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ACL日韓対決前に知っておきたい「韓国から見たJリーグ勢詳細解説」とKリーグ観戦ポイント

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
蔚山現代を率いるホン・ミョンボ監督(写真提供=韓国プロサッカー連盟)

今日からアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)はノックアウトステージのラウンド16が始まる。

東地区8チームによるラウンド16(決勝トーナメント1回戦)のキーポイントは、何といっても韓国勢と日本勢のプライドをかけた直接対決だ。実に3試合で日韓対決が行われるのだ。

韓国のサッカー記者たちの間でもそれはちょっとした話題になっている。何しろKリーグ勢4クラブすべてがグループリーグを突破するのは2015年以来6年ぶり。

その要因について、韓国に来て以来こちらで多くのサッカー記者たちに尋ねてみたが、以下のような三つが挙げられる。

  • ①中国勢の不振がKリーグ勢にはプラスに働いた。
  • ②ホーム&アウェー方式ではない一か所開催がKリーグ勢の集中力を高めた。
  • ③TSGのスカウティングや支援体制も大きなアシストになった。

(参考記事: ACL韓国勢躍進を支える影のキーマン!Kリーグ技術委員長が語る「TSG」の秘密【インタビュー】)

ただ、一言にKリーグ勢と言っても各チームの特長や状況は異なる。そこで今回はKリーグ勢のチーム状況と、韓国サイドから見たJリーグ勢について紹介したい。

“堅守”の名古屋に“速攻”の大邱

“ミニ韓日戦”3連戦の口火を切るのは名古屋グランパス対大邱FC戦だ。

グループリーグでは川崎フロンターレと同じグループIだった大邱FC。当時はチームの中心選手だったMFチョン・スンウォン、DFチョン・テウク、DFキム・ジェウが東京五輪代表に選出された関係で戦力に大きな空白があったが、残された選手が奮起し、4勝2敗で川崎に次ぐ2位でグループリーグを突破した。

8月はリーグ戦5連敗を喫することもあったが、直近3試合では2勝1分と調子が良い。今回の名古屋戦ではチョン・テウクやチョン・スンウォンのほか、今夏に新しく加入したブラジル人MFブルーノ・ラマスも出場するだろう。

このラマス加入で前線のブラジル人コンビであるFWセシーニャとFWエジガルも、9月10日に行われたKリーグ1(1部)第29節の浦項戦でともにゴールを決めるなど、好調ぶりを披露している。

そんな大邱と対戦する名古屋について、Kリーグの報道資料では以下のように紹介している。

「名古屋はグループGを5勝1分で首位通過。同じ組に入った浦項を相手に1勝1分を挙げた。今季Jリーグでは現在まで15勝5分8敗で20チーム中4位につけている。28試合21失点の数字は川崎(17失点)に次ぐリーグ最少失点2位と、堅い守備が特徴だ。

主要な選手では、グループステージで計413本のパスを記録し東地区パス回数2位を記録したDF中谷進之介や、今季Jリーグで自己最多の7得点を記録中のMF稲垣祥、さらにはブラジル人FWマテウス(27)などだ」

川崎との“日韓王者対決”に臨む蔚山現代

この名古屋対大邱戦のキックオフから2時間後。今度は韓国・蔚山でACLの“ミニ韓日戦”が行われる。ACLのディフェンディングチャンピオンで今季Kリーグ首位の蔚山現代が、Jリーグ2連覇を目指す川崎とホームで激突する。

蔚山現代は今季Kリーグで15勝10分3敗(勝ち点55)で首位を走っている。加えて、直近8試合連続無敗(5勝3分)。ACLグループステージでも6試合全勝と圧倒的なパフォーマンスを見せた。

韓国代表にも選ばれたMFイ・ドンギョンをはじめとする東京五輪世代のFWイ・ドンジュン、MFウォン・ドゥジェ、DFソル・ヨンウら若手と、MFイ・チョンヨンやDFキム・テファン、MFユン・ビッカラムらベテランとの調和も良い。

