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三浦春馬さん主演映画『天外者』12・11特別上映と「キンキーブーツ」上演めぐる波紋

篠田博之月刊『創』編集長
「キンキーブーツ」をイメージした切り絵(c:海扉アラジン)

300館以上という異例の特別上映

 2021年12月11日、全国各地の映画館304館と台湾の1館という大きな規模で三浦春馬さん最後の主演映画『天外者』が特別上映された。2020年同日の初公開から1年を経ての記念上映だった。映画が公開から1年経ってこれほど大規模上映されること自体異例のことだ。

 これは、三浦春馬さんを偲ぶファン、「春友」さんたちの熱い思いが反映されたもので、この映画に限らず、春馬さんの過去の作品が各地で次々と上映されている。12月11日はその中でも特別なイベントになり、春友さんたちは映画館を何軒もハシゴして思い出に浸った。多くの会場で上映中からすすり泣きが漏れ、終了後には涙と拍手が会場を覆ったという。

 さて、三浦春馬現象とでも呼ぶべき動きが1年以上続いている中で、2020年11月号からずっとそのことに誌面をさいている月刊『創』(つくる)も春友さんたちといろいろな関係ができ、この問題についてはそれなりの影響力を及ぼすようになっている。

 例えば、「キンキーブーツ」3度目の舞台公演が決まったと発表があったことについての春友さんたちの投稿を1月号に掲載したが、ほとんどがそれを知って号泣した、膝から崩れ落ちたという感想だった。それがあれだけまとまって掲載されると、恐らく関係者にそれなりのインパクトを与えたと思う。

 本来は、賛否両論を載せるつもりだったのだが、上演に理解を示した投稿はごくわずかでほとんどが衝撃を受けたというものだった。ただ本誌としては上演に水を差すつもりは全くないことを改めて関係者にはお伝えしたい。

 この「キンキーブーツ」上演に対する投稿の幾つかはこの記事の最後に紹介しよう。

波紋を広げた投稿とフジテレビの対応

 それからもうひとつ、『創』12月号に掲載した神奈川県hotaruさんの投稿も思わぬ波紋を呼び、SNSで議論になったようだ。2020年7月18日、公式発表では春馬さんは14時10分に永眠したとされているのだが、昼前のフジテレビのニュースで春馬さんの死について報じていたのを見たという内容で、現実にはありえないのだが、この投稿は公式発表への疑問を書いたものだった。

他殺説を含め、発表された情報に疑問を抱いている春友さんは少なくないが、投稿した女性もそうした思いゆえに記憶の混濁が生じたのではないかと思われる。こういう意見の人もいるという意味で掲載したのだが、これが予想以上の波紋を広げた。

 フジテレビは本誌1月号のテレビ特集でもやりとりをしている関係だったが、SNSで話題になっていることを知らせてくれて「そういう事実はありません」と指摘してくれた。フジテレビにまで気を使わせたことと、読者をお騒がせしたお詫びを、ここでお伝えしておこう。

神田沙也加さんが亡くなった日はなんと…

 そんな中、12月18日に衝撃の出来事が起きた。松田聖子さんの娘、神田沙也加さんが突然、亡くなったというのだ。18日といえば春馬さんの月命日で、いまだにその日にいろいろな行動を起こしている春友さんも少なくない。

 その18日に起きた出来事とあって、春友さんたちの間に衝撃が走ったのだった。春馬さんの2020年7月18日の後と同じように、テレビはその報道の後に「いのちの電話」などの連絡先を明示するという事態になった。

 もちろん神田沙也加さんの件と春馬さんのケースに直接のつながりは何もないのだが、この1年余、何かのきっかけで深刻に思い悩んでしまう人たち、特に女性にそういう例が多いことを、報道する側も懸念したのだろう。

