Yahoo!ニュース

イ・ボミら「女子ゴルフ・スターたちの総出動」が決定。KLPGAはいかに対策するのか

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
昨季の韓国ツアーに参戦時のイ・ボミ(写真提供=KLPGA)

新型コロナ・ウイルスの影響で日本ではいまだプロゴルフ開幕のめどが立たないが、ちょうど一週間後の5月14日から韓国では女子プロゴルフが再開される。

以前も紹介した韓国女子プロゴルフ協会(KLPGA)今季初のメジャー大会『KLPGAチャンピオンシップ』だ。同大会は5月14日から17日まで開催されるが、日本でも『日刊スポーツ』で報じられたように、イ・ボミやアン・ソンジュなど日本を主戦場とする選手の出場が決まった。

実力と人気のKLPGA広報モデル経験者ばかり

そのほかに世界ランク3位のパク・ソンヒョン、6位のキム・セヨン、10位のイ・ジョンウン6、14位のキム・ヒョージュなど、アメリカで活躍する韓国人選手たちも大挙出場することも決まっている。

現在は海外で活躍するが、韓国時代はいずれも賞金女王や最多勝、年間MVPなど頂点を極めただけではなく、実力と人気を兼ね備えた者だけが選ばれるKLPGA広報モデルにも選出されているだけに、“女王たちの帰還”といったところだろうか。

(参考記事:イ・ボミやアン・シネも選ばれた「美女ゴルファー」の証!! KLPGA広報モデル10年分を大公開)

そんなかつての女王たちと、昨季の韓国ツアーで6冠王に輝いたチェ・ヘジンや“ルーキー旋風”を巻き起こしたチョ・アヨン、さらにはジャン・ハナ、イ・ダヨン、イム・ヒジョンらKLPGAツアーの実力者たちが一堂に会するのだから、韓国でも注目度は高まるばかり。

「海外組、続々集結」(『ゴルフダイジェスト・コリア』)「女子ゴルフスター、KLPGAチャンピオンシップで総出動」(『ゴルフ韓国』)、「スターたちの戦争」(『ソウル新聞』)といった見出しも躍る。

ギャラリー受け入れも検討していたが…

当然ゴルフファンの関心も高く、KLPGA関係者によると開催が発表されたときから観客の受け入れなどについて問い合わせが多かったようだが、KLPGAは最近、無観客で行う方針を固めたという。

実はKLPGAは無観客ではなく、ギャラリーを少しでも受け入れることはできないかと考えていた部分もあった。

KLPGAが『KLPGAチャンピオンシップ』開催を発表したのは4月16日。つまり、韓国の中央防疫対策本部が4月19日に社会的距離(ソーシャルディスタンス)確保の緩和を発表する前。

さらに追い風のように政府の緩和発表以降、韓国国内の新規感染数は減少し、4月30日には初めて国内の新型コロナ・ウイルス感染者数がゼロになった。

外出制限もなくなり、5月3日には小・中・高校生の登校を5月中旬から始めることも決定。

外出自粛要請を含む行動制限が大幅に緩和され、「屋外のイベントも消毒の徹底など政府が定めた防疫ガイドラインに従うことを前提に開催を認める」という発表もあったので、ギャラリー受け入れも念頭に置き始めたという。

済州でのチャリティゴルフは中止

ただ、韓国プロ野球が5月5日に、プロサッカーのKリーグが5月8日に無観客試合で開幕することを決めた中、KLPGAだけが先行するわけにはいかない。先走って万が一ゴルフ場から感染者を出せば、ゴルフのイメージダウンを招く危険性もあるばかりか、世論からの厳しい指摘も避けられなくなる。

実際、5月2日から3日にかけて済州道(チェジュド)で開催予定だったチャリティゴルフイベントは世論と安全面を考慮して中止になっている。

同イベントはアメリカで活躍するイ・ジョンウン6、ユ・ソヨン、昨季賞金女王のチェ・ヘジンらが所属するスポンサー企業が企画したもので多くの関心が集まったが、「連休期間中に済州を訪れる人が急激に増え、選手の安全面も考慮して中止」となっていた。

韓国ゴルフのコロナ防疫対策とは?

そういったこともあってKLPGAも結