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小室圭さん眞子さん夫妻がNYへ渡ってもなお続く結婚騒動の本質とは…

篠田博之月刊『創』編集長
結婚は皇室からの自由への逃避?(写真:アフロスポーツ)

「小室バブル」と言われる週刊誌の取り組み

 小室圭さんと眞子さんは11月14日にニューヨークに渡って新たな生活を始めた。4年にわたる結婚騒動は新たなステージに入ったわけだが、週刊誌やネットではいまだにその行方は大きな話題になっており、騒動が収まる気配はない。

 週刊誌はいまだに毎週大きくこのテーマを取り上げており、いまやその急先鋒となった『週刊新潮』は何週にもわたってこの騒動をトップに掲げて売れ行きを伸ばし、「小室バブル」と呼ばれているらしい。

『週刊新潮』11月25日号(筆者撮影)
『週刊新潮』11月25日号(筆者撮影)

 同誌は11月25日号もトップ記事「『眞子さん・圭さん』”日本とさよなら”の向こう側」とグラビアで14日の様子を伝えている。それによると、当日羽田空港に集まった報道陣は約100人、ニューヨークに到着した時も日本のメディアが勢ぞろいしていた。現地での取り決めで到着取材後の追尾はしないことになっていたが、その間隙を縫うように英紙「デーリーメール」が、夫妻が新居に到着した場面を電子版に掲載したという。

若い人たちの見方と保守派の危機感

 『週刊文春』11月25日号も「小室眞子さんに女性皇族の嘆き『あとの人が困る』」がトップだが、「私はこう考える」というコメント特集で、トレンド評論家の牛窪恵さんが「若者たちは眞子さんに憧れている」という話を書いている。あれほど反対されても自分の意志を貫いた眞子さんが、若い女性たちには憧れの対象なのだという。

 一方、保守派の論客、八木秀次・麗澤大教授はこう書いている。

「今回の『私』の感情を優先した”ルール破り”は、『開かれた皇室』『国民と共に歩む皇室』の”負の側面”だと私は考えています」

 「私と公」あるいは「個人と家」の相克がこの問題の本質だというわかりやすい指摘をこの間、しているのはむしろ右派の側で、彼らにとっては眞子さんの行動は皇室の伝統を突き崩すものだと危機感を持っているのだ。

象徴天皇制そのものが持つ矛盾の噴出

 法政大前総長の田中優子さんがテレビで「結婚は両性の合意にのみ基づくと憲法に書かれているのに反対を唱える人は理解していない」と言っていたが、保守派にとっては「いや、皇室は別だ」というわけだ。これはなかなか本質を突いた議論で、そもそも憲法の中に天皇という異質なものが取り込まれているという象徴天皇制が抱えた矛盾が、今回の結婚騒動で噴出したといえる。

 故人の意志と天皇制の桎梏に恐らく眞子さんは悩んできたのだろうが、それにからんで最近私が読んで衝撃に近いものを感じたのが、月刊『文藝春秋』12月号の「秋篠宮秘録」だ。記事中で「眞子さん姉妹をよく知る人物」なる匿名の人が気になるコメントをしているのだ。

 「実は、早い時期からお二人は、結婚して降嫁することでしか、皇室を抜け出せないという考えで一致していました。それがお二人にとっての唯一の希望だったのです」「それは二人だけの『脱出計画』のようなものでした」

衝撃と言える『文藝春秋』12月号の記事(筆者撮影)
衝撃と言える『文藝春秋』12月号の記事(筆者撮影)

 特にその意志が強いのは、佳子さんだという。衝撃と書いたのはこのコメントだ。

 「佳子さまは、一生ここから抜けだせないのではないか、という大きな恐怖心を抱かれているようでした。このまま皇室を出られないならば生きている意味はない、と。極端な言い方をすれば、自分で自分の命を絶つ、そんなことも辞さないほど、当時の佳子さまは深刻な悩みを抱えていらっしゃったのです」

 この関係者がどういう立場の人かはわからないが、佳子さんが言っていたのがこの通りのニュアンスだとすれば、今回の眞子さんの脱出劇はかなり深刻な問題を提起しているといえる。バッシング旋風吹き荒れる日本、及び皇室からの逃避行だ。右派論客たちの危惧は杞憂ではないと言える。