 ちなみにこの神田沙也加さんの件についてはヤフーニュースに下記記事を公開したのでぜひご覧いただきたい。

https://news.yahoo.co.jp/byline/shinodahiroyuki/20211226-00274455

神田沙也加さん転落死と『週刊文春』自殺報道の衝撃

 ではこの後、「キンキーブーツ」再演についての春友からの投稿を『創』1月号から抜粋して紹介したい。スペースの都合で一部割愛したものもあることを了解いただきたい。なお同じ1月号に掲載した空羽ファティマさんの「春馬ローラはONE & Only! 唯一無二の輝き!」をヤフーニュース雑誌の下記へ公開したので興味ある方はそちらもご覧いただきたい。

https://news.yahoo.co.jp/articles/fe9c594552101139206b588fcae597e8dd324d21

春馬ローラはONE & Only! 唯一無二の輝き!―空羽ファティマ・海扉アラジン

「キンキーブーツ」初演と再演に圧倒された

●新たな春馬さんの姿・演技を見ることができず、時が経つにつれて喪失感が増しています。ネットで1日2回以上は検索することが、日課になりました。また『創』を読んだり、再放送を録画したり、春馬さん関連のものを購入したりすることが続いています。

 ネットで「キンキーブーツ」の再再演の記事を見て、ショックを受けました。春馬さんありきの「キンキーブーツ」だと思っていたからです。

 私は「キンキーブーツ」を、初演と再演の2回観ました。勿論、目的は三浦春馬さん。今まで見たこともない春馬さんの外見や表情、表現に圧倒されました。いつでも役と同化する春馬さん、まさにローラでした。他にも、華やかなセット、親しみやすい音楽や飽きさせない話の展開や演出など素晴らしく、とても楽しく、ずっと続いてほしいなと思う時間でした。ミュージカルがあまり好きではないのですが、すべてに魅了されました。再演があったら、必ず行こうと思いました。

 そして再演。前から2番目の席でした。(しかも同時期の「罪と罰」は1番前の席だったので)人生の運のほとんどを、これで使ったような気がします。近くで春馬さんを観ることができ、春馬さんの熱量を感じることができました。春馬さんは初演より更にキラキラ輝いていて、舞台を牽引していました。ローラが進化していました。最後は、熱い拍手で会場が包まれていました。再再演も絶対観に行こうと、隣の席の妹と、ミュージカルが終わった後の客席で語りました。でも残念ながら、それは実現しませんでした。

 今でも、車で「キンキーブーツ」のCDを聞きます。ネットで「キンキーブーツ」の映像を観ます。録画していたFNS歌謡祭の「キンキーブーツ」の映像を観ます。初演・再演の2冊のカタログをたまに開きます。私の中では、「キンキーブーツ」と言えば今後もずっと、切望して役を勝ち取り、多くの努力を重ねて演じた三浦春馬さんが主役のミュージカルです。そして私の中の宝物です。

 さて再再演を観るか……観ないと思います。でも、どうだったのか気になると思うので、再再演の上演後、ネットニュースは見るかもしれません。「キンキーブーツ」というミュージカルを広めたり、「キンキーブーツ」のメッセージを伝えたりする意味では、上演が大事なことかもしれませんが、個人的には、3年くらい経ってからでもよかったのではないかと思います。誰がどう演じたとしても、春馬さんが演じた「キンキーブーツ」は、何にも代えがたいものです。春馬さん演じる再再演を観たかったです。

 (鹿児島県 MU 57歳)

寂しいけれど継承自体は…

●まず、春馬君は「キンキーブーツ」が大好きでしたので、この素晴らしい作品が、これからも日本で継承されていくことは春馬君も望んでいることで、そのためには、春馬君ではない他の方がローラを演じることに寂しさを感ぜずにはいられないですが、新しいローラを迎えるのはいたし方ないことではないかと思っています。

 ただし、春馬君がその情熱の全てを注ぎ込んで創りあげた“春馬ローラ”はもちろん春馬君にしか演じられないものなので、新しいローラはそれに似せる必要はなく、城田さんは城田さんなりに演じていただければそれで構わないし、演者が変わればその度にまた同じことが起こって、その繰り返しで作品は継承されていくのだとも思います。

 そして、春馬君のあの最高のパフォーマンスがあったからこその継承だと思うので、初代ローラとしての春馬君へのリスペクトと共にその名前が残っていくことで春馬君の努力も少しは報われるとも思っています。

 ですが、今の私の一番の願いは、繊細で美しい“春馬ローラ”の公演全編を通しての映像化、円盤化を何とか実現していただき、1人でも多くの方に春馬君の素晴らしさを知っていただいて、その記憶に留めていただきたいということです。 (宮城県 杏 50代)

