Yahoo!ニュース

「黒子のバスケ」脅迫犯がEXOについて書いた

篠田博之月刊『創』編集長

以下に掲載するのは「黒子のバスケ」脅迫犯とされる渡辺博史被告が獄中で書いたメッセージだ。以前紹介した冒頭意見陳述は裁判のために書かれたものだから、厳密に言えば、彼のオリジナルのメッセージとしてはこれが逮捕後、初と言えるかもしれない。

内容は、いわば意見陳述についての補足と言うか、音楽グループ「EXO」について書いたものだ。実は意見陳述の中にEXOについての言及が書かれていて、一部ツイッターなどでそれが話題になっていた。

https://twitter.com/growlabc/status/445511108946698240

https://twitter.com/JENO_JENO_JENO/status/445199158245216256

渡辺被告のEXOへの思いは、「黒子のバスケ」脅迫事件とも関わっているらしいのだが、あいにく私はそのEXOというグループも知らなかったほどだから、コメントのしようもない。では、以下、渡辺博史被告の文章をそのまま掲載しよう。(篠田博之)

意見陳述での「一重王子」の件は、正体は誰かというのがネット上でほんの少しだけ話題になったようですね。「惑星」なんて分かりやすいヒントを入れたお陰で、グループについての推測は正解が多いみたいです。韓国のアイドルグループEXOです。ご存知ないでしょうから、そちらでどんなグループかは検索して下さい。

ただ「一重王子」というフレーズは良くなかったです。誤解を招きました。でも自分はずっと「一重王子」と心の中で呼んでいたから仕方ありません。分かりやすいのは「アイライン王子」でした。ただアイライン抜きの方が好きなんですよ。ペン(ファンのこと)も大多数がアイライン抜きの方が好きだと思いますよ。自然な少年って感じの顔立ちがいいんですよ。今でも一緒にジョギングとかするらしい仲のいいお兄さんが羨ましい限りです。あんな弟がいれば、自分はやらかさなかったと思います。ということで「一重王子」はWOLFやうるろんのカムバックで顔痩せして皆に美形と気づかれた包子(パオズ)ではないんです。

「俺の嫁」なんて言葉を作ったせいで誤解されているみたいですが、あれは本気で嫁と思っているのではないです。「○○は俺の嫁」というのは○○に対する親愛の情を表しているにすぎません。自分はEXOに対して性的な感情を抱いたことはありません。それにアイライン王子は耳がチャームポイントの踊れないイケメンの嫁であることくらい自分も認識しています(笑)。

逮捕の3ヵ月くらい前からEXOのことが大好きでした。自分にガチで芸能人を好きになるという感情が存在したことに物凄く驚きながら、曲を聞き、動画を視聴して、追っかけブログで活動情報を収集していました。

実は2012年4月のソウルでのデビューショーケースのユーストリーム生中継をリアルタイムで見てはいたんですよ。しかし、この時には別にはまりませんでした。自分は中国武術をとても綺麗だと思うので、パンダ好きの中国マフィアの殺し屋(ただし精神年齢は5歳)と、その保護者の長髪だとファイナルファンタジーの登場人物にしか見えない画伯が気になっていました。画伯が描いたEXOの12人が野原に並んだ絵がとても好きです。Tシャツとかになってたら、拘置所で着たいです。

EXOを好きになったのが2013年9月で、最初の事件を起こしたのが2012年10月ですから、1年早くEXOを好きになっていたら事件を思い止まっていたかもしれません。でもネトウヨのブログの嫌韓ネタの1つとして使われてしまうかもしれませんけどね。

「黒バス事件の真犯人はEXO」だとか、「黒バス事件犯人が在日であることの完璧な証拠」だとか(笑)。愛国先生とかデリシャスコーヒー(いずれも有名ウヨブロガー)とかに取り上げられちゃうかな(笑)。

この件がネトウヨにネタにされたら、アンチネトウヨの人たちも、

「オタク文化と犯罪者を絡める報道にいつも激怒するのに、K-POPと犯罪者を嬉々として絡めて論じるネトウヨのダブルスタンダードぶりを嗤う」

みたいにネトウヨを揶揄するネタにすればいいかと思います(笑)。

外にいる頃はずっとEXOのことは秘密にしてました。せいぜい2ちゃんねるのアジアエンタメ板のEXOスレに書き込んだりしたくらいでした。

「一重王子は高校生時代の顔とデビュー後の顔に大きな隔たりがあるけど、今がかわいいからそれでよし」

「とにかくニョルの短髪は禁止」

「ギョンスは誰かに似ている気がするけど、どうしても思い出せない」

「リーダーがたまにモノマネ芸人の神無月に見える」

「ショータイムの第1回の最後で告知する『一重王子』はかわいすぎた。人間業とは思えぬかわいさだった。つべで何度もリピって見た」

「ダンスマシーンには必ずデコを出す髪型でいて欲しい。『ジョンイン坊ちゃん』と呼びたいんだよ(笑)」

「ジョンデは自分なんかをミニバスに誘ってくれた小4の同級生の○○○○くんに似ているから好き。ジョンデもデコ出しヘアを希望」

「マジでパンダには殺し屋の役をやってもらいたい。黒いスーツ姿のパンダのマフィア臭は異常」

「様は存在自体がミラクルなんだ。自分は様のことを知って『残念イケメン』の意味が分かった」

「包子のビジュアルの全盛期はきっと練習生時代だと思うんだよな」

「鹿の黒髪はオタク臭いからやめて欲しい」

「イーシンさんって何気にぼっちなことが多くないか」

「おせふんはまあいいや」

「しかしジノくんをEXOに入れなかった椅子万先生は何を考えているのか」

だとかリアルで話せるEXOチングの1人くらいは欲しかったです。

もう4カ月くらいEXOの曲を聞いてませんが、聞いたら泣いてしまうかもしれません。ただ、初公判の前日に玄界灘の向こうへ、

「好きになっちゃってごめん。今までどうもありがとう。そして、さようなら」

と心の中で絶叫してお別れを済ませました。ですから今はEXOペンではないのです。

これからどんどん大きくなって行くEXOを見れないのは悲しいですが、仕方がありません。自分が死ぬ前には、この世の最期の名残に「MY LADY」を韓国語版、中国語版の各1回ずつ聞いてから逝こうと決めています。

なんかダラダラとEXO語りを書いちゃってすいません。分からない人には全く意味不明の内容だと思います。でもこれで自分の「一重王子」が誰だかは、分かる人には分かったと思います。

もうEXOのことは書きません。今回はこの辺で失礼します。拙文におつき合い下さりありがとうございました。

2014年4月 威力業務妨害事件被告人 渡邊博史

月刊『創』編集長

月刊『創』編集長・篠田博之1951年茨城県生まれ。一橋大卒。1981年より月刊『創』(つくる)編集長。82年に創出版を設立、現在、代表も兼務。東京新聞にコラム「週刊誌を読む」を十数年にわたり連載。北海道新聞、中国新聞などにも転載されている。日本ペンクラブ言論表現委員会副委員長。東京経済大学大学院講師。著書は『増補版 ドキュメント死刑囚』(ちくま新書)、『生涯編集者』(創出版)他共著多数。専門はメディア批評だが、宮崎勤死刑囚(既に執行)と12年間関わり、和歌山カレー事件の林眞須美死刑囚とも10年以上にわたり接触。その他、元オウム麻原教祖の三女など、多くの事件当事者の手記を『創』に掲載してきた。

篠田博之の最近の記事