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眞子さま結婚延期めぐる新聞・テレビと週刊誌報道の乖離は異常ではないのか

篠田博之月刊『創』編集長
エスカレートする週刊誌の眞子さま結婚延期報道(撮影筆者)

 異常としか思えないのが、眞子さま結婚延期をめぐる報道だ。新聞・テレビと週刊誌報道が著しく乖離しているのだ。そもそも新聞・テレビは2月6日の宮内庁会見以降、その公式発表以上の報道を行っていない。宮内庁発表以上のことはほとんど報じないというこのあり方も疑問なのだが、その一方で週刊誌報道はますますエスカレートしている。もはや結婚延期どころか、破談へ向けて着々と事態は動いているという報道だ。皇室報道が歪であることは以前から指摘されてきたが、今回はまさにそうだ。

この問題については、私は既に記事を2本書いている。

https://news.yahoo.co.jp/byline/shinodahiroyuki/20180131-00081067/

https://news.yahoo.co.jp/byline/shinodahiroyuki/20180207-00081371/

 その後の経過も書いておこう。

 『女性自身』2月27日号「結婚延期の真相と宮内庁の大失態!」では匿名の宮内庁関係者が「実は今回の決定は宮内庁では“破談の序曲”として認識されているのです」と語っている。

 また『週刊女性』2月27日号「『結婚延期』の文言に隠された“本当の意味”!」では匿名の宮内庁幹部がこう証言している。「当初、おふたりの結婚は“無期延期になる”と聞いていたので、期限つきの延期という発表に驚きました。再来年としたのは、小室さん側に対する配慮を含めた表現だったのだと思います。

 そもそも、陛下の“了承”が出ている事案を、皇室側から覆すのは好ましくありません。“無期延期”や“破棄”という言葉も非常に強い表現なので、小室さん側からの“辞退”を待つかたちでいったん、2年後に結婚するという発表にしたのではないでしょうか」

『週刊新潮』2月22日号「眞子さまサヨナラの胸の内」も「裏では“ご破算”へのシナリオがひそかに、かつ着実に進行しつつある」とリードに書いている。ここでも匿名の関係者が「宮内庁側としては、小室さん側から辞退を申し出てくれる方向に持っていくのが理想ですが」と述べた後、そうならない場合は弁護士を入れた話しあいになる可能性もあると指摘している。 

 個々の記事の真偽は不明だが、年末から週刊誌で続いた小室家の内情についての報道は、秋篠宮家や周辺皇族に予想以上に深刻に受け止められたらしい。一方、ネタ元となった小室圭さんの母親の元婚約者男性はその後、あちこちの週刊誌の取材に応じて、いまだに「ご結婚延期は私の生活には無関係で、ただお金を返してほしい」と語っているという。記事では男性の関係者の証言などと書かれているのだが、これは情報源秘匿のための手法だろう。

エスカレートする一方の週刊誌報道

 その後も週刊誌報道はやむことなく続いている。しかも『週刊新潮』3月1日号など、「延期とは名ばかりの穏やかな破談に向けて台本が綴られ始めた」などと、もう破談は確定的という書き方だ。

 記事中にはこんな具体的な記述もある。

「宮内庁は婚約解消に向けたシナリオを着々と進めているところだ。『喫緊のテーマは、発表の『Xデー』はいつかということ。取り沙汰されているのは11月30日、秋篠宮殿下の誕生日会見のタイミングです』」

 破談説もこれだけ報じられると、どうも単なる憶測ではなさそうだと受け止められつつある。例えば『週刊文春』3月1日号のコラムで林真理子さんは「このままだと眞子さまが泣くことになる。そのことだけは避けてほしい」と書いている。

 不思議なのは、バッシングを受けている小室家側からの情報がほとんど出てこないことだ。

 わずかに『週刊新潮』3月1日号には小室家の親族という匿名の証言がこう書かれている。「延期が発表された後、圭君から電話をもらいまして、“報道されているようなことではないんです”と話していました。要するに、破談ではない、少なくとも当人2人は結婚する気満々だ……そう伝えたかったのだと思います」

 逆風の中で、週刊誌の報じるような破談になるのを避ける方途があるとしたら、それは当事者2人の愛情しかないのは確かだが、『女性セブン』3月8日号に宮内庁関係者のこんな証言が載っている。