 恐らく佳子さんが自殺を考えるほど思い悩んでいたのは、ちょうど自我にめざめる思春期のことなのだろう。自分が育った環境や「家」からの脱出というのはその時期特有の思考で、眞子さんや佳子さんがそう思い悩んだのは不思議ではない。特に皇室というのは、基本的に男尊女卑の世界だから、大学でジェンダーについても学んだろう眞子さんや佳子さんが成長する過程で思い悩むのは当然だろう。

 今回の眞子さんの結婚騒動は、象徴天皇制そのものの本質に触れた問題なのだ。

司法試験不合格という大どんでん返し

 それにしても事実は小説より奇なりというか、今回の騒動は波乱万丈だ。10月26日の小室圭さんと眞子さんの結婚会見で当初は、4年間にわたる騒動に終止符が打たれたかと思われたが、さにあらず。29日にニューヨーク州の司法試験委員会が発表した合格者の中に何と小室圭さんが含まれていないことが判明した。大きなどんでん返しである。

 『週刊文春』11月11日号「小室圭さん『本当の実力』」の書き出しはこうだった。

 「一人の男性の”試験結果”に、日本中が騒然となった」

 9月以降加速した二人の結婚への流れは、圭さんが司法試験に合格確実でニューヨークで就職の道が開けたという前提から始まっていたのだが、それがひっくり返ったのだった。

 記事によると、小室さんの勤務先であるニューヨークの法律事務所は、日本からのアクセスが殺到したため10月30日未明にホームページへのアクセスを遮断する措置をとるほどだったという。

 『週刊新潮』11月11日号は「全国民を欺いた『不合格』で『眞子さん』の悲劇」という大きな特集を掲げた。別に小室さんが欺いたわけではないだろうが、リードの文言がすごい。

 「故国を捨て『司法浪人』の妻に…/稀代の道化が演じた”世紀のどんでん返し”/司法試験には『皇室利用』の威光効かず/法律事務所クビの危機!NY生活費は『眞子さま貯金』取り崩し/発表前に急いだ入籍『まるで”詐欺結婚”』の声も」

 長々と引用したが、ネットなどで言われていそうな物言いが網羅されている。

 『週刊新潮』は見出しの上に「どこまで続く『小室劇場』」と書いている。でも、「小室劇場」をひっぱり続けているのは週刊誌の方だろう。

 司法試験不合格というどんでん返しは、この秋の結婚への急展開の前提をひっくり返したと前述したが、これについては『週刊新潮』11月18日号に載っていた三浦瑠麗さんのコメントが面白い。

 「小室さんが司法試験に落ちたことで生活を不安視する人もいますが、もはや夫が外で稼いで妻は専業主婦、という時代ではありません。眞子さんも現地で働けばよいのです」「ひたすらバッシングを受けた日本という地を離れることでお二人の精神が安定するなら良いことです」

 三浦さんはリベラル派からは毛嫌いされている人だが、ジェンダーに関してはリベラルな発言が多い。眞子さんの結婚騒動についても『週刊文春WOMAN』では早い時期からバッシング批判を展開していた。

 眞子さんの結婚騒動は、皇室のあり方だけでなく、ジェンダーに関わる様々な問題も投げかけたといえる。

『週刊現代』元婚約者の代理人として得たスクープ

 そのほか週刊誌報道をめぐって幾つか指摘をしておこう。小室圭さんが、11月12日に母親の元婚約者と対面した時の様子を独占スクープとして詳しく掲載したのは『週刊現代』11月27日号だ。

『週刊現代』11月27日号(筆者撮影)
『週刊現代』11月27日号(筆者撮影)

 元婚約者の代理人を週刊誌記者が務めるというのは、いったいどうなの?と、もともと多くの人が思っていたろうが、これはそのことに伴うスクープだ。

『サンデー毎日』森暢平教授のカウンター

 一連の騒動をめぐって今年になって彗星のごとく登場し、いまやバッシング報道に対する最大のカウンターになったのが森暢平・成城大教授だ。もともと毎日新聞出身という森さんが自ら『サンデー毎日』編集部に持ち込んだという企画が連載「社会学的眞子さまウォッチング」だが、その第6回(10月31日号)で「『週刊現代』の責任を問う 危うい『代理人』兼業」と題して『週刊現代』の立ち位置の問題を論じている。

