Yahoo!ニュース

サッカー代表キャプテンにもイジメ疑惑浮上も本人否定。収まらない韓国スポーツ界の「#学暴MeToo

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
上段の左から3番目がキ・ソンヨン(写真:ロイター/アフロ)

韓国女子バレーボール界の美人双子姉妹として人気だったイ・ジェヨン&イ・ダヨンの加害者疑惑によって火がついたイジメ問題が依然として騒がしい。収まるどころかあちこちで炎上している状況だ。

韓国では「学校暴力」「#学暴MeToo」と呼ばれ、芸能界でも連日のようにアイドルやスターたちの過去問題がネットで暴かれ、その真偽を巡って「真実攻防戦」も始まっているが、韓国スポーツ界でもさまざま競技団体で「#学暴MeToo」飛び火している。

男子バレーではOK金融グループのソン・ミョングン、シム・ギョンソプが中学・高校時代に起こしたイジメ問題が明るみに出て今季出場停止に。サムスン火災ブルーファングスのパク・サンハは学生時代のイジメ加害を認め、その責任を取る形で現役引退を宣言した。

日本ではあまり報じられていないが、高校アイスホッケー部で10年以上も繰り返されていきた暴力問題や、ボクシング韓国代表が後輩たちに対して行ってきた暴力・セクハラ行為も明らかになっている。

昨日2月24日には、とある弁護士を通じて、「首都圏のクラブに所属するサッカー元韓国代表のスター選手Aが小学生時代、サッカー部の後輩に性的暴行を加えていた」という暴露があり、衝撃も走っている。

弁護士によると、2000年1月から6月にかけて当時小学5年生だった被害者のCとDは、加害者のAとBにサッカー部の合宿所で性的イジメに遭っていたという。

「被害者2人が加害者たちの“餌”に選ばれた理由は、当時、体が小さく、性格が弱くて内向的だったため」とした弁護士は、「被害者たちは20年余りが過ぎた現在も、当時のことを生々しく記憶し、苦しんでいる」と訴えた。

(参考記事:韓国の元サッカー選手が小学生時代の“性的被害”を告白、衝撃すぎるその中身とは)

この報道は瞬く間にネットを駆け巡り、Aについてさまざまな憶測が飛び交う中、渦中のひととして噂になってしまったのが、キ・ソンヨンだ。

3度のワールドカップ出場を誇り、日本でもその名が知られている元韓国代表キャプテンに、突如としてイジメ加害者疑惑が降りかかった。

ただ、キ・ソンヨンは所属するマネージメント会社を通じてその事実を完全否定。「本日報道された性暴力事件についてキ・ソンヨンが加害者のように指摘されているが、まったく関連がない。汚名を着せられた被害と今後発生する可能性のある被害については法的対応も辞さない」と、法的対応に乗り出す姿勢を示している。

キ・ソンヨンだけではない。学生時代のイジメ疑惑が浮上した韓国プロ野球のとある選手の場合、所属するハンファ・イーグルスが独自の真相調査を実施。知人や当時の担任教師などに接触して真相を確かめ、「事実無根だった」として虚偽の流布に対し法的対応も辞さない構えも見せているが‥‥…。

いずれにしても連日のように、次々と飛び出す韓国スポーツ界の「#学暴MeToo」。世界的に「MeToo運動」が広がり始めたとき、韓国でも政界、文学界、芸能界などで女性たちの勇気ある告発が続いたが、現在は「#学暴Me Too」が韓国のビッグイシューだ。

そうしたこともあって、韓国の文化体育観光部(日本の文部科学省に相当)と教育部(日本の教育庁に相当)は2月24日午後、「学校運動部の暴力根絶及びスポーツ人権保護体系改善案」を審議·議決。今後は学校暴力を犯した選手はスポーツ界から締め出すという姿勢で一致した。

大韓体育会(KOC)傘下のすべての競技団体において代表選手を選抜する際に過去に学校暴力履歴がないかを確認し、プロスポーツではすべての新人選手に学歴詐称がないことを確認する誓約書の提出が義務づけられる。大学や実業団チームでも学校暴力の履歴がある選手はその門をくぐれないことなるが、そうした制約だけでは韓国スポーツ界の「#学暴MeToo」は解決しないだろう。

韓国スポーツ界で「#学暴MeToo」が起こる原因は、もっと根の深いところにあるような気がするのだが……。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

慎武宏の最近の記事