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『週刊ポスト』が暴いたスキャンダルに雲隠れを続ける吉川議員の四面楚歌

篠田博之月刊『創』編集長
『週刊ポスト』が2週に渡って放ったスキャンダル(筆者撮影)

 セクハラ疑惑に公人として説明責任を果たすどころか、逆に報道した側を提訴するという、細田博之衆院議長の対応も問題だが、もっと問題なのは『週刊ポスト』にスキャンダルを報じられた吉川赳議員だ。自民党は離党したものの追及が収まらないとわかると、国会にも姿を見せず雲隠れを決め込んでいる。逆に言えば、現場の証拠を押さえられており、言い訳がきかないと判断したためかもしれない。

発売当日に自民党を離党するも事態は収まらず

『週刊ポスト』が「岸田派ホープと“おさげ髪18歳”のパパ活『飲酒』現場」というスクープを放ったのは、6月10日発売の6月24日号だった。5月27日の夜、吉川議員が汐留の高級焼き肉店で若い女性と夕食を共にし、その後お台場の高級ホテルに2人で移動したという、その一部始終を尾行・張り込みし、数々の証拠写真とともに報道したのだった。

 確実な情報を事前に入手していたようで、焼き肉店の個室の格子扉から漏れてくる2人の会話をキャッチ。「俺、18歳に興味あるわ」といった吉川議員の言葉も捕捉して(恐らく録音もしていたと思われる)、未成年を飲食店に誘ってアルコールを勧めたという現場を押さえていた。

 その内容が発売前日にウェブ版の「NEWSポストセブン」で公開されると、永田町は大騒ぎになったようだ。そして発売当日に吉川議員は自民党を離党した。    

 一方、『週刊ポスト』は翌週の7月1日号でも第2弾「『18歳だと知らなかった』だと? パパ活飲酒・吉川議員の嘘を暴く」を掲載して追撃した。

 記事の中で匿名の「官邸筋」が、第1弾の反響をこう語っている。「第一報が出ると官邸は大騒ぎになった。党幹部や参院側は“参院選に影響が出るから早く議員辞職させろ”と言ってきたし、公明党が怒って選挙協力にも影響が出かねない。総理は側近に吉川から事情を聞くように指示し、報告を聞くと、離党でなんとか火消しをはかろうという方針になった」 

『ポスト』の取材に吉川議員は強気の対応

 岸田派の議員ということで岸田総理は離党で火消しをはかろうとしたのかもしれないが、その後自民党内では議員辞職を求める声が拡大した。元々吉川議員は静岡5区の選挙区では細野豪志氏に惨敗し、比例復活で当選していたから、離党に伴って当然議席を返上すべきだという声が強まったのだった。吉川議員が直撃取材に応えた強気の発言とは そこまで非難の声が高まったのは、『週刊ポスト』の報道で、18歳の女子大生とホテルに出入りする写真を相当枚数隠し撮りされて掲載されるなど、言い逃れできないような報道だったからだ。

 同誌は当然、締切時に吉川議員本人を直撃、事実関係を否定されたので最終的には書面で回答を求めたのだが、どうやらその時点では証拠写真などは提示しなかったようだ。というのも吉川議員はシラを切ろうとして、最終回答でこう書いていたからだ。

《ホテル内の店舗を探したのは事実ですが、客室を取った事実もありませんし、まして客室に滞在した事実も一切ありません。また、ご質問の女性に金銭を渡したこともありません》

 そして、強気にも威嚇までしていたのだった。《貴誌は「滞在されたことを確認し」たと言いますが、事実がない以上確認できるはずもありません。くれぐれも事実無根の記事を掲載することがないようあらかじめ申し添えます》

予想に反して相手女性は詳細な情報提供

 女性と2人きりしか知らない事実だから、週刊誌に漏れたといっても全貌を押さえられてはいないだろうと、高をくくっていたようだ。しかし、発売された記事を読むと、女性は4万円の小遣いをもらったことや、ホテルに入ってベッドでどんなやりとりがあったかまで事細かに証言しているのだった。記事を読んで、吉川議員は茫然としたに違いない。

 ちなみに記事では、女性が同誌記者の直撃を受け、初めは「知らないです」と否定していたが、徐々に語り始めたという説明がなされている。だが、そういう書き方で情報源への配慮を行うのは、週刊誌の場合、ごく普通のことだ。最初の焼き肉店から『週刊ポスト』側は用意周到に尾行・張り込みを行っているから、事前に女性の協力を得ていた可能性もある(確証はないが)。 

『週刊ポスト』はさらに7月8・15日号で「吉川議員が見せた”悪あがき”」と言う囲み記事を掲載している。それによると、同誌が取材に動いていることを知った吉川議員は必死になって相手女性と連絡をとろうとしたようで、LINE通話に相手が出ないと女性のアルバイト先に押し掛けたという。

 口止めをしようとしたのだろうが、女性は「尋常でない回数の着信が入った」ことや吉川氏の行動を見て同誌記者に「怖い」と語っていたという。

背景にはやはり#MeTooの時代の流れが

 どうも吉川議員は、女性が詳細をメディアに話すことはないだろうと思い込んでいた節があるのだが、昨今の#MeTooの流れを認識していないようだ。金銭を媒介した関係であっても、自分が専ら性欲の対象としか扱われないことに反発し、週刊誌で告発するという事例は増えている。時代は大きく変わりつつあるのだ。

 記事によると、吉川議員には妻と2人の娘がいるという。『週刊ポスト』の誌面には相手女性の、おさげ髪でいかにも18歳といった写真が載っている。吉川議員の娘は恐らく、それを見て衝撃を受けたのではないだろうか。

 選挙で選ばれた公人としての自覚が残っているなら、吉川議員は説明責任を果たし、辞職するのが筋ではないだろうか。

月刊『創』編集長

月刊『創』編集長・篠田博之1951年茨城県生まれ。一橋大卒。1981年より月刊『創』(つくる)編集長。82年に創出版を設立、現在、代表も兼務。東京新聞にコラム「週刊誌を読む」を十数年にわたり連載。北海道新聞、中国新聞などにも転載されている。日本ペンクラブ言論表現委員会副委員長。東京経済大学大学院講師。著書は『増補版 ドキュメント死刑囚』(ちくま新書)、『生涯編集者』(創出版)他共著多数。専門はメディア批評だが、宮崎勤死刑囚(既に執行)と12年間関わり、和歌山カレー事件の林眞須美死刑囚とも10年以上にわたり接触。その他、元オウム麻原教祖の三女など、多くの事件当事者の手記を『創』に掲載してきた。

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