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インチキ・メディアは“退場”も…韓国最大ポータルのニュース提携媒体・選考方法とは?

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
(写真:ロイター/アフロ)

新聞の発行部数が年々下がり、ニュースをネットで見るのが当たり前になって久しい。韓国でもそれは変わらず、数年前からニュースを取り巻く環境が様々に変化している。

かつては地下鉄の駅構内や路面店などで売られる紙の新聞がメインだったが、ライフスタイルの変化によってニュースに触れるのは紙の新聞ではなく、スマートフォンなどのモバイル端末という人が多い。

そのため、紙媒体を持たないインターネット・メディアも多い。韓国言論振興財団が調べたところによると、2018年の時点でインターネット・メディアは3537媒体もあると言われているほどだ(紙媒体とネット媒体の両方を展開しているメディアも含む)。

そういった数多くの媒体社たちが重視するのが、韓国最大のポータルサイトNAVERと記事提供契約を交わすことだ。

(参考記事:ヤフーと経営統合するLINEの親会社NAVER(ネイバー)とは?韓国が注目する理由)

日本で多くの媒体社が最大手「Yahooニュース!」に記事提供契約を交わそうとすることと同じだが、調べてみて興味深かったのは韓国NAVERには明確な“選定基準”があるということだ。

NAVERだけではない。韓国最大のトークアプリ「カカオ」もニュース提供元の選定に関して第三者組織に委任されているのだ。

NAVERのニュースを担う「ニュース提携評価委員会」

その組織とは、「ニュース提携評価委員会」。韓国のオンラインニュース生態系の健康的な発展のために設立された独立機構で、メディア関連団体と利用者団体、学会や専門家団体など15団体から、それぞれ2人ずつ推薦した30人の委員で構成されている。

NAVERへニュースを提供できるメディアは、ニュース提携評価委員会が発表している客観的な基準に合格したメディアだけとなっており、逆にその基準を満たせなかったり違反や問題を起こしたメディアは、たとえ長年の関係だったとしても契約解除の“退場”となる。

韓国メディア『メディア・オヌル(メディアの今日)』が最近発表した分析によれば、ニュース提携評価委員会の設立前と後の5年間で、NAVERから“退場”したメディアが大きく増加しているという。

ニュース提携評価委員会が設立される前の5年間(2010~2014年)に退場となったメディアは9媒体となっているが、設立後の5年間(2016~2020年)では55のメディアがNAVERから退場した。

同委員会の審査がいかに厳しいかが伝わってくるが。では、どんな審査や評価を行っているのか、具体的に見てみよう。

NAVERにニュースを提供すると一口に言っても、様々な契約形式があるのだが、ここでは最も審査が厳しいと言われる「ニュースコンテンツ提携」を例に挙げる。

「ニュースコンテンツ提携」とは、記事配信の対価としてPVなどに応じた金銭が支払われるメディアを意味する。「ヤフーニュース!」で言うところのコンテンツパートナー社となるが、NAVERの「ニュースコンテンツ提携」は年1回、公にしっかりと告知して募集を受け付けていることだ。

またすでに契約しているメディアも年1回、再評価される。NAVERは透明性があってフェアな印象だ。

NAVERへの記事提携を申請したメディアに対して「ニュース提携評価委員会」は、まず所属委員30人のうち、最少10人以上が参加する評価チームを構成し、メディアに対する評価を実施する。最終的な判断は、委員会で評価作業の結果を土台に決定するそうだ。

評価する項目は?

評価項目としてあるのは、「定量評価」(40%)と「定性評価」(60%)の2つ。「ニュースコンテンツ提携」に登録されるためには、100点満点中90点以上と評価されなければならない。

定量評価とは、主に記事量に対する評価だ。最少の記事量が事業者ごとに細かく定められており、日刊紙なら「月200本以上」、インターネットメディアなら「月100本以上」、月刊誌なら「月20本以上」などと決められている。

また、単純に本数だけでなく、「独自記事」の比率も重視される。独自の取材に基づいた記事を意味し、その比率が日刊紙やインターネットメディアの場合は「30%以上」、月刊誌なら「50%以上」と決められている。

より評価の度合いが大きい定性評価は、少々複雑だ。計12項目あり、それぞれ5点満点で評価される。

“ジャーナリズム品質要素”として「価値性/遂行性」「時宜性/重要性」「正確性/完全性」「専門性/深層性」「公正性/均衡性」の項目があり、“倫理的要素”として新聞倫理綱領などのメディア倫理を遵守したかを確認する「実践意志」や「権益侵害」「広告倫理」「著作権倫理」「煽情性」といった項目がある。また“需要者要素”として「創意と革新性」「需要者親和性」という読者に関する項目も見られる。

興味深いのは、定性評価の評価項目において、評価委員の過半数から最低点数以下となった場合、そのメディアは総得点とは関係なく、提携対象から除外されてしまうということだ。

このように客観的な審査基準があるだけに、NAVERでは契約解除を通告されるメディアも出てくる。

直近では今年1月25日に9のメディアが契約解除されている。ニュース提携評価委員会は定期的に提携メディアを評価しており、2020年上半期も28のメディアが契約解除となった。

「報道資料や他のメディア記事を独自記事として提出し、脱落するケースが多数ある」とし、「今後も提携メディア審査では定量評価はもちろん、ジャーナリズムの品質と倫理性をさらに重要に評価する」とは、ニュース提携評価委員会・審議委員会チョ・ソンギョム委員長の言葉だが、いずれにしてもNAVERやカカオは、第3者にメディアの審査・評価を委任することで、ユーザーにより良質なニュースを提供しようとしていることが伝わってくる。

また、それを委任されたニュース提携評価委員会も基準をブラックボックス化するのではなく明確にしているため、ニュースを提供するメディアも自ら健全化に努めることができる印象だ。

日本のニュースポータルサイトやニュースアプリなども、韓国NAVERのニュース提供社選定方法などをひとつの参考にしてみるのも悪くないかもしれない。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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