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メーガン妃の王室批判を日本の週刊誌が小室圭さんになぞらえて報じた意味

篠田博之月刊『創』編集長
日本の週刊誌はメーガン妃発言と小室圭さんを並べて報道(筆者撮影)

 2021年3月7日に米国テレビで放送されたメーガン妃のイギリス王室批判、特に人種差別に関わる発言は世界中で反響を呼んだ。日本の週刊誌ではそのメーガン妃と小室圭さんを比較する報道が多い。  

『アエラ』3月29日号「メーガン妃と小室圭さんは王室と皇室の『想定外』」、『女性自身』4月6日号「『私を準皇族に』小室圭さんメーガンショックを利用!」などだ。

 見出しがすごいのは『女性セブン』4月1日号「メーガン妃告発に世界騒然!小室圭さん『皇室の闇』暴露」。小室さんが同様に皇室批判をしたら…という記事だ。女性皇族である眞子さまには結婚の自由がない。日本の皇族は女性差別をしている。小室さんがそう主張したらアメリカで高く支持され、結婚問題の潮目が変わるかもしれない、という趣旨だ。

 なるほどと思う。小室さんバッシング報道の背景に「皇室の尊厳を守れ」という立場があることはこれまでも指摘してきた。メーガン妃発言に対するアメリカとイギリスの世論の違いも重ねあわせると、小室さんと対比させることも的外れではないのかもしれない。でも小室さんが本当にそう主張したら、潮目が変わるどころか、バッシングはさらに加速するだろう。

「97%以上が反対」ってすごくない?『週刊朝日』3月26日号より
「97%以上が反対」ってすごくない?『週刊朝日』3月26日号より

 一連の週刊誌報道がかなり影響力を持っていることは、『週刊朝日』3月26日号が報じた結婚問題についてのアンケート結果でもわかる。結婚に「97%以上が『反対』」。すごい数字だ。

『週刊新潮』4月1日号(筆者撮影)
『週刊新潮』4月1日号(筆者撮影)

「歌会始」で眞子さまが詠んだ歌

 3月26日に行われた「歌会始」で眞子さまが詠んだ歌を『週刊新潮』4月1日号が「囚われの眞子さまが小室圭さんに捧げる詠歌」と題して取り上げている。

烏瓜(からすうり)その実は冴ゆる朱の色に染まりてゆけり深まる秋に

 秋には悲願の結婚をという眞子さまの心情が反映されていると宮内庁関係者がコメントしている。深読みしすぎではという気もしないではないが、結婚問題が皇室関係者にとって、のどに刺さった骨なのは確かだ。

 ちなみに昨年2020年の「歌会始」で眞子さまが詠んだ歌についても同じように週刊誌が大きく取り上げた。今年の例に比べて昨年のこちらは、私もなるほどなあと思うような解釈だった。当時、東京新聞「週刊誌を読む」に書いた記事を引用しよう。

《1月16日の「歌会始の儀」で秋篠宮家の眞子さまが詠まれた歌が波紋を広げている。特集記事で大きく取り上げたのは『週刊新潮』1月30日号だ。見出しは「『眞子さま』が思いを秘めた『月の歌』の残響」。

 眞子さまが詠んだ歌はこうだ。

 「望月に月の兎が棲まふかと思ふ心を持ちつぎゆかな」

 これが関係者の間で大きな話題になっているという。

 というのも、2017年9月に開かれた婚約内定会見で、小室圭さんが「宮様は、私のことを月のように静かに見守ってくださる存在」と発言したのを思い起こした人が多かったらしい。ちなみに、この会見をめぐっては、小室さんを太陽、眞子さまを月にたとえたことに対して、女性皇族から反発が起きたという話も、その後週刊誌で報じられた。

 今回の歌についは『週刊新潮』で匿名の関係者がこう語っている。「ただでさえ注目を浴びる令和初の歌会始で、あえて月を用いて詠んだのは、眞子さまなりの”挑戦”ではないかと拝察いたします。なぜなら、歌の趣旨は表向き”小さい頃の純粋な心は大事にしたい”というものですが、ここから転じて”小室さんへの気持ちや結婚への思いを初志貫徹したい”といった解釈も成り立つからです」

 そんな解釈をしてしまうのか、しかも「挑戦」とまで言うとは、と記事を読んで驚いた。でもそれは『週刊新潮』が大げさに書いているというだけではないらしい。

 『女性自身』2月4日号や、『女性セブン』2月6日号でもその話題が報じられ、『女性自身』の見出しはかなり激しい。「眞子さま『小室圭さんへの愛の短歌』に紀子さま凍った!」。記事中で宮内庁関係者が「紀子さまは凍りつかれたに違いありません」とコメントしている。

 眞子さまが実際どんな気持ちで詠まれたのかはわからない。しかし、それがこんなふうに大事になってしまうのは、この二月で結婚延期から二年を迎えることや、イギリス王室の騒動が皇室と対比して取り上げられている影響なのだろう。》

今年の誕生日会見での天皇発言をめぐる週刊誌報道

 そういえば以前本欄で、天皇の誕生日会見発言について週刊誌が「結婚反対の意思表示」と報じたことに疑問を呈したが、『週刊女性』3月23日号が同じ疑問を記事にしていたことを報告しておこう。

https://news.yahoo.co.jp/byline/shinodahiroyuki/20210228-00224919/

誕生日会見での「眞子さま結婚」問題についての天皇発言をどう考えるべきなのか

 記事中で侍従職関係者がこうコメントしている。

「今回のご発言について”おふたりの結婚に天皇はNOをつきつけられた””眞子さまに苦言を呈された”といった報道が次々と飛び出していますが、実情は違います。

 眞子さまのご結婚は私的な事柄なので、あくまでも秋篠宮家の問題だと陛下はお考えです。秋篠宮さまのご発言を引用されたのは、最終的に秋篠宮さまに任せるという意味合いであり、実質的な”ゼロ回答”だといえるでしょう」

 確かに天皇の発言については、こう理解するのが自然だと思う。多くの週刊誌のほうがバイアスがかかっているとしか思えないのだ。

 宮内庁発表をそのまま伝えるだけしかできない新聞・テレビの皇室報道も問題だが、一方で宮内記者会に属していないため独自のスタンスで皇室報道を毎週のように行っている週刊誌も、眞子さま結婚問題に関してはいささかバイアスがかかっているとしか思えない。

月刊『創』編集長

月刊『創』編集長・篠田博之1951年茨城県生まれ。一橋大卒。1981年より月刊『創』(つくる)編集長。82年に創出版を設立、現在、代表も兼務。東京新聞にコラム「週刊誌を読む」を十数年にわたり連載。北海道新聞、中国新聞などにも転載されている。日本ペンクラブ言論表現委員会副委員長。東京経済大学大学院講師。著書は『増補版 ドキュメント死刑囚』(ちくま新書)、『生涯編集者』(創出版)他共著多数。専門はメディア批評だが、宮崎勤死刑囚(既に執行)と12年間関わり、和歌山カレー事件の林眞須美死刑囚とも10年以上にわたり接触。その他、元オウム麻原教祖の三女など、多くの事件当事者の手記を『創』に掲載してきた。

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