勝利した者が決める、参院選の争点

安倍さんは「改憲のためだったら何でもする」んですから、他人のこと言えないのでは…

マスコミや有権者がどう考えようと、参院選の争点は「改憲問題」です。なぜなら、選挙の実質的な争点は、勝った者が決めるのですから。そして、安倍晋三氏は、「憲法改正」をひたすら目指してきた政治家です。以下は、「河北新報」6月29日朝刊掲載のインタビューを若干修正したものです。

――参院選では、憲法改正の国会発議に必要な3分の2の議席を改憲勢力が占めるかどうかが焦点です。改憲論の現状、問題は何ですか。

「自民党は現行憲法を連合国軍総司令部(GHQ)による押し付け憲法だとし、自主憲法制定を党是に掲げる。全面改憲に対しては国民の心理的抵抗が強いことはよくわかっているので、第一段階として部分的な改憲を目指している。戦争や災害時に一時的に政府の権限を拡大する『緊急事態条項』の創設を狙う。だが、東日本大震災の被災地で緊急事態条項がないため憲法が救助や復旧の足かせになったとの声は広がっていない」

(想定される全面改憲の実行プロセスについては、別の記事を参照のこと。なお、私の示した見通しについては、安倍政権による改憲運動に強い影響を及ぼしている日本会議の有力メンバーも裏づける発言を行なっている。)

――護憲側の課題は。

「敗戦後、吉田茂首相は国会で憲法9条と自衛権の関係を問われ、自衛のための戦争も否定した。その後、9条が変わることなく、自衛隊が誕生した。この矛盾をなくすため、憲法で自衛戦力の保持を規定すべきだとの考えに一理あることは確か。だが、護憲的な立場からの改憲論は、今まで主流の意見にはならなかった。護憲側には自衛戦力を明記すれば9条に小さな穴が開き、そこから完全に崩壊するとの警戒感からこの矛盾に取り組めなかった」

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――集団的自衛権を行使可能とする安全保障関連法が昨年9月に成立しました。

「戦後日本は多くの面で米国に従属してきたが、9条によって軍事面では従属に歯止めがかけられた。それが新安保法制と自民が目指す全面改憲で軍事面でも米国に完全追従する形になる。改憲派の最大のパラドックス(逆説)は、米国製の押し付け憲法はけしからんと言う一方、対米従属レジーム(体制)を完成させようとしていることだ」

――参院選での憲法論議の行方は。

「最大の実質的争点だが、与党は隠して論戦も控えるだろう。自民党は改憲草案で目指すゴールを示しているのだから、有権者は見極めてほしい。草案では、国家が人間の内面に踏み込まず、価値観を押し付けないとする自由主義と近代憲法の原則があやふやだ。個人の存在を小さくして国家を優先させようとしている」

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――憲法論議はどうあるべきでしょうか。

「戦後長く続いた9条と自衛隊の間の矛盾の問題に取り組む必要があるのは確かだ。それでも現政権での改憲には反対だ。憲法は国家権力への制約であるという立憲主義の原則も知らない政治家がいる」

「伝統と文化、国土を何よりも大切にして守るのが保守主義。国土を汚した福島第1原発事故は保守政治家にとっては最大の痛恨事であったはずだ。だが、政権は原発推進の路線にいまだに固執している。守るべきものが相続した権力以外何もない劣化した自称保守政治家による改憲は問題外。現在の改憲勢力の中核を退場させてはじめて、憲法について議論できる前提が成立しうる」