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「人口減少時代の水道料金はどうなる?」約55%が今後3年以内に値上げ必要

篠原修司ITジャーナリスト/炎上解説やデマ訂正が専門

2040年(平成52年)時点で日本全国の各水道事業体が赤字経営にならないためには、その約98%で水道料金の値上げが必要であり、約55%は今後3年以内(平成29年度まで)に実施する必要があるとの推計結果が2月26日に公表されました。

人口減少時代の水道料金 推計結果を公表|お知らせ|新日本有限責任監査法人

この推計は、新日本有限責任監査法人と『水の安全保障戦略機構事務局』の共同研究結果である「人口減少時代の水道料金 全国推計」によるものです。

人口減少社会では、各水道事業体の収入は人口と連動して右肩下がりで減少していきます。もし、今のままの形の水道を維持しようとしたならば、将来の水道料金はいつの時点でどれくらいになるのか? その推計が行われました。

事業体の約98%で料金の値上げ必要。約55%は今後3年以内に

推計では、今回の分析対象となった1,242事業体のうち、その約98%にあたる1,221事業体が2040年までに料金の値上げが必要となりました。

これらの事業体のうち、604事業体においては30%以上の料金改定が必要であり、料金改定率の平均値は34%(中央値は30%)。最大値は兵庫県の播磨高原広域事務組合の198%です。

また、全体の約55%にあたる682事業体では、今後3年以内(平成29年度まで)に料金改定が必要になるとみられています。

新日本有限責任監査法人発表のデータより。
新日本有限責任監査法人発表のデータより。

給水人口が少ないほど料金改定率が高い傾向

料金改定率は給水人口の少ない事業体ほど高い傾向にあり、50%以上の高率での料金改定が必要となる可能性があるのは、給水人口が20万人未満の事業体に集中しています。

地域別に見ると北海道・東北地方において料金改定率が高い傾向にあり、30%以上の料金改定が必要な事業体のうち、約3割が北海道と東北地方です。

逆に、東海地方では料金改定率が20%未満となる可能性がある事業体の割合が高いとのことです。

新日本有限責任監査法人発表のデータより。
新日本有限責任監査法人発表のデータより。

各事業体は広域化、事業改革が必要

今回の共同研究の結果において、現状のシステムを維持しようとした場合、市民には多くの負担が必要なことが分かりました。

研究では、これを解決するために徹底的な経営の「見える化」と「目指す姿」の具体化を行い、次に広域的運営体制の構築や民間との大幅な連携を通じて、事業運営体制を抜本的に強化することが望まれまれるとしています。

人口が減り、「消滅可能性都市」の存在すら叫ばれるなか、私たちはこの日本でどのように暮らしていけば良いのでしょうか。若い人たちは自治体の将来も含めた暮らし方を、今から考える必要があります。

ITジャーナリスト/炎上解説やデマ訂正が専門

1983年生まれ。福岡県在住。2007年よりフリーランスのライターとして活動中。スマホ、ネットの話題や炎上などが専門。ファクトチェック団体『インファクト』編集員としてデマの検証も行っています。最近はYouTubeでの活動も。執筆や取材の依頼は digimaganet@gmail.com まで

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