Yahoo!ニュース

三浦春馬さんの死への社会的関心の驚くべき大きさと事務所が新たに公表した情報について

篠田博之月刊『創』編集長
アミューズが公表した「お知らせ」(筆者撮影)

 8月31日に書いた下記の記事に予想を超える反響があって、正直驚いた。アクセスは間もなく100万を超えそうだ。

https://news.yahoo.co.jp/byline/shinodahiroyuki/20200831-00196020/

いまだに衝撃が収まらぬ三浦春馬さんの死を私たちはどう受け止めるべきなのだろうか

 ネット上でたくさんのコメントがついたし、「創」編集部にメールや電話で意見を寄せてくれた人もいた。届いたメールの中から幾つかを紹介しよう。

三浦春馬さんの死についてのファンの気持ち

《●昨日の三浦春馬さんの記事は素晴らしかったです。自分がここ、1ヶ月以上ずっとモヤモヤしてること、どうしても腑に落ちないことを言ってくださいました。ありがとうございました。

 私、三浦春馬さんの大ファンでした もちろん今も…。ですが、あの日から何も手につかず、時が止まったままです。ショックが大きく、食欲もなく、病院こそ行ってませんが、うつ病の一歩手前だと思います。

 それなのに、報道規制なのか、知りたいことは殆どなにもわかりません。当日の詳しい状況も、病気があったならその経過等も…。憶測記事ばかりが横行して、真実がどこにあるのかわかりません。置いてきぼりなのです(涙)。普通なら、もうとっくに事務所から、春馬さんのことをきちんと発表するべきなのです。待っててもなにも出てきません……

 当日、彼を発見したマネージャーの心の声を聞きたいです。そして、篠田様が書かれていらっしゃるように社会の為にも、我々ファンの為にも彼の通院歴、病状等について、できる範囲で真実を教えて頂きたいのです

 うつ病はとてもつらい病気です。もし、うつ病だったなら、そんな状態が数年続いていたことを、誰一人知らない筈はありません。又、言われてるような家族の問題があったならそれを見て見ぬふりできるような事務所じゃダメだと思います。繊細な彼に寄り添って、手を差しのべられたのではないでしょうか?(涙)

 私が1番知りたいのは、やはり通院歴、病状です。 病院に行ってなかったのか? 行って、投薬していてもこういうことになってしまうのか?…春馬さんのお顔から推測するに、そんなにお酒や薬のダメージが出ているようには見えないのです。なんでも個人情報だから…で片付けてはいけないと思います。これでは、精神を病んでる方の本当の辛さもわかりません。

 長々申し訳ありません。この問題を取り上げてくださり、嬉しかったです。

 本当にありがとうございました。真実が少しでもわからないと、このモヤモヤをずっと引きずって行くことになります。どうか今後とも取材を続けて、発信して頂きたいと思います。

 よろしくお願いいたします。

●三浦春馬さんの記事を載せて頂きありがとうございました。日を追うごとに春馬さんの記事がなくなっていくので、このような記事があり読ませて頂きました。メディアや雑誌は両親のことや本人のストイックさに触れるばかりでアミューズについては触れません。仕事で悩んでいた事辞めたがっていた事についてはもっともっと追求する報道がないことに納得がいきません。

 春馬さんが人格者だっただけに誠実に生きてきただけにモヤモヤが募るばかりです。事務所としての説明が未だされないのは真実を話せない事情があるのかと疑念が深まるばかりです。どうかもっともっと記事を書いて下さい。このまま時間が過ぎて有耶無耶になるのが残念でなりません。

●自分は三浦さんが出演なさる番組を観る程度で、熱烈なファンではありませんが、今回の件は大変、衝撃でショックを受けており、まだまだ受け入れられない状態です。

 まず、自殺という判断と手段までも報道する早さと規制の無さ。過去の自殺報道と比べて違和感、疑問でした。そして早急な密葬。その後の報道で時系列と当日の経緯の相違・・・のちに事務所から報道陣に対して誓約書の存在、防犯カメラの存在無視(不審者の出入り)、病院関係者の証言、契約更新日、某団体など憶測が飛び交い、他殺説まで出るネット情報。

 情報の曖昧さを放置のため、皆さん、心のやり場がないのでしょう。報道規制と恐らく芸能事務所との関係、忖度から各局、触れないと自分は感じます。その中、今回、このような疑問を呈しての記事をあげていただき、勇気ある行動に感謝致します。

 皆の気持ちを代弁し、公開していただきありがとうございます。

 篠田様が書かれているように、もし、鬱だったとしたら事務所は何かしらの手立て、フォローするべきです。救えた命ではなかったのか。身内でなくても見殺しにされたと感じます。

