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7月10日に日韓のスタジアムで歓声再び?韓国プロ野球とKリーグ「観客解禁」へ

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
無観客の中、チアリーダーたちが盛り上げた(写真:Lee Jae-Won/アフロ)

新型コロナ感染症の拡散防止と防疫のために、無観客での開催が続いていた試合会場に、ようやく観客たちの歓声が戻ってくる。

韓国プロスポーツの話だ。

韓国の文化体育観光部(日本の文部科学省に相当)は6月28日、中央災難安全対策本部が発表した「距離を置く段階別基準及び実行方案」により、プロ野球のKBOリーグやプロサッカーのKリーグなどで、制限付きであるが観客の入場を認める方針だと発表したのだ。

「距離を置く段階別基準及び実行方案」は新型コロナウイルス流行の深刻度と防疫処置の強度を1〜3段階で区分して施行するというもので、現在はもっともレベルが低い第1段階(1日の感染者数50人未満、感染経路不明比率5%未満、管理中のクラスターが減少もしくは抑制、防疫管理比率が増加もしくは80%以上)にあるため、制限付きながら観客解禁するという。

「防疫当局との協議を経て、観客の許容規模や解禁試合日時などの細部計画を来週確定し、競技場でコロナ19拡散の事例が発生しないよう、プロスポーツ団体とともに、観客の立場に沿った徹底した防疫計画を樹立・点検する計画だ」(文化観光部)

この発表に安堵しているのはKBOリーグやKリーグの関係者たちだ。

というのも、KBOリーグは5月4日に、Kリーグは5月7日に世界に先駆けて開幕し「新型コロナを克服した」とアピールしていたが、無観客試合が“新たな悩みの種”になっていた。

無観客でも試合に臨場感を持たせようと、ファンの歓声や応援コールを録音してスタジアム内に流すなど、あの手この手を尽くしたが、やはり観客がいなければ盛り上がりに欠ける。それどころか、確認ミスでアダルトクッズ業者のリアルドールを客席に設置しまい世界中の笑い者になってしまったクラブもあった。

(参考記事:韓国メディアも「国際的な恥」と落胆…とあるKリーグクラブの“応援マネキン”騒動とは?)

それは「空席のスタンドに少しでも賑わいを」という工夫が空回りした失敗で同じようなパフニングは起きてはいないが、入場料収入を得ることができないことはかなり深刻な問題になりつつあった。

『スポーツソウル』野球部担当記者が電話取材した韓国野球委員会(KBO)のリュ・デファン事務総長によると、「すべての球団が財政難に苦しんでいる状況で、KBOとしては文化観光部などに観客入場を許容するよう持続的に求めてきた」という。それだけに韓国政府が制限付きとはいえ観客解禁の方針を固めことは待ちに待った“朗報”なのだろう。

KBOリーグとKリーグは、すでに観客入場が解禁になった場合の受容数も明らかにしている。

KBOリーグの場合、観客数の規模をスタジアムの30%から始め、そこから段階的に観客数を増やし、最大50%まで伸ばすことが目標。Kリーグはスタジアム収容人数の40%未満から始めたいと考えているようだが、「文化観光部や中央災難安全対策本部が収容人数に関して別途の基準をどう設定するかによる。それに合わせて受け入れる観客数を決めることになるだろう」(Kリーグ関係者)という。

それだけに韓国政府が今週内にはまとめ発表するとされる詳細方針には、KBOリーグやKリーグの関係者はもちろん、ファンの注目も集まるが、「今週中にそれが発表したからといってプロ野球やKリーグで即、観客解禁にはならないだろう」というのが大方の意見でもある。

チケット販売に来場者たちの動線チェック、さらには各試合会場に設置されるだろう防疫対策とその投入人員の手配など、準備すべきことが山積みだからだ。KBOリーグ、Kリーグともにリーグとして選手や関係者に配布したコロナ対策マニュアルこそあるものの、スタジアム別の観客対応マニュアルなどもない。

KBOリーグもKリーグも無観客での開幕前に、テストを兼ねた練習試合を実施しているが、今回も観客受け入れ時を想定したシミュレーションを行なって本番に備えるかもしれない。

Kリーグ関係者も言っている。

「観客数の規模や解禁日時が決まったら、各クラブには1週間ほどの準備期間を与えねばならないだろう。今週中に政府の正式発表があっても、週末のリーグ戦から解禁できるかどうかはわからない」

Kリーグは7月4日〜6日にかけてKリーグ1(1部リーグ)の第10節があるが、7月10日〜12日の第11節から観客解禁となる可能性もあるわけだ。KBOリーグも無理して今週末の3連戦を急がず、来週(7月7日〜11日)から観客ありのの開催を目指しても良いのではないかという意見もあるようだが、はたして。

いずれにしても、韓国プロ野球とKリーグは遅くても7月10日前後には観客がいる中で試合を行なえることになりそうだ。

日本も7月10日にはプロ野球とJリーグが上限付きながら観客を受け入れての開催を予定しているだけに、7月10日は日韓両国でスポーツ・ファンたちの大歓声がスタジアムにこだまするかもしれない。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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