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マスコミ女性怒りの座談会(前) マスコミに働き方改革は可能なのか?

白河桃子相模女子大特任教授、昭和女子大客員教授、少子化ジャーナリスト
(写真:アフロ)

このたび、新書『御社の働き方改革、ここが間違ってます! 残業削減で伸びるすごい会社』(]PHP研究所)を発刊しました。(7月発売で品切れになっていたのですが、9月1日にやっと重版が到着しました。)

働き方改革は今ちょうど逆風ですが、それは「ただの時短」や「テレワーク制度を入れればいいんでしょう?」と働き方改革が狭く捉えられているせいだと思います。

働き方改革は最終的には経営者の覚悟が問われる経営改革。ヤマト運輸のように、一部の人の頑張りやサービス残業で成り立つビジネスモデルや、時間制約ができた途端に活躍から排除されるような会社の仕組み。そうしたモデルからの切り替えを示唆しています。

働き方改革を、新しい時代へのシフトのチャンスと捉えてほしい。

取材と政府の会議での提言のすべてをつぎ込みましたので、ご笑覧いただけましたら幸いです。

新刊の中では、「大手マスコミは働き方を変えられるか? 記者たちの覆面座談会」と題して、大手テレビ局、新聞社で子育てをしながら働く女性記者による座談会を実施しました。その内容を、3回に分けてご紹介します。

===(以下、『御社の働き方改革、ここが間違ってます! 残業削減で伸びるすごい会社』より抜粋)

===

テレビや新聞といったメディア業界は、やりがいはあるが、マッチョで長時間労働が当たり前となっている職場の代表例だ。メディア業界で働く、女性記者たちの本音の座談会をお届けする。

好きな仕事についているのに、なぜ彼女たちは苦しいのか? そこには女性が活躍できない理由がたくさん潜んでいる。さらに、女性が活躍しないことのリスクも読み取れる。多様な人材が活躍できない職場には「ニュースをニュースとしてキャッチできる感度」がない。この座談会の女性たちに任せていたら、保活問題(保活=子どもを保育所に入れるための親の活動)は、話題となったブログ「保育園落ちた 日本死ね!!!」の五、六年前にニュースとして注目されていただろう。

座談会出席者プロフィール(仮名)

佐藤さん テレビ局勤務 子ども2人

小関さん テレビ局勤務 子ども1人

山口さん 新聞社勤務 子ども1人

青木さん 新聞社勤務 子ども1人

(座談会内では敬称略)

ベビーシッターと保育園で、計算するのがこわいくらいお金をかけています。

佐藤 私はテレビ局に勤めています。育休復帰後も報道の仕事で時短を申請しました。でも実際は、時短はあってないようなもの(苦笑)。何か事件が起これば、夫に電話をして、夫がダメなら延長保育をお願いして、取材に行きました。しかし、そのような仕事の仕方が成り立たなくなってきて、別の部門に移りました。うちは実家力がゼロなので、ベビーシッターさんを定期的にお願いして、家族のように支えていただいている。「家族外家族」で乗り切っています。

小関 私もテレビ局に勤めています。やはり報道の仕事。しかし、チェック作業のような「マミー・トラック的」な仕事しかできなくて悶々としていました。子どもが病気がちだったこともあって、「もっとやりたい」とも、なかなか言い出せなかった。夫はずっと単身赴任。週の半分くらいシッターさん、ファミリーサポートさんにお迎えや送りをお願いしています。外注しまくってやっています。

白河 かなり残業がありますか。

小関 シッターさんに預けられる日は、最大で八時半まで残業。ほかの日はパーッと帰ります。基本的には内勤の仕事ですが、「今日は忙しいから中継に行って」と言われて取材にも行くことがあります。また、個人的に保育園企画はずっと追い続けているので、そういう取材には行きます。

