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ネット選挙の手応えがイマイチなのは普段からネットで活動してないせいです

篠原修司ITジャーナリスト/炎上解説やデマ訂正が専門
知らない候補者名をググるとかないですから

ネット選挙解禁から3度目の国政選挙となる今回の参院選。候補者の多くが利用するなか、「あまり手応えを感じない」、「無党派層に広がらない」といった声が今回もメディアを通じて聞こえてきました。

「ネット選挙効果あんの?」と吐露する候補者たち

ネット選挙が始まって3年たち、参院選で候補者や政党は様々な発信に努めている。だが、有権者の反応や陣営の手応えはいま一つ。米国の大統領選に関わる専門家らは「有権者に参加を促すような工夫が必要」と指摘する。

出典:ネッネット選挙解禁から3度目の国政選挙となる今回の参院選。候補者の多くが利用するなか、「あまり手応えを感じない」、「無党派層に広がらない」といった声が今回もメディアを通じて聞こえてきました。ト選挙、まだ片思い 候補者らFBや動画活用…反応いまいち 参院選:朝日新聞デジタル

ただ、ある候補の陣営は「どういう反応があるかはやってみないと分からず、手探り感が強い」。別の候補の陣営は「ネットは若者層への拡散手段となるが、投票率の高い中高年層を狙って地元を歩くといった地道な運動があってこそだ」と、「ネット選挙」の効果に懐疑的な見方も示している。

出典:【参院選】SNSや動画配信サイトで情報発信 「ネット選挙」今回も手探り (産経新聞) - Yahoo!ニュース

各候補はホームページ(HP)やフェイスブック(FB)、ツイッターなどを駆使するが、「どの候補も利用しており、差別化が難しい」との声も漏れる。

(中略)

ネット選挙に詳しい北海道大大学院の吉田徹教授(比較政治)は「有権者によるメールを使った投票呼び掛けなどできないことが多く、選挙を大きく変える起爆剤になっていない」とした上で、「無党派層の取り込みより、政党支持者の囲い込みなどに利用されている。効率的な動員に有効なツールなので、市民団体などのボトムアップ型の運動に効果を発揮するのではないか」と指摘している。

出典:参院選:ネット選挙戦 各候補、差別化に苦慮 - 毎日新聞

10年以上ネットで仕事をしてきた人間として私は言いたい。「ネットはそんなに優しくない」、と。

上から目線で威張りたいわけではありません。でも、いきなりネットにパッと現れて、みんなにメッセージを伝えられる立場になれるなんてありえないじゃないですか?

ネットは長期間の活動がモノを言う

ネット選挙で効果を出したいなら、選挙のときだけネットに顔を出してもダメです。

むしろ選挙以外の期間に、どれだけネットで活動してきたかがモノを言います。「ネット選挙が解禁された」のではなく、「選挙運動期間中のネット政治活動が解禁された」があるべき認識です。

選挙の前からずっとこの国の目指す未来について、実施したい政策について語り続けてきた人だけが、そのかけた時間だけ有権者に反応して貰えるのです。

今回の参院選でネット選挙活動を始めた方は、おそらくそのほとんどが効果を実感できないでしょう。しかし、今から次回の選挙に向けてネットでの政治活動を続けていけばどうでしょうか? そのときは、きっと効果を実感できるはずです。

最初は誰にも読まれなくても、少しずつ自分の読者、支持者を増やしていく。そして、選挙運動期間も支持者に対して語りかける。それこそがネット選挙の姿だと私は思います。

SNSでは対話を心がけて欲しい

また、SNSを利用する場合に気をつけて欲しいのは対話の窓口を閉ざしてはいけない――端的に言えばTwitterでブロックしてはいけないという点です。

この記事では特定の政党を貶めるつもりはないため具体的な例を挙げませんが、よく反論されただけで有権者をブロックする議員の方がいらっしゃいます。「誰それにブロックされた」という情報は、ネットでは拡散されやすいです。また、それを面白がって「自分もブロックされよう」と議員にちょっかいをかける輩もいます。

ブロック、しないでください。

もちろん毎日のようにバカだのアホだの罵倒してくるとか、誹謗中傷をしてくるならブロックもしょうがないと思います。でも、それ以外ではブロックしないでください。私たちネットの有権者は、「どうしてブロックしたのか?」を見ています。

その理由に納得できない場合、それは議員さんと、所属する政党の評価に直結します。そして、選挙のときに選ばない理由になります。

もしも最初から対話をするつもりがないなら、SNSを使わない方がいいです。

公式サイトやブログで情報を発信し、SNSはなりすましが発生しないように公式アカウントを取得。そのうえで公式サイトやブログの更新情報をツイート・シェアするだけにしましょう。SNSに支持者からの声が届いても、反応しないようにしてください。

支持者の声にだけ反応する人は、「支持しない人とは対話するつもりがない」という声を発信しているのと同じです。

だから、SNSを使うのであれば有権者との対話を心がけて欲しいです。

落選しても諦めずに継続した発信を

もしも今回の選挙で落ちても、次がある、次も頑張ろうと考えている候補者の方は、ぜひ継続した発信をお願いします。

継続してくれないと、私たち有権者にその声は届きません。

いま、ネットは情報で溢れかえってきます。ポータルサイトやニュースサイト、そしてSNSから流れてくる情報を受け止めるだけでいっぱいいっぱいです。

そこに声を届ける。これはもう、日々の発信を頑張って貰うしかありません。そうして発信し続けた声のうちのいくつかが生き残って、私たちのもとに届きます。

もう選挙も残すところあと1日。「ネット選挙、あまり手応えがなかったな」と感じるのであれば、それはご自身が普段から活動されてないせいです。

次の選挙では手応えを感じられるよう、ぜひ継続した発信を始めてください。

ITジャーナリスト/炎上解説やデマ訂正が専門

1983年生まれ。福岡県在住。2007年よりフリーランスのライターとして活動中。スマホ、ネットの話題や炎上などが専門。ファクトチェック団体『インファクト』編集員としてデマの検証も行っています。最近はYouTubeでの活動も。執筆や取材の依頼は digimaganet@gmail.com まで

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