日本テレビをテレビ朝日が猛追!の背後にテレビをめぐる地殻変動が起きている感じが

好調、テレビ朝日のアトリウム(筆者撮影)

 毎年12月発売の月刊『創』1月号でテレビ局の大きな特集を組んでいるため、11月中は各局を取材に回った。TBSの『下町ロケット』の伊與田英徳プロデューサーやNHKの『チコちゃんに叱られる!』の水高満プロデューサー、テレビ東京『出川哲朗の充電させてもらえませんか?』の平山大吾プロデューサーなど、ヒット番組の制作者の話は何と言っても面白かった。ヒットするにはもちろんそれぞれ要因があるわけだが、同時にそこにはテレビとはいったい何なのだろうかと改めて考えさせてくれる要素もある。

 テレビ番組の基本的な指標は視聴率だが、その視聴率をめぐって話題になったのは、10月の月間視聴率三冠王を日本テレビが久々に逃したことだ。テレビ朝日が健闘して全日視聴率トップを獲得したからだ。この話、一見するとギョーカイの内輪話に見えるが、そうでもない。特に日本テレビが鉄板と言われ、他局が満を持して挑戦して次々に敗退してきた日曜夜のゴールデン帯にテレビ朝日が『ポツンと一軒家』の成功で大きく食い込んだことだ。テレビというメディアをめぐる大きな変化が進行していて、それがいろいろな局面にポツリポツリと顔をのぞかせている。そんな感じがするのだ。

 例えばこの秋、日本テレビが23時台に有働由美子さんをキャスターに据えて『news zero』の大幅リニューアルを行ったが、TBSの『NEWS23』やテレビ朝日『報道ステーション』でも、プロデューサー交替を含むリニューアルが進みつつある。特に『報ステ』の桐永洋プロデューサーは、テレ朝の朝の情報番組『グッド!モーニング』のリニューアルを成功させ、同局の全日視聴率を押し上げる立役者となった人で、その桐永さんを情報番組から看板のニュース番組に異動させるという人事に、テレ朝の並々ならぬ決意が見て取れる。

 少しずつ数字が落ちてきた『報ステ』の抜本的テコ入れを、というのが上層部及び編成部の狙いだろう。その桐永プロデューサーの『報ステ』をどう変えようとしているのかという話も本当に面白くて、その話だけで4ページにもわたってしまったほどだ。

 桐永さんはもともと、久米宏さん時代の『ニュースステーション』にいた人で、久しぶりにこの番組に、プロデューサーとして戻ってきたのだが、戻ってきて最初に感じたのがこういうことだったという。

 「就任して驚いたのですが、22時台のHUT(総世帯視聴率)がものすごく低下しているのです。かつては60%くらいあったHUTが今は50%を切ることもあります。『報道ステーション』の同時間帯でのシェアは22~23%とあまり変わっていないのですが、その時間にテレビを見ている人が減っているのですね。22時台の視聴率が全局1桁ということもあります。23時を超えるとそれはさらに低下していきます。

 そういう外部環境の変化があるなかで、どうすれば『報道ステーション』にチャンネルを合わせてもらえるか。早朝の情報番組については、ニュースを中心にどうやってわかりやすく伝えていくか考えることで、視聴率が上がりました。高齢層にターゲットを絞ったことが成功したのですが、プライムタイムの場合は、高齢者だけではいけない。もう少し広く女性や若い人にも見てもらわないといけないわけです。

 ニュースの見られ方も変わっています。何よりもニュースの賞味期限が短くなりました。またこれまで23時をまたぐところで他局に視聴者が移るのを防ぐために、スポーツコーナーを置いていたのですが、プロ野球人気の低下や、試合の結果をスマホで見られるようになったせいで、スポーツコーナーの人気がかつてほどではなくなっています。このあたりももう一度考えてみるべきではないかと思っています」

 22時台以降、HUTが急激に落ちていくというのは、雑誌メディアで言えば、20代女性の市場が底が抜けたように落ちていくというのとよく似ている気がする。『ViVi』『Can Cam』『JJ』などの雑誌間の競争でなく、その世代で紙の雑誌を読む女性自体がいなくなってしまっているという現象だ。その層がそっくりスマホに移行したというわけだから、話はある意味シンプルだが、テレビをめぐる環境変化はもう少し複雑であるように思える。

22時台を境にテレビを見ている人が高齢者から若者に移行する。それが何やらドラスティックに起きているらしいのだ。その変わり目が22時台から23時台で、それゆえにこそ『news zero』『NEWS23』『報道ステーション』が揃ってリニューアルに踏みきろうとしているわけだ。