山口 私は新聞社に勤めています。新聞社って、女性記者は子どもを産んだら記者から外れるのが当たり前でした。特に地方はそうだった。私は地方が最初の配属先だったので、出産後も働き続けることは想像がつきませんでした。だから出産後に転職しようと思ったんですけど、引き留められて残りました。やれるところまで続けてみようと思って。東京に戻ったら、自分と同じように産んで働いている記者が社内にもいるし、他社にもいることがわかった。

白河 勤務時間はどうですか。

山口 定時で帰れる部署に半年くらいいて、定時に帰っていました。でも、新聞の一面や社会面などに記事を載せようと思うと、ずっと社内に残っていなければいけない。子育てとの両立は難しいです。夫婦で分担してやっていますが、ベビーシッターと保育園で、計算するのがこわいくらいお金をかけています。それでも手が足りなくて、義理の両親を頼ってしまっています。

青木 私も新聞社勤務です。記者には「朝回り」「夜回り」という仕事がありますから、子どもを産むまでは、朝から晩まで仕事。出産して復帰後は無理だなと思っていました。新聞社には「遊軍」というのがあって、毎日の取材ではなく、その時々のテーマを追いかける仕事があります。復帰した記者は遊軍に回ることが多い。私もそういう部署に配属してもらったので、だいぶ都合がつけやすくなりました。フルタイムプラスアルファで週五十時間くらい働いています。週に二、三回は、シッターさんに預けて夜の取材もやっています。私も実家に頼れないので、二人目はどうしようかと思っています。

二十四時間働けない人は、「使えない人」認定されます。「B級労働者」扱い。

白河 メディアでの仕事は基本的に長時間労働ですよね。

山口 新聞は「二十四時間労働」がデフォルトです。

小関 テレビも、報道、バラエティ、ドラマ、どの部門も二十四時間労働です。

佐藤  二十四時間働けない人は、「使えない人」認定されます。「B級労働者」扱い。

山口 ずっと「休みは悪」であるかのように教わってきました。

小関 私たち自身が「二十四時間がんばるマン」でオジサンに同化してやってきちゃったんですよね。

山口 採用の最終面接で「親の死に目に会えないよ。そういう仕事だよ」って言われたんです。「わかってます」って答えたのも記憶にある。

小関  自分の結婚式に出られなくて、奥さんだけ出たっていう話も聞くし。

山口 それがむしろ武勇伝なんだよね。

青木 「結納に出られなかった」といった話も本当によく聞きます。

白河 みなさん、二十四時間がんばってきた頃を振り返ってどうですか?

小関 二十四時間仕事をしているときは、ハイになってそれなりに楽しかった。「でっかい事件、キター!」みたいになって、アドレナリンが出てたと思う。

山口 でも、普通の人が何十年もやれる仕事じゃないですよね。何十年もやっているオジサンたちが、ただの廃人と化していくのを見ていますから……。

白河 持続可能な働き方ではないと。霞が関の官僚の場合、女性でも子どもができる前は徹夜仕事をして、朝タクシーで帰るのは当たり前です。その中の一人の女性に聞いたら、「今しかできない修業みたいなものがある、と思っていたけれども、あらためて俯瞰して見直してみると、じつは違ったのではないかと思う」と。多くの女性がそう考えているのではないでしょうか。