「それでも眞子さまの“小室さんと一緒になりたい”という思いは揺らいではいないそうです」

 しかし同じ記事に「小室さんと眞子さまのウエディングロードは白紙状態に戻ったといいます」という別の宮内庁関係者の証言も載っている。

問題は当事者2人の意思がどうなのかだ

 『週刊現代』3月10日号は「『私、絶対に結婚するから!』一途な眞子さまに秋篠宮夫妻が下した決断」では、匿名の関係者が「『結婚を考え直す』という考えは、眞子さまにはまったくない」と語っている。そしてこの記事では、そういう眞子さまの一途な信念に、秋篠宮夫妻も結婚を認める方向に変わってきている、と書かれている。

 ちなみにもうひとつ気になるのは、小室圭さんの母親の元婚約者が週刊誌に次々と小室母子の個人情報を流出させていることだ。この『週刊現代』では圭さんからのプライベートなメールや写真を公開している。この男性のやっていることもちょっと限度を超えているような気がしないでもない。

 今回の一連の騒動が異様なのは、前述したように、新聞・テレビと週刊誌の報道が極端に乖離していることだ。週刊誌をあまり読まない人は、宮内庁が発表した通りに、結婚は延期されただけで決して破談ではないと思いこんでいるに違いない。そして週刊誌をよく読んでいる人は、これだけ破談説があふれていれば、それを信じないわけにはいかないだろう。

 この歪な構造は、皇室報道をめぐっては実はよくあることではある。新聞・テレビは基本的に宮内庁発表しか報じない。「菊のカーテン」という言葉があるように、発表以外の情報は宮内庁は基本的に話さない。情報公開という点から言えば、極端に遅れた役所なのだ。発表された以外の情報を新聞などは基本的に書かないのだが、それゆえに裏の情報が週刊誌などに流れることになる。

 今回の報道で驚くのは匿名の宮内庁関係者のコメントが週刊誌にあふれていることだ。そのコメントがどのくらい正確なのかはわからないが、「菊のカーテン」の隙間から情報が洩れること自体は悪いことではない。新聞・テレビが公式発表しか報じない状況では、それは貴重なことかもしれない。

 ただ気になるのは、そうやって漏れている匿名コメントの大半が、これは実質上破談なのだという見解だ。気になるというのは、それらが破談を既成事実化していくことに明らかに寄与している印象を受けることだ。何やら意図的なリークが行われている印象さえ感じられる。

 

あまりにも歪な一連の皇室報道

 それにしてもこの皇室報道のあまりにも歪な構造は、もう少し何とかならないものかと思う。

 もちろん皇室報道が歪んでいるのは、皇室という存在そのものが矛盾を抱えていることの現れだろう。「開かれた皇室」という言葉がよく語られるが、時代の流れに沿って皇室は一方で情報をある程度公開していかねばならないのだが、あまり開きすぎると存在基盤そのものが崩壊しかねないという自家撞着を抱えている。

 そうした構造に押しつぶされ、適応障害という精神的苦悩に追い込まれたのが雅子妃だが、眞子さまももしかすると個人の恋愛感情が皇室という構造の中でおしつぶされるという悲劇を味わうことになるのかもしれない。当事者2人の一途な愛情が両親を動かしつつあるという『週刊現代』の報道が本当であることを祈るしかない。

月刊『創』編集長

月刊『創』編集長・篠田博之1951年茨城県生まれ。一橋大卒。1981年より月刊『創』(つくる)編集長。82年に創出版を設立、現在、代表も兼務。東京新聞にコラム「週刊誌を読む」を十数年にわたり連載。北海道新聞、中国新聞などにも転載されている。日本ペンクラブ言論表現委員会副委員長。東京経済大学大学院講師。著書は『増補版 ドキュメント死刑囚』(ちくま新書)、『生涯編集者』(創出版)他共著多数。専門はメディア批評だが、宮崎勤死刑囚(既に執行)と12年間関わり、和歌山カレー事件の林眞須美死刑囚とも10年以上にわたり接触。その他、元オウム麻原教祖の三女など、多くの事件当事者の手記を『創』に掲載してきた。

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