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元KARAのギュリも冷や汗…韓国で横行する新たな詐欺の手口とは?

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
元KARAのギュリ(写真:Shutterstock/アフロ)

NTTドコモのドコモ口座を使った不正引き出しや偽のウェブサイトにアクセスさせてパスワードなどを盗み取るフィッシング詐欺の被害が年々深刻化している日本だが、韓国でも最近カカオトーク(LINEのような韓国のコミュニケーションアプリ)を利用したフィッシング詐欺が横行している。

その手口があまりにも巧妙なため、ネット上には被害を訴える人が続出。先日はガールズグループKARA出身のパク・ギュリの母親が、この詐欺に騙される寸前まで至った。

パク・ギュリは自身のインスタグラムに詐欺師と母によるトーク画面の写真を公開し、注意を呼びかけた。詐欺師はパク・ギュリの個人情報を盗み、カカオトークを乗っ取って彼女の母親と会話を交わしたのだという。

(参考記事:【写真】元KARAギュリ、フィッシング詐欺被害を報告。個人情報を盗まれた!?)

公開されたトーク画面を見ると、これが恐ろしいほど自然なのだ。

詐欺師がパク・ギュリの口調を真似しているかどうかは定かではないが、パク・ギュリを装った詐欺師は「お母さん、何してる? 私、いまスマホが壊れてPCで送ってるの」と話かけている。

注目すべきは「スマホが壊れたためPC版でメッセージを送っている」という前置きだ。

というのも、韓国で最近横行しているフィッシング詐欺のほとんどが、これと似たセリフで始まるというのだ。相手が電話をかけないようにあらかじめ念を押すとともに、自分はスマホでお金の振込が出来ないのでお願いしたいということもアピールする、とても巧妙なフレーズだ。

パク・ギュリを装った詐欺師も、「仕事のために急ぎでお金を振り込まなければいけない」と、スマホが壊れたためインターネットバンキングが使えないことを説明していた。それから600万ウォン(約60万円)の振込が可能かを確認した上で、個人名義の口座番号を教えるというようなやり方だった。

ただ、パク・ギュリの母親はこの段階で何か釈然としなかったのか、「この人(指定された個人名義の口座)は誰?」と質問する。しかし、既読にならなかったため、不審に思って振込には至らなかったという。

口座番号を教えるまでは丁寧に会話をつなげていた詐欺師だが、それ以降は「なるようになれ」と無計画だったのかもしれない。

ただ、最近のフィッシング詐欺の被害に遭う多くの人々は、一連の会話を信じて慌ててお金を振り込んだあと、何らかの方法で騙されたと気づくことになるらしい。

まるでオレオレ詐欺が進化してデジタル化されたような手口だが、人によっては金銭ではなく、文化商品券(日本でいう全国共通図書券)やギフトカードを購入してPIN番号を送るよう指示されたり、個人情報を盗み取るアプリのインストールを誘導されることもあるらしい。

ただ、幸いにしてパク・ギュリの母親のように、振込寸前で被害を免れた人も少なくない。

そのエピソードをいくつか挙げると「詐欺師が口座番号を打ち間違えて、振込エラーになった」「自分を装った詐欺師と母が会話をしていた時、2人とも家にいたので詐欺だと気づくことができた」(韓国紙『ソウル新聞』より)、「文化商品券を買いに走ったコンビニの店員に、一度電話してみるように勧められた」(Twitterより)といった具合だ。

人との対面コミュニケーションが減ってきたコロナ禍のご時世だからこそ、韓国ではこういったフィッシング詐欺の被害規模が増え続けている。

韓国警察庁の統計によると、今年1〜4月のフィッシング詐欺による被害額は128億ウォン(約12億8000万円)で、前年同期の84億ウォン(約8億4000万円)に比べて52%増えているという。

過去に横行した電話を使ったフィッシング詐欺ではなく、コミュニケーションアプリを利用した手口が圧倒的に増え、その規模も日々拡大しつつある状況だ。

人の弱みや親心につけ込む卑劣な詐欺がなくなるどころか、巧妙になっていく昨今。日本も韓国も、賢明な判断力と情報力が求められているのは間違いないだろう。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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