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炎上中の「菅首相はワクチン頼み」全文書き起こし。立憲民主党の枝野代表は何と言ったのか?

篠原修司ITジャーナリスト/炎上解説やデマ訂正が専門
(写真:つのだよしお/アフロ)

 立憲民主党の枝野幸男代表が、26日に放送されたラジオ日本の番組で「菅首相はワクチン頼み」と発言したと報じられました。これを受けて「ワクチンなしでどう対処するのか?」と批判され、炎上しています。

 一方で、枝野代表も「見出しが一部に誤解を与えていますが、本文中にもあるように、ワクチン接種の重要性を前提に述べた上での発言」と反論しています。

 これはもう典型的な切り取り記事の問題になっていると思ったので、番組を実際に聞いて全文を書き起こしました。

枝野代表「菅首相はワクチン頼み」全文書き起こし

 以下は26日に放送された『岩瀬惠子のスマートNEWS』での問題部分の書き起こしです。少し長いですが、話が繋がっているため冒頭より書き起こしています(敬称略)。

岩瀬「今朝は立憲民主党代表で、衆議院議員の枝野幸男さん、お迎えしました。おはようございます」

枝野「おはようございます」

岩瀬「よろしくお願い致します」

枝野「お願いします」

岩瀬「前回2月3日、ご出演だったんですけども、そのときも緊急事態宣言中でしたね」

枝野「そうでしたね」

岩瀬「あれは2回目の緊急事態宣言中で、現在は3回目の緊急事態宣言中。なんかいつまで経っても、緊急事態宣言ですね」

枝野「や、だから。2回目が早く解除しすぎたんですよ」

岩瀬「あ、そうなんですかね」

枝野「早く解除すれば、すぐにリバウンドするって、ようするに専門家の話聞かなくたって素人にもわかるじゃないですか」

岩瀬「そうですね」

枝野「だって、たくさん感染者がまだいるということは、あー、症状が出ていない人たちもそれだけ潜在的にたくさんいるんだから、その人たちが活発に動き出した瞬間に広がるのはもう当たり前のことで。

もういま、東京で1日100人、悪くとも100人、できれば50人。ぐらいの水準まで下げないと、すぐにリバウンドすると。そこまでは我慢しないと。そこまで我慢すればたぶん、そっから先ちゃんとやれば、リバウンドは抑え込んで、4度目なしですむと思います」

岩瀬「そうですか」

枝野「はい。まあオリンピックとかやっちゃまた別ですけどね」

岩瀬「まあそうなのね。やりそうですけど。二桁まで減らすには、まあ今日の新聞ね。あのー、緊急事態宣言、来月の二十日ぐらいまで、で、調整なんじゃないかっていう。ここまでで、東京もね、きっとそうなるんでしょうけど、減りますかね?」

枝野「うーん、まあそこでどこまで減ってるかですけど、まあたぶんその100切るとか、そういう話は、難しいだろうと思いますけどね。そうするとまたすぐリバウンドですよ。1ヶ月半ぐらいでまた、そのー、医療ひっ迫で大変だみたいな話。残念ながらなってしまいますよ。いやむしろ、変異株は感染力強いって言われてるからもっと早いかもしれない」

岩瀬「そうですね」

枝野「はい。だから、とにかく、徹底して抑え込んでからじゃなきゃダメだし、そこ我慢してくださいって言うのには金配んなきゃダメなんですよ」

岩瀬「やっぱりただ我慢してくださいって言うのは」

枝野「そりゃ無理だし」

岩瀬「精神論だと、まあ小池知事なんかは疲れないでくださいって言うんですけど、でも人間ってやっぱり、ちょっとこう自粛疲れって出てきてしまうのはしょうがないですね」

枝野「んー、まあとにかく普通の人にとってもそうだし、やっぱ商売の関係の人たちにとっては無理ですから。そりゃちゃんとお金配ると。それからやっぱりもうちょっとメリハリつけた方が良くて。

たとえばいま美術館とかもダメとかなってるみたいですよね。よくわかんないんですよね。やっぱりそのー、たしかに飲食とか、とくにお酒飲んでワイワイ騒いだらリスク高いだろうというのは間違いないですけど」

岩瀬「ええ、ええ、ええ」

枝野「じゃあ、表で飲んだ、飲むって話になっちゃったりとかしたし、時短のときは8時までだから7時台にお客さんが集まったりとか。もうちょっと1年以上やってるんだから、やっぱり人の行動のパターンちゃんと読んで、やっぱりいろんなものを我慢をして頂くにしても、やっぱり感染に対するのにどうしても不可欠な部分(は)どこか。