『サンデー毎日』11月28日号(筆者撮影)
『サンデー毎日』11月28日号(筆者撮影)

 最新号の『サンデー毎日』11月28日号でも「『解決』を妨げていたのは誰だ」と題して小室佳代さんの金銭トラブルを論じているが、騒動の論点をこの連載は一通り、わかりやすく解説してきた。一時は『サンデー毎日』と並行して『週刊朝日』にも、さらには日刊ゲンダイにも登場して論陣を張るなど、森さんの活躍は目を見張るものがあった。

『週刊朝日』『AERA』の誌面、そして海外メディアは

 そのほか、この間のメディアの取り組みとしては『AERA』11月1日号の特集「私たちはなぜこの結婚にザワつくのか」も面白かった。9月に入って、騒動に新聞やテレビが参入したことで新聞社系週刊誌『サンデー毎日』『週刊朝日』は、それまでの週刊誌全体が一色となってバッシング報道を続けてきたことから一線を画するという方向へ誌面の転換を遂げるのだが、『AERA』はその過程でもあまり存在感を示せない誌面だった。

 もともとキャリアウーマンの雑誌というイメージで雅子妃バッシング騒動の時には雅子妃サイドの論調を張った同誌だが、今回の結婚騒動では『週刊朝日』ともどもやや曖昧な立場だった。そして大きく取り組んだのが11月1日号だが、この騒動の背景などをよく分析していて読みごたえがあった。

『AERA』11月1日号(筆者撮影)
『AERA』11月1日号(筆者撮影)

 この結婚騒動を海外メディアはどう見ているのか。その問題を興味深く報じたのは毎日新聞「日本の狂騒『理解しがたい』海外メディアが見た小室眞子さん結婚」だ。同社デジタル報道センターの11月19日付だが、まだネットで読めるので下記をご覧いただきたい。

https://mainichi.jp/articles/20211115/k00/00m/040/263000c

日本の狂騒「理解しがたい」 海外メディアが見た小室眞子さん結婚

小室圭さんTシャツ「ダース・べイダー」の意味するものは

 4年に及ぶ眞子さんの結婚騒動は、この秋に急展開に至るとともに、週刊誌以外の新聞・テレビも一斉に関わることで大きな社会的議論を巻き起こした。ネットでも大きな話題になった。そうした裾野の広がりの派生効果として、テレビに映る圭さんの髪形や服装までネタにされた。

 11月14日の小室夫妻の出国時の映像で話題になったのが、圭さんのシャツの胸元から見えた「スターウォーズ」のダース・べイダーだ。『週刊新潮』11月25日号で辛酸なめ子さんがこうコメントしている。

 「これも小室さんのメッセージなのか。Tシャツからは、リベンジしたいという意思が伝わってきました」

 いや、そうだとしたら面白過ぎるけど、あのダースベイダーにその意図はたぶんないと思う(笑)。

 なお一連のバッシング報道については拙著『皇室タブー』(創出版刊)でもかなりのページをさいて分析しているので参照してほしい。

月刊『創』編集長

月刊『創』編集長・篠田博之1951年茨城県生まれ。一橋大卒。1981年より月刊『創』(つくる)編集長。82年に創出版を設立、現在、代表も兼務。東京新聞にコラム「週刊誌を読む」を十数年にわたり連載。北海道新聞、中国新聞などにも転載されている。日本ペンクラブ言論表現委員会副委員長。東京経済大学大学院講師。著書は『増補版 ドキュメント死刑囚』(ちくま新書)、『生涯編集者』(創出版)他共著多数。専門はメディア批評だが、宮崎勤死刑囚(既に執行)と12年間関わり、和歌山カレー事件の林眞須美死刑囚とも10年以上にわたり接触。その他、元オウム麻原教祖の三女など、多くの事件当事者の手記を『創』に掲載してきた。

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