【会社は個人のサバイバルゲームの戦場】

白河 子育て中の社員に対して、会社の取り組みはどうですか。

小関 会社自体の取り組みは、ほとんどないですね。配慮はしてくれますけど、上司次第です。たまたま理解のある上司の場合はいいけど。

佐藤 この業界は、まだ給料もそこそこいいし、中高年男性社員は専業主婦の奥さんがいる人がほとんど。だから、奥さんが働くことがあまり理解できない。

山口 でも、私たちの世代はよほどの事情がないかぎり共働き。女性が時短勤務をしたり、ある程度仕事をセーブしたり。

小関 この先どう考えても、専業主婦はやっていけなくなる。

青木 新聞もそうですよ。先細り。

佐藤 でも、これまでは奥さんが専業主婦の社員が多かったから、男性が育児を担うことにまったく理解がない。

小関 職場復帰したときに、「収入のある旦那さんと結婚しているから、そのままかと思っていたよ」とか「なんで君、復職したかったの?」と言われました。

青木 ありますよね。しかも、言っている人には悪気がないのが、さらに頭にくる。さらっと「無理しないで」と言う人もいますね。

小関 うちは部門によって「女はいずれいなくなればいいな」と言っている人もいる。

佐藤 部長クラスは、「なんで働けない女をうちの部で引き受けなきゃいけないんだ、ほかの部でも分担しろ」と言っている。重荷なんですよ。

青木 会社は、口では「子育て支援」なんて言いますけれど、働いている上司のオジサンの感覚はまったく違う。

佐藤 その中で女性はみんな、個人でサバイバルをやってる。シッターさんにお願いしたり、外注しまくって。

山口 外注かババちゃん幼稚園じゃないと成り立たないですね。

白河 三人子どもがいると、ベビーシッターは二人雇わなければいけないんですよね。それも、みんな知らない。三人子どもがいると二倍お金がかかる。

佐藤 そういうことを、職場でいちいち説明しないと軋轢が生まれてしまいます。「なんで、あいつはあんなに休んでいるんだ」「上の子は元気なのに休んでる」って言われる。

夫がリストラされたら、喜んでフルタイムに

白河 男性で育休を取る人はいますか。

山口 チラホラいますが、陰口をたたかれてます。ある経営者に「男性の育休ってどう思いますか」って聞いたら、「そんな奴、いらないんじゃないの」というくらいの返答をされたことがあります。

佐藤 妻の側は、そういうことをわかっているから、夫に育休を取ってと言えない。

小関 保活の取材のときに、「旦那さんに育休を取ってもらうのはどうですか」と聞いたんだけど、誰からもいい返事はもらえなかった。

白河  女性も夫の働き方を変えてはいけないと思っていますよね。

山口 だから、女性が全部やっている。

小関 私の夫の勤め先は、長時間労働の巣窟で、社内の風土は、ボスが帰るまで帰れない。子どもが生まれたときは、夫が転職したばかりだったので、慣れるまでは私が時短勤務をすることにしたんです。そうしたら、そのままズルズルと来てしまって、もう、怒りが収まらない。夫は長時間労働で、平日は「戦力外通告」。夫を頼りにしてイライラするくらいなら、夫は死んだものと思っていたほうがいい。

白河 その「夫は死んだもの」という台詞、よく聞きます。たまに男性のほうが専業主夫になったという例がありますけど、そういうことは考えていないですか?

小関 考えてます。私、夫が帰ってきて「俺、リストラされた」って言ったら、「じゃあ、私がフルタイムに戻しますね」って胸を張って言うと思う。ひどいかもしれないけれど、リストラされちゃえばいいのにって思うことすらあります。男性にもそういう経験が必要だと思う。

次回へ続く)

相模女子大特任教授、昭和女子大客員教授、少子化ジャーナリスト

東京生まれ、慶応義塾大学。中央大学ビジネススクール MBA、少子化、働き方改革、ジェンダー、アンコンシャスバイアス、女性活躍、ダイバーシティ、働き方改革などがテーマ。山田昌弘中央大学教授とともに19万部超のヒットとなった著書「婚活時代」で婚活ブームを起こす。内閣府「男女共同参画重点方針調査会」内閣官房「第二次地方創生戦略策定」総務省「テレワーク普及展開方策検討会」内閣官房「働き方改革実現会議」など委員を歴任。著書に「ハラスメントの境界線 セクハラ・パワハラに戸惑う男たち」「御社の働き方改革、ここが間違ってます!」「『逃げ恥』にみる結婚の経済学」「女子と就活」「産むと働くの教科書」など多数。

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