んー、まあ一定のリスクはあっても、でもここならリスクは低いから、そこは許容しようとか、もうちょっとメリハリつけないと、やっぱりこれもう下手すると、これワクチンに、なんかなぜか菅さんはワクチン頼みですけど、えー、ワクチン打ったらかからないのかとか、んー、感染の広がりが抑えられるのかってまだわからないし、最近の変異株がいろいろと変異してるの見ると、強い良いワクチンがあれば、それに打ち勝つ変異が起きるっていうのがまあ残念ながらワクチン、あのー、こういったもののね、体質だから。本質だから。わかんないですから。あー、ちゃんとワクチン頼みじゃなくても抑えられるようなことに、あの、舵切らなきゃダメですね」

岩瀬「まあ考えてみたら、たしかに1年以上私たちコロナと向き合ってるわけですから、あのー、まあ1回目の緊急事態宣言のときはみんなこう、得体のしれない感染症に立ち向かうということで本当に、あの国民みんなが家のなかにこもった。だから、あのー、車などね、道路も本当に空いていましたし、東京都内もね。

でもいまなんて、緊急事態宣言なのかなって思うぐらい、車も混んでますし。ただ1年以上のね、いままさに枝野さんがおっしゃったように、私たち知見があるわけですから。それを使ったほうが、良いでしょうね」

枝野「そうです。たとえば、これだけ満員電車で毎日通勤しているのだけれども、少なくともそこが感染を爆発的に広げたっていう、こういう事実はこの1年出てきてないわけで」

岩瀬「そうですね。それこそエビデンスがそこにはなさそうですよね」

枝野「そうなんですよね。で、まあたしかにお酒飲んでワイワイ騒ぐと危ない。じゃあたとえば、その客席の数を半分に減らした映画館とか出てないじゃないかとか。

じゃあ飲食店だって、あのいわゆるコンパみたいな感じでワイワイ騒ぐ飲み会は危ないかもしれないけど、うーん、普通に静かに料理を楽しむ店で、客席半分で、アクリルボード立てて、ちゃんと換気したらどれぐらいリスクあるのかとか。

ちゃんともうある程度データはあのいろんなところで取ってるんだから、国で一括でちゃんと集めれば、あのもうちょっとやれることは、ちょうどゆるめられるところはある。一方で、ある程度が減るまではそういう状況でないと、すぐリバウンドですよ」

岩瀬「そうですね、まああのエンターテイメント界もけっこう厳しくて、たとえば吉永小百合さんなんかもね、演劇は良いのに、映画はダメっていうのがものすごく悲しいって」

枝野「まったく、まったく意味わかんないです」

岩瀬「そうですよね」

枝野「意味不明です。だからこれはなんなのかっていうのは、はい」

岩瀬「そうですね。ただ、思ったのは、あのたとえば小池都知事がね、不要不急の外出はやめてくださいって言ったけど、映画であるとか、演劇であるとか、美術館であるとか、これを不要不急と言ってしまえば不要不急かもしれないから、そこの、こう、なんか言ってることとやってることが矛盾しちゃうっていうか、ていうのはあるけれどもでも1年経ってるんだからやっぱりそれはちょっとメリハリをしないと」

枝野「うん、そこはだって、美術館、たとえば入場規制とかで、あのー、まあものすごくね、良い展覧会だから、たくさん人が集まるみたいなときに密になっちゃ困るから、入場規制しますとか」

岩瀬「むしろいま、気持ちよく観られるみたいですからね」

枝野「そう、予約制にするとか、みんな工夫してるわけですよ。ディズニーランドなんかだって予約制で人数制限でしょ。映画館だってそうでしょ。そういうことで、じゃああの感染拡大させたエビデンスあるのか。

じゃあ飲食店だって、あのー、本当に変に時短とかするよりは、客席の数をしぼらせてもらうと、そうすると売上がどれくらい減るかって読めるから、逆に補償しやすいんですよ」

岩瀬「そうですね。客席が半分になってしまったら、じゃあ半分補填すれば良いとか、その何パーセントとか」

枝野「そうです。そうです。そこに転換をしつつ、ちゃんとお金は必要なものは払って、で、なおかつ、少し、ちょっと長期我慢してください。と」

岩瀬「まあでもそういうことがないと長期我慢できないですもんね実際。あー、そうですか。まああの昨日、一昨日から、大阪東京あたりで大規模接種会場も始まって、この菅総理が賭けているワクチン接種ですけれども、あの大規模接種会場は混乱なくスムーズにいったようですね」

枝野「ただ、これから各自治体が、自治体がやってくださいって言って自治体まかせで、自治体はそれぞれ工夫をして、スムーズに進めようと思って、で、先行してたわけですよ。それに対して、こう、大規模(接種)をべつに国が乗り出してきたりとか」

岩瀬「まあやっぱり1日100万回打たなきゃいけないから」

枝野「で、でも、東京と大阪あわせても、その2%にもならないわけですね、100万件の。えー、という話でこの自治体の予約との混乱が出てくるんじゃないのかっていう話と、それからいずれにしてもこれ、あの摂取する医療関係者の数が足りないっていう問題なので」

