に提供することが出来るとしているが、そこに参加した国会議員が「国民が知るべき情報」と判断し、情報を公開した場合は処罰に対象となるし、そもそも、非公開委員会を設定し情報を提供するか否かを決めるのも、政府である。

5.広範囲なプライバシーの侵害

「特定秘密」を扱う公務員・民間人に対する「適正評価」も行われる。そこでの調査対象は、病歴や飲酒、借金など、極めて個人的な内容が含まれるほか、「特定秘密」を扱う本人だけでなく家族の国籍や住所も調査される。「適正評価」という名目の下、際限なくプライバシーの侵害が広範囲に行われる恐れもある。

東京新聞のウェブサイトに特定秘密保護法案の全文が掲載されているので、こちらも一読すると良いだろう。

http://www.tokyo-np.co.jp/feature/himitsuhogo/zenbun.html

◯政府は国民を騙す―情報隠蔽と世論操作の実例

特定秘密保護法案が可決・発効したら、間違いなく、政府は不都合な情報を隠蔽し、国民を騙し、自らの都合のいい方向へと世論操作するであろう。私がそう確信するのも、過去に実例があるからだ。自衛隊イラク派遣の際、政府・自民党は何度も「人道復興支援」という言葉を使い、米軍への戦争協力ではない、という弁明を繰り返した。実際、安倍首相も第一次安倍内閣で、

「自衛隊がイラクにおいて行う人道復興支援活動等は、多国籍軍の司令部との間で連絡調整を行いつつも、その指揮下に入ることはなく、我が国の主体的な判断のもとに、我が国の指揮に従い、イラク特措法に基づき行われるものであるため、武力行使と一体化することはありません」「航空自衛隊は、人道復興支援活動として国連の人員、物資等を、また人道復興支援活動及び安全確保支援活動として多国籍軍の人員、物資を輸送しています」

と国会答弁している(平成19年04月24日・衆議院本会議)。

あたかも「人道復興支援」が中心のようにアピールされてきた航空自衛隊の活動だが、その実態は「米軍の空のタクシー」だった。名古屋の市民運動家らの情報開示の求めに応じ、民主党政権交代後の2009年9月に防衛省が開示した、イラクでの活動実績によれば、航空自衛隊が輸送した人員の割合で「国連関係者」はわずか6%にすぎず、全体の6割以上が、米軍を中心とする多国籍軍関係者だった。当然、米兵達は銃火器で武装しており、そうした事実は記録にも残っている。国際的な戦争の常識で言えば、戦闘人員及び武器弾薬の運搬、つまり兵站は戦闘行為の一環と観られる。2008年4月に名古屋高裁が下した航空自衛隊のイラクでの活動を「違憲」とする判決も、戦闘人員や武器弾薬の運搬が、憲法で禁じられる集団的自衛権の行使にあたる、つまり「自衛隊の活動が米軍と一体化している」と判断したことによるもの。要するに、安倍首相は航空自衛隊のイラクでの活動実態を隠し、国民を欺いたのだ

航空自衛隊のイラクでの活動実績
航空自衛隊のイラクでの活動実績

◯秘密保護法で隠蔽し放題、取材活動も罰する

航空自衛隊のイラク派遣当時、その活動実態は、国会議員でも詳しく知っている人は皆無だった。志葉も当時の外交・安全保障関係に詳しい国会議員らに話を聞いてまわったが、皆口を揃えて「情報が全く出てこない」と不満気であった。あの当時でさえ、そのような状況だったのだから、特定秘密保護法案などが可決したら、ますます隠蔽し放題になることは火を見るより明らかだろう。また、2008年4月の名古屋高裁判決を受け、志葉は防衛省・統合幕僚監部にイラクでの航空自衛隊の活動について問い合わせた。粘り強く聴き続けた結果、「テロリストを掃討することも復興支援の一環」と、航空自衛隊が運んだ米軍兵士がイラクでの掃討作戦に従事していた可能性が極めて強いことについて認めた。イラクで「テロ掃討」の下、米軍が現地住民の無差別な虐殺や、不当拘束と拷問・性的なものを含む虐待を行っていたことは、もはや言うまでもないが*、こうした言質を引き出す行為も、特定秘密保護法の下では、「そそのかし(教唆)」「あおり仕向ける(扇動)」だとして最高で5年の懲役刑を科せられる恐れがあるのだ。

  • 拙著『たたかう!ジャーナリスト宣言』(社会批評社)、『イラク戦争を検証するための20の論点』(合同出版)などをご参照あれ。

◯自民党政権ならやりかねない濫用

特定秘密保護法案が濫用されることへの懸念に対し、「心配しすぎでは?」「かつての軍国主義時代と現代は違う」という反論もある。だが、まず第一に法律、特に人々の人権を抑圧する法律は一度つくられてしまうと、どんどん改悪され、また当局の都合で恣意的に濫用されるものなのだ。1925年から1945年まで日本国内で約7万人もの人々、占領下の朝鮮半島で2万3000人を拘束し、激しい尋問や拷問で死者まで出した治安維持法も、最初は無政府主義者・共産主義者の「革命」を警戒して制定されたものだった。しかし、その対象は宗教団体や民主化・自由主義運動にも拡大、最終的には、少しでも「反政府的」と見なされた者、あるいは彼らを支援する弁護士まで弾圧されたのである。そして何より、特定秘密保護法案の濫用を警戒させる最大の理由は、自民党の政治家達が、根本的に憲法や基本的人権というものを理解していない、ということにある。これについては、以前書いたが(関連記事)、自民党の改憲草案やそのQ&Aは、「憲法は国家権力の暴走から国民を守るもの」「人は生まれながらに基本的人権を有する」という近現代の民主主義の大前提を真っ向から否定している。一体どこの中世暗黒国家のものか、という、もはや憲法とはいえないシロモノを、党の目玉政策として掲げるヒトビトである。彼らが「弾圧ための武器」を持つことに危険を感じない方が無理というものだ。

◯特定秘密保護法案を許してはならない

例え、今日強行採決に持ち込めなかったとしても、政府与党は特定秘密保護法案可決へと数の力で強引に押し通すことだろう。だが、我々国民も黙っていてはいけない。権力というものは、国民が沈黙すればするほど、調子に乗ってくるものなのだ。仮に可決されたとしても、廃止させる。そうした国民側の反撃が必要なのだ。首相官邸・国会前でのデモや、地元の国会議員の事務所に電話やファックスなど何でもいい。とにかく声を上げるべきだ。黙っていれば、いずれ縫い付けられて口を開けることすらできなくなるだろう。