3回目公演はもう少し待ってほしかった

●春馬くんローラに、もう一度会いたくて、「キンキーブーツ」のDVD化を望んでいましたが、かなわず、落胆していた時に音源CDがあることを知り、即決で買い求め夢中で聞きました…そしたら、奇跡が…なんとその音源は私が見に行った日のものだったのです。もう嬉しくて嬉しくて泣きながら何度も何度も聞きました…春馬くんローラは、私にとって、今でも唯一無二の存在であり忘れられません。

 私が一番望んでいたことは、いつか春馬くんローラのDVD化か映画化が実現されて、何度でもローラに会うことができ、公演を見た、あの日の感動が蘇ることです。そして納得するまで見続けることが出来たなら、今の寂しい気持ちが少しでも癒されるのではないかと思いました。

 そしてこの「キンキーブーツ」という作品が永遠に続けて行くべき舞台だと思えたと思えます。そういう気持ちになれた時に、このような3回目の公演通知がきたのなら、自然と気持ち良く受け入れられたのではないかと思いました。

 でも今回のようなあまりにも早すぎる突然の発表は、春馬くんローラが、忘れられて行くようで寂しくて悔しい思いでいっぱいです。DVD化、映画化への道も閉ざされてしまった感覚にもなり、悲しくなりました。

 春馬くんが魂を込めて演じてくれた大切な「キンキーブーツ」なのだから気持ち良く3回目公演を受け入れて、これからも永遠に繋がっていって欲しかったです。

 もう少し私たちの気持ちが穏やかになるまで待っていて欲しかったです。とてもとても残念です(涙)。

 (東京都 れいりん 60代)

これからも三浦春馬を探す旅を続ける

●あの日、コロナ禍の疲れを癒そうと温泉宿に泊まり、ベッドに寝そべって何気なく開いてしまったスマホ。特にファンでもなかったのに、三浦違いではないかとネットを検索し…温泉も食事も楽しめないまま帰って来た。

 あれから、私の生活は一変した。春馬くんに関する物を集め、スマホを握り締め、どれだけの時間とお金を費やしたのかわからない。

 知れば知るほど、整った顔立ち以上にその人柄と生き様に魅せられた。たくさんの作品を観ていたのに、それぞれが違う人に見えた。こんなに美しい人が居たこと、失って知った存在の大きさに打ちのめされ、まだ心の穴は塞がれないでいる。

 SNSで情報を集め、『創』を毎月購入し、毎日まいりのサイトでお花と線香を手向け、三浦春馬を探す日々が続いていた。やっと心が落ち着き、『日本製』を持って京都に出かけて帰ってみれば、まいりサイトの更新が止まり、Sさんの「コンフィデンスマンJP」出演、モヤモヤしているところに、これまたSさんのローラで「キンキーブーツ」再演のニュースが飛び込んで来た。

「キンキーブーツ」は春馬くんの代表作であって、春馬くんのものではないけれど、春馬くんの記憶を上書きされていくようで、心が痛い。ここまでくると何か大きな力が春馬くんを亡きものにしようとしているような気さえしてくる。

 けれど、何をされても彼の足跡は消えない。誰も彼の代わりにはなれない。

 彼の放つ輝きは特別なのだ。私はいつまでも消えない悲しみを内包し、これからも三浦春馬を探す旅を続けようと思う。 (福岡県 あおい 56歳)

気がつくと涙がボロボロと頬を

●11月4日の衝撃。「キンキーブーツ」ジャパン公演再々演、ローラ役は城田優。

 このニュースはフォローしているインスタグラマーさんのPOSTで知った。なんと気持ちを説明していいかわからない。気がつくと涙がボロボロと頬を伝っていく。嬉しくて!ではない、シヨックで涙がとまらなくなった。

「キンキーブーツ」は春馬くんが自ら「ローラを自分が演じたい」と強く切望しオーディションを受け見事ローラ役を勝ち取ったことはファンには周知のこと。そして春馬くんの演じるローラは圧倒的に美しく妖艶で華麗で迫力があって、でもどこか繊細な憂いを漂わせ、とにかくとにかく素晴らしかった。心の底から観たいと思った。この感動を生で味わいたい、だけどそれは叶わぬ夢となった。春馬ローラはもう観られない。主役のいない現実を突きつけられている気がした。