岩瀬「ですね。注射打つ人ですね」

枝野「うん、だから大規模でやろうが、どうしようが、これ自衛隊の医療関係者の皆さんにご協力頂く仕組みを作ったことに意味があるんで、あのー、大規模かどうかは実際あまり関係ないと。問題は医療従事者が足りないという状況は根本的には変わってなくて、で、そうすると、まあ高齢者だけでも7月末は、たぶん無理だと思います。で、そのあと現役世代に入ってって、まあ、とても年内に打ちきるような状況ではないですよね」

岩瀬「そうかもしれませんね」

枝野「で、一方で、じゃあ打ったワクチン、どれぐらい効果あるのって、何ヶ月効果あるのってまだわかんないわけですよ」

岩瀬「そうですよねぇー」

枝野「で、ちなみにインフルエンザは半年くらいなわけですよ。で、どうやら半年後にも抗体はあるらしいってところまではエビデンスがあるらしいんですが」

岩瀬「だから1年中打ってなきゃいけないってことですかね」

枝野「うん、また1年後におんなじオペレーション繰り返すのかもしれません。これわかんないわけですね。で、また変異がある。だからワクチン頼みは危ないです。もちろんワクチンをどんどんやることはものすごく大事なこと。それでだいぶリスクが下げられるけど、1本足打法じゃ危ないです」

岩瀬「んー、そうですか(自衛隊活用の話へ)」

ラジオ日本『岩瀬惠子のスマートNEWS』より。

ワクチン接種以外の対策をもっとやるべきという話

 ちょっと長いので理解が難しいところもあるかもしれませんが、まとめると

  • 100人切るまで緊急事態宣言を続けるべき
  • 店舗の営業自粛にはお金を配ることが必要
  • 感染リスクの低い店舗は営業をさせた方が良い
  • 料理店も時短より感染対策をしてもらい、客席を減らした分の補償をするほうが良い
  • ワクチンを打っても感染の広がりを抑えられるかわからない
  • 現役世代は年内にワクチンを打ちきるような状況ではない
  • ワクチンの効果が時速するのもいまわかってるのは半年で、どれくらい続くかわかっていない
  • ワクチンに打ち勝つ変異株が出るかもしれない
  • だからワクチン頼みは危ない

 というような内容です。

 「ワクチンだけに頼る」のではなく、それ以外の対策をもっと強化するべきといった内容です。

世間が求める「ワクチンを否定した」と受け取られた

 問題は、世間というか社会の空気として「ワクチンが救世主」と期待されているなかでの発言という点です。

 イスラエルやアメリカなどがワクチン接種により高い効果をあげているなかで、「ワクチン頼みは危ない」という意見は世間に拒否されます。

 というのも、枝野さんの主張する対策は感染拡大を抑えるためのものでしかなく、新型コロナウイルスに勝つためのものではないからです。

 営業自粛のためにお金を配ったり、店舗の感染対策をすすめて緊急事態宣言中でも営業を続けられるようにしたりしても、それではおわりがありません。その状況がずっと続くことが容易に想像できてしまいます。

 番組内でもありましたが、すでに1年以上にわたって日本は新型コロナウイルスと付き合っており、国民のなかには不満(ストレス)が溜まっています。

 そういう状況で待ち望んでいたワクチンという救世主。枝野さんの発言はそれを否定したと受け取られたと考えられます。

 だから「菅さんはワクチン頼み」という発言が燃えたわけです。

切り取り報道問題はあるが炎上の結果は変わらない

 もちろん、一連の炎上は切り取り報道の問題を抱えています。

 以前、菅総理の内閣官房庁時代に起きた東京新聞との「あなたに答える必要はありません」、「その発言だったら指しません」騒動を書き起こしたことがありましたが、全文を確認すると印象が変わることは多いです。

 今回の「菅首相はワクチン頼み」も、全文を読むとそこまでおかしなことを言っているわけではありません。

 ワクチンがすぐに国民全員に行き渡る状況でもないため、それ以外の対策を進めることは重要です。

 ただ、炎上の結果は変わらないと思われます。

 これは単に与党支持か、野党支持かという問題です。仮に「菅さんはワクチン頼み」だけではなく「もっとほかの対策も同時に進めるべき」も書かれていたとしても、燃えたことでしょう。

 最近の炎上というか騒動は、与野党の支持層により起こされることが多いです。そのためあまり触れないようにしているのですが、今回は切り取り報道の問題を抱えているため取り上げることにしました。 

 枝野さんの「菅さんはワクチン頼み」発言は、全文読んだうえで賛同 or 批判することをおすすめします。

ITジャーナリスト/炎上解説やデマ訂正が専門

1983年生まれ。福岡県在住。2007年よりフリーランスのライターとして活動中。スマホ、ネットの話題や炎上などが専門。ファクトチェック団体『インファクト』編集員としてデマの検証も行っています。最近はYouTubeでの活動も。執筆や取材の依頼は digimaganet@gmail.com まで

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