『報道ステーション』の桐永プロデューサーは、有働『news zero』の登場についてこう語っている。「『news zero』のリニューアルについては、最初は若干脅威と思っていましたが、今のところそう大きな影響は感じていません。ただ大きなニュースがあって、『news zero』がそれをトップに持ってきた時には視聴者がそちらに流れるのは時々感じますので、今後、その対策は考えていかなければいけないとは思っています」

 興味深いのは、『NEWS23』のテコ入れのために就任した米田浩一郎さんが『news zero』 についてこう語っていたことだ。

「最初はトーク重視でニュースはあまりやらないのかと思いましたが、最近はこれまでのように社会部系のニュースを中心に据えるラインナップに戻っているように見えます。ただ、あちらがトップに据えるニュースが『NEWS23』ではショートニュースだったりすることも多いです。この2カ月で見る限り、トップニュースが互いの番組でかぶったことは数回しかなかったと思います。

 番組がスタートする時間にツイッターでどんな反応が出ているかも見ることがありますが、今の『news zero』の初期段階では、ニュースを見たいと思って『NEWS23』を見るようになったという人のつぶやきも結構ありました。ただ、それが全体の視聴率にどう反映していくかは、もう少し見てみないと何とも言えません」

 米田さんもともと『筑紫哲也のNEWS23』時代に報道局員として関わってきた人で、今回、こういう興味深い発言をしている。

 「9月にプロデューサーとして関わるようになって感じたのは、いわゆるニュースのコア視聴者層の高齢化が進み、その時間帯にテレビを見ているのは若い人がさらに多くなっているということです。ただ、だからといって右往左往して若者向けのネタに特化したりはせずに、ど真ん中のニュースを、若い人にもきちんと見てもらえるように工夫して出していきたい。その日1日に起きたことをしっかりと、全体像としてとらえられるように伝えることが、筑紫哲也さんの時代からのこの番組の使命と考えています」

 そう語る米田さんは、筑紫さんの時代から『NEWS23』には関わってきた報道マンだ。

「番組のニュースのラインナップを決める編集長とも毎日相談しながら、どんなニュースをどんな並べ方で、どういう切り口から伝えるのか、議論しています。ニュースの中身と並び、それがニュース番組にとって最大の強化策だと思うからです。物言うニュース番組、問いを発し続ける番組という筑紫さんの時代からのスタイルは、星さんがキャスターをつとめる今のチームにも引き継がれていると思います。

私は今回、プロデューサーになる前は報道局全体の編集に関わる立場だったのですが、そのとき掲げていたキャッチコピーは『現場から、』というものでした。記者がニュースの現場に立ち会い、その目で見て、自分の言葉で伝える、そういう現場力と言うか、ニュースの発信力が報道の基本だと思っています」

さて視聴率をめぐってネットではあれこれ書かれている『news zero』だが、10月1日の初回は視聴率10・0%と、いきなり2桁を叩き出した。有働さんがどんな番組を始めるのかという話題と期待の大きさを、それは示していた。2日目も10・4%と2桁だったが、その後3日目7・9%、4日目8・4%、5日目6・6%。この時間帯では高視聴率と言えたが、10月12日の金曜日に4・6%という数字が出ると、週刊誌やネットニュースは一斉に「視聴率急降下」などと書き立てた。なかには「早期降板か」などと書くメディアもあった。

 編成局担当局次長兼編成部長の岡部智洋さんにその話をすると、こう一蹴された。

 「金曜日はそもそも番組開始時刻が23時30分と他の曜日よりも遅いのです。そういう特定の1日だけをとってそんなふうに語られること自体、残念ですね。

 実際は、10月の平均視聴率を見れば、前月と比較して0・2ポイント上がっているし、昨年の10月と比較しても0・2ポイント上がっています。

 確かにあれだけ大幅に変えたわけですから、一時的に視聴率が下がることもあり得ると思っていたし、10月全体で考えれば、この視聴率は上々じゃないでしょうか。想定以上の受け入れられ方だと思っています。

『会話するニュース』というのが大テーマですが、実際、SNSや多彩なゲスト、中継で世の中へ出ていくことも含めて、有働カラーは出ていると思います」

今後この3つの報道番組がどうなっていくのか興味深い。平日22~23時台のニュース戦争だけでなく、日曜夜の日本テレビの鉄壁状態に変化が生じていることなど、テレビをめぐる環境変化は様々なところに顔をのぞかせている。紙幅の都合でこれ以上ここで詳述するのは控えるが、驚異ある人はぜひ『創』1月号のテレビ特集をご覧いただきたい。

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