 私は、一度も春馬ローラを生で観ていない、なのに別の人がローラを演じて再演って!? 受け入れられる許容範囲を超えていた。

 春馬の意思を繋ぐ、それがどうしてもすんなり胸に落ちて来ないのが現実だった。三浦春馬演じるドラッグクイーンの芸術性はスマホやパソコンの小さな画面からもリアルに伝わって鳥肌がたった。と同時にこの作品に込められた生き方のメッセージにも感動した。

 三浦春馬が演じたローラは永遠だと、思ってた。勝手だけれどほかの誰かが引き継いで演じるなんて考えてもみなかった。ニュースを聞いた瞬間、春馬ローラが城田ローラに上書きされるなんてヤダ、何で? ローラは春馬くんじゃなきやダメなんだ、と。ボロボロ泣けてきた。

 その夜、同じように涙が出て家事も手につかない、なにも考えられないという動揺を抱えた春友さんたちと思いをぶちまけあい、泣き、眠れない夜が過ぎた。

 三浦春馬ローラが「キンキーブーツ」の全てではない、作品自体が永遠の名作、日本には「キンキーブーツ」が必要、しかし三浦春馬ローラは新たな舞台にはいない。だから誰かが演じる。それが現実。わかってるの。だけどね、だけどこの現実を受け入れるには少し時間をください。

 春馬くんなら、優!頑張れよ、ありがとうときっと言うよね。そう思うよ。心がせまくてごめん、器のちっちゃい人間でごめんね。春馬ローラしかわたしの心のなかには存在し得ないの。

 唯一無二の表現者。三浦春馬を語るによくいわれる言葉、演じた全ての作品は、三浦春馬だからこその魅力的で普遍の作品になっている。映画やドラマは永遠に三浦春馬主演作として残り続けるけれど、舞台公演は違う。世界各国にローラは存在する。

 優れたミュージカル作品として「キンキーブーツ」をこれからも公演していくには誰かがローラを演じるしかないのだ。城田さんには城田さんのローラを演じて欲しい。代わりではなく新しいローラ像を表現して欲しい。この役を引き受けるには城田さんにも相当の覚悟がいっただろうし、今まで当たり前にいた稽古現場にも舞台にも春馬くんがいないことに向き合いながら、辛さも乗り越えて再びこの作品で日本に感動を届けようと決意したカンパニーの全員の想いを汲まなければいけない。

 世界中を感動させ、日本中を歓喜の渦に巻き込んだ「キンキーブーツ」ジャパン公演、その感動の源は三浦春馬! 彼の努力と彼の人格が引っ張って作り上げたキンキーブーツカンパニー全員の絆の力があってこそだよね。初代ローラ三浦春馬! あなたがいたからこの作品はこれからも続く。

 思いは複雑だ、なんだかやるせない気持ちは時間とともに薄れるけれど、これだけは変わらない絶対的な気持ち、春馬ローラは永遠だ、私は春馬ローラを忘れない、その一言につきる。 (神奈川在住 夏波 60代)

涙が溢れ、膝から崩れ落ちた

●何事も無かったように時は流れ、11月4日「キンキーブーツ」公式サイトより、2022年秋、3度目の日本版公演開催がリリースされた。ローラ役に城田優…を起用…。

 もう春馬関連ニュースで心えぐられることはないだろうと思っていた私は、何やらわけの分からない感情が一気に噴き出し、涙が溢れ膝から崩れ落ちた。

 いつかこういう日が来る、と頭では認識していたものの、私の中での想定よりあまりにも早過ぎ、やるせなさと怒りが同時に沸点に達した。

「あの場所は春馬のもの、他の誰も立つことは出来ない」

「春馬以外のローラなんて、それはもはやローラではない」

「春馬が愛し心血注ぎ、宝物のようにして育てたローラを、他の日本人キャスト名に上書き保存されるなんて、許されない」

 譲れない、受け入れられない、認められない、耐えられない…。この発表は、その週末の私の予定をキャンセルせざるを得ない状況にさせ、飲めない酒を飲ませるには充分すぎた。