そのほか、オランダ人DFデイブ・ブルタイスやGKチョ・ヒョヌが構える守備陣など、なかなか隙が見当たらない。唯一あるとすれば、今夏にドイツ2部ハノーファーへ移籍したオーストリア代表FWルーカス・ヒンテルゼーアの穴か。2019年U-20ワールドカップ準優勝のオ・セフンの成長に期待が集まる。

では、韓国は川崎フロンターレをどう見ているのか。Kリーグはこう見ている。

「ただ、昨季J1リーグ王者で今季も首位を走る川崎の戦力も強大だ。今季リーグ戦では20勝6分1敗で、カップ戦などを含めてもまだ1敗しかしていない。ACLグループステージでも全勝し、同居した大邱FC相手に2試合で6ゴールも決めた。

最も警戒すべき選手は元ブラジル代表FWレアンドロ・ダミアンだろう。

ダミアンは今季Jリーグで14ゴールを決めており、得点ランキングで3位につけている。ACLグループステージでは6ゴール中5ゴールを大邱FC戦で記録した。また、U-23ブラジル代表で出場した2012年ロンドン五輪では、現在の蔚山現代を率いるホン・ミョンボ監督が当時指揮したU-23韓国代表との準決勝で2ゴールを挙げ、3-0の勝利に貢献した。

そのほか、昨季Jリーグベストイレブンに選ばれた元韓国代表GKチョン・ソンリョンを擁する守備陣も、リーグ戦27試合でわずか17失点という堅守を誇っている。」

監督交代のセレッソ大阪、エース売却の浦項

最後は明日9月15日に行われるセレッソ大阪対浦項スティ―ラーズについて。

浦項はグループGを3勝2分1敗の2位で通過。第2節の名古屋戦で0-3の完敗を喫したことが痛かったが、全北現代がグループH最終節でガンバ大阪を2-1で下したことで「各グループ2位の成績上位3チーム」に滑り込み、決勝トーナメント進出を果たした。

浦項のキープレーヤーはDFカン・サンウとシン・ジンホだ。カン・サンウはAFCファン投票でグループステージ最高の左サイドバックに選ばれ、最近では2022年カタールW杯アジア最終予選を戦う韓国代表メンバーにも名を連ねた。

シン・ジンホは、グループステージで東地区の選手最多となる470本のパスを記録。また、昨季ACLではキャプテンとして蔚山現代を優勝に導いた経験もある。

そのほか、チーム内で頭角を現しているMFコ・ヨンジュンやFWクォン・ギピョなどの若手も、ACLでの活躍が期待される選手だ。昨季Kリーグ最優秀若手選手賞で今季も得点源だったFWソン・ミンギュが6月に全北現代に移籍してしまったことは痛手だが、組織力でその穴を補おうとしている。

そんな浦項と対戦するセレッソ大阪についてKリーグが記した紹介文は、監督更迭から始まる。

「対するセレッソ大阪は去る8月26日、成績不振を理由にレヴィー・クルピ前監督を更迭した。現在のJ1リーグ順位は9勝9分10敗で12位だ。

セレッソ大阪はGKキム・ジンヒョンやセンターバックのDFチアゴ、サイドバックのDF松田陸と丸橋祐介らが構える守備陣が強力だが、前線の主力であるFW加藤陸次樹がリーグ戦5ゴール、FW豊川雄太がリーグ戦5ゴールと、攻撃陣の活躍が少し惜しいと評価されている。

そんななかで、元日本代表でJ1リーグ最多得点記録を保持するFW大久保嘉人が、40歳近い年齢にしてリーグ戦22試合6ゴールの活躍を見せている」

具体的な選手名も多数列挙しながらJリーグ勢の特長についても触れているKリーグ。今日から始まるACL日韓対決3連戦。一発勝負のラウンド16を制して準々決勝に駒を進めるのはどこか。注目したい。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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