 一般人の自分は非力ですが、何か出来なかったのかと後悔と哀しさでいっぱいです。

 俳優さんは商品ではなく、人間です。人の命が散りました。事務所の三浦春馬さんに対するマネジメント、待遇を疑います。ただ、ただ、彼の功績と死を無駄にしないで欲しい。16年の年月。彼の心の内を明らかにしてほしいのではありません。事務所は大切な仲間と言うならば、功労者である彼をしっかり労い、偲び、送り出していただきたいです。CDや本の収益の行方。一部上場企業の責任。新たな悲劇をうまないためにも。

 一般人の自分では発信力がなく、篠田様のお力をお借り出来れば幸いです。よろしくお願い致します。》

9月4日、アミューズが、やや踏み込んだ説明

 多くの人が三浦さんの突然の死に衝撃を受け、何があったのか知りたいと思っても、確かな情報を得られないことに苛立ちを感じている様子がわかる。

 さてそういう中で四十九日を迎えた9月4日、所属事務所アミューズがホームページに「三浦春馬に関するお知らせ」を公表した。これまで公表した内容に比べると踏み込んだ内容だ。またその中で、この間の報道について様々な指摘を行っている。

https://sp.amuse.co.jp/20200904/

 例えば7月18日当日の状況についてこう書いている。

《【当日の経緯について】午後から予定されていた仕事に向かうため、約束の時間に担当マネージャーが自宅へ迎えに行きましたが、メール・電話等に返事がなかったので、部屋へ向かいました。インターフォンを鳴らしましたが応答がなかったため、管理会社の方に連絡し、部屋の鍵を開けていただき入室したところ、すでに意識のない状態でした。応急手当をするとともに、すぐに警察と救急に連絡を入れ、病院に搬送されましたが、懸命な救命処置も及ばず14時10分に永眠いたしました。

その後、警察による現場及び時間経過の検証の結果、事件性は確認されず、検視の結果から死因は自死であるとの報告を受けました。

一部報道で「撮影現場に本人が現れないため、マネージャーが不審に思い自宅に確認に行った」と報じられておりますが、仕事の際にはマネージャーが送迎しておりますので、そのような事実はございません。》

週刊誌の報じた遺書については否定

 驚いたのは、週刊誌がこの間、大々的に報じてきた「遺書」について、こういう説明をしていることだ。

《【遺書の存在について】 警察の現場検証の結果、本人が日頃から役作りなど様々な思いを綴ったノートは自宅から発見されましたが、遺書はありませんでした。

 そのノートにも、自死の動機や原因と直接結びつくような内容はなく、また、ファンの皆さま、スタッフ、アーティスト仲間などへ遺した文章や、遺書なども結果として見つかっておりません。》

 週刊誌では、遺書ないし遺書と言ってよい日記の記述とされていたが、それがここでノートと書いているものなのだろう。『週刊文春』や『週刊新潮』に登場した匿名の知人は、その中の記述を紹介しつつ、三浦さんの死との関りを示していたが、事務所としてはそのような関連を認められないと判断したのだろうか。あるいは別の判断があって、その内容が遺書として報じられることに懸念を抱いたのか。このあたりは、その二誌としても真っ向から否定された以上、次号で情報源についてある程度の説明を行わざるをえないだろう。

 前回も書いたが、三浦さんの死をめぐっては、なぜ彼が突然命を絶ったのか、いまだに大きな社会的関心を呼んでいる。何らかの生きづらさを感じている人は多いから、そういう人にとって三浦さんの突然の死は、他人事としてほうっておけないものと受け止められたのだろう。

 その意味で、三浦さんの死とそれに対する社会の反応は、ひとつの社会現象として考え議論すべきものと言えるだろう。

 生きづらさを抱えた多くの人の関心に応えるためにも、もう少し情報が明らかになってほしい。今回、事務所がやや踏み込んだ情報を公開したのは良いことだと思う。事務所としても、この間のファンやそれ以外の多くの人の反応を見て、ある程度情報を公開せざるをえないと判断したのだろう。

 今後、さらに事情が明らかになり、三浦さんの死を無駄にしないためにも多くの人がその死について考えていってほしいと思う。

月刊『創』編集長

月刊『創』編集長・篠田博之1951年茨城県生まれ。一橋大卒。1981年より月刊『創』(つくる)編集長。82年に創出版を設立、現在、代表も兼務。東京新聞にコラム「週刊誌を読む」を十数年にわたり連載。北海道新聞、中国新聞などにも転載されている。日本ペンクラブ言論表現委員会副委員長。東京経済大学大学院講師。著書は『増補版 ドキュメント死刑囚』(ちくま新書)、『生涯編集者』(創出版)他共著多数。専門はメディア批評だが、宮崎勤死刑囚(既に執行)と12年間関わり、和歌山カレー事件の林眞須美死刑囚とも10年以上にわたり接触。その他、元オウム麻原教祖の三女など、多くの事件当事者の手記を『創』に掲載してきた。

篠田博之の最近の記事