 SNSでも、この春馬ファンに全く寄り添ってないリリースに対し、商業活動を優先する主催者、アミューズサイド、また、ローラの配役についてもやはり賛否両論だ。特に親交のあった城田優氏の登用や、アミューズ所属で引き続き演出担当する岸谷五朗氏、個人への批判も少なくない。

「キンキーブーツ」3度目公演内定の話は当然、生前の春馬にも届いていたはずだ(現に2019年8月の台湾でのファンミーティングで、その様なニュアンスの発言もしている)。

 春馬にとってローラは、ただの「役どころ」ではなく、彼を構成する一部で人生を高める存在だったと思う。そのさまはまるで、ローラそのものを生きていた、と個人的には思っている。

 でも春馬は、そんな血肉を分けた片割れを、置いて行ってしまった、ローラを手放してしまった…。

 もう私も感情だけが先走り、収めどころが見つからなかった。じゃあ、なんだ? 他の誰かなら許せるのか? マッケンなら納得か?(先日のファンミで、アカペラでキンキーを歌唱したという)

 全キャストを一新しての、新生「キンキーブーツ」ならいいのか?

 出資や制作、演出に、アミューズサイドが関わる必要があるのか?

 来秋の公演は時期尚早で、やはり断念すべきではないのか?

 じゃあ、あと何年後ならいいんだ?

 そもそも、もう日本版を上演しなくていいよ!

 負のLoop Loop Loop…

 醜い、醜いよ、強欲過ぎるよ、私! 薄っぺらいぞ、自分! 春馬があんなに日本での上演を熱望し、大切に大切に腕に抱えて育て、世界観を作り上げてきた作品じゃないか。

 数日経ち少し冷静になると、いつものように深く呼吸をし目を閉じ、私の中の春馬を感じてみた。

 あんなに愛した作品、そして分身のようなローラを他の誰かが演じることを、春馬は許さない? 悔しがっている? 本当に、春馬だけのローラで終わらせて欲しい? 3度目の上演を望んでない?

 いや…違うな…絶対に違う。

 エンタメ界の力を信じた春馬は、きっとこの素晴らしい作品が、途切れることなくまた人々に届けられ、多くの心を豊かにし、生きる活力になることに喜び、そして安堵し、感謝の涙を流していると思う。春馬はそういう人だよね。

 どの役どころも誰のものでもなく、これもひとつの継承のカタチなのかな…。優くんには何も罪はないし、当然、優くんも相当な覚悟で挑み、命懸けで彼なりの二代目ローラを作りあげてくるだろう。

 ある意味、もうそれは私たちのローラではないのかも知れない。

 でも、春馬が愛したローラは、また新たな命を吹き込まれ「継承」される。多くの名作がそうであるように、キャストを変更しながらも長く愛され、我々の日常に彩りを添え、心に刻まれ、輝き続ける。

 だから…これでいいんだよね、春馬? 色々な想いはあるが、春馬が生きた世界「キンキーブーツ」来秋の公演の無事開演と成功を祈りつつ、かつてバックステージを戦場に向かうような瞳の強き輝きを放ちながら力強く歩いてたいた「春馬ローラ」を胸に、さぁ、もう涙は拭こう。

 あの感動、情熱、記憶までは誰も奪えやしない、初代「春馬Lola」は私たちの中でonly and oneとして永遠に輝き続けるのだから。

「私たちのLolaは春馬だけ」もうそれだけで、いいじゃないか。

 私は、私の中の「Lola」にそっと大切に鍵をかけた。

 (北海道 かんなお 54歳)

月刊『創』編集長

月刊『創』編集長・篠田博之1951年茨城県生まれ。一橋大卒。1981年より月刊『創』(つくる)編集長。82年に創出版を設立、現在、代表も兼務。東京新聞にコラム「週刊誌を読む」を十数年にわたり連載。北海道新聞、中国新聞などにも転載されている。日本ペンクラブ言論表現委員会副委員長。東京経済大学大学院講師。著書は『増補版 ドキュメント死刑囚』(ちくま新書)、『生涯編集者』(創出版)他共著多数。専門はメディア批評だが、宮崎勤死刑囚(既に執行)と12年間関わり、和歌山カレー事件の林眞須美死刑囚とも10年以上にわたり接触。その他、元オウム麻原教祖の三女など、多くの事件当事者の手記を『創』に掲載してきた。

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