自民「原発再稼働」で福島での原発事故収束作業が崩壊する!?

明日はいよいよ参院選だ。マスコミ各社の世論調査では、最大の争点は「景気・雇用」だとのこと。確かにそれも重要だろうが、原発の是非もまた重要な争点ではないか。福島第一原発事故を経験してもなお、安倍政権は原発を推進し、自民党の参院選公約にも、原発再稼働を明記している。だが、福島第一原発事故の収束作業ですら、トラブル続きで今後の見通しが不明瞭な中、まるで事故などなかったかのような振る舞いには、強い違和感を感じる。

原発再稼働が、原発事故収束作業にトドメを刺す

この間、福島第一原発の収束作業に取り組む原発作業員の方々に取材してきた。決死の作業を続ける彼らが懸念しているのは、現在停止中の全国の原発が再稼働した場合、福島第一原発の収束作業が壊滅的な情況に陥ることだ。凄まじい強さの放射線の中での危険な作業を求められる収束作業よりも、各地での原発の作業の方が、安全だし長く働ける。「5年間で100ミリシーベルト」という被曝限度量を超えれば、原発作業員は現場での作業ができなくなるが、その間、何の保障もない。だとすれば、下手をすれば1ヶ月もしないうちに、被曝限度量をオーバーする福島第一原発の収束現場よりも、今後再稼働する各地の原発の現場で働いた方が、安全だし、長く働けるというわけだ。つまり、福島の事故収束現場から作業員の大量流出が起きることが懸念されているのだ。今でさえ、福島第一原発の収束作業は危機的な情況にある。被曝限度量をオーバーする原発作業員が続出し、特にベテランの作業員が現場から次々に離れている状態だ。仕方なく、離れた拠点から無線で指示を出しているが、現場にいる作業員達にはボルト締めもろくにできない、作業経験ゼロの人々も少なからずいる。放射能で汚染された水を排出するポンプの接続を間違え、汚染水が逆流したなど、報道されない「小さな」トラブルは日常茶飯事なのだという。人手不足も深刻で、休息時間に違う現場へと駆り出されることも少なくない。疲労が蓄積した状態での作業は、新たなトラブルの原因となる。待遇の悪さも問題で、特に野田政権による事故収束宣言以降、現場で働く作業員達の待遇は目に見えて悪化し、移動や待機などの実質の拘束時間での時給は、最低賃金以下という有様だ。何重もの下請け構造の中、末端の作業員は、本来受け取れるはずの給料や手当をピンハネされ、被曝管理もいい加減なまま、使い捨てにされる。これでは、充分な労働力が集まるわけがない。ある元原発作業員の人は私にこう言った。「このままでは事故収束作業を続けていくことすら絶望的という情況なのです」。この上、各地の原発が再稼働すれば、福島第一原発の事故収束作業はいよいよ危機的情況に陥ることになる。

事故を起こしてもなお、安全より金を優先する東電

収束作業を困難にしているのは、人手不足だけではない。福島第一原発の収束作業に関わっていた元作業員の方の話によれば、「東電は事故を起こしてもなお、安全より金を優先している」のだという。本来、放射線に耐えられる素材を使うべきところに、一般的な素材を使ったりするなど、収束作業に必要な機器や素材の機能や品質をギリギリ最小限に抑え、いかにコストカットするかということに重きを置いているのだ。収束作業に関わる企業の入札も、その企業の原発関連での実績よりも、いかに安く機器を納入するかという事を優先し、安全を配慮しての企業側の提案も退けているのだという。だが、これはある意味、当然の結果だろう。所詮、東電は営利を求める民間企業であり、現在は税金を投入して収束作業を行なっているが、それは東電の借金となり、いずれは返済を求められるもの。政府がしっかりと監視しない限り、利益優先に走るのは当たり前のことだ。何しろ、あの東電である。むしろ、東電まかせにしている政府の責任が問われるべきだろう。

原発再稼働より、事故収束に全力を注げ

現場からの声で少なからず聞くのは、収束作業は営利活動から切り離し、国家事業として取り組むべき、ということだ。原発作業員達の練度や待遇を上げ、必要な人員を確保し、安全性を重視した素材や機器を優先的に使う。それらは営利を目的した民間企業では難しい。何よりも、国民の安全や生活がかかったことを、東電に任せること自体が、あまりにリスキーであるし、無責任だ。京大原子炉実験所の小出裕章氏によれば、福島第一原発4号機の燃料プールだけでも、広島型原爆1万発分の使用済み核燃料があるという。事故収束作業の行く末は、日本の命運を左右しかねないものだ。しかし、非常に腹立たしいことに、安倍政権にはそうした危機感があるようには思えない。せめて、今回の参院選で脱原発を掲げる政党が議席を増やさないと、本当に取り返しのつかないことになるのではないか。是非、有権者の方々には以上のことも参考にして、投票所に向かってもらいたいものである。

(了)

京大原子炉実験所・小出裕章氏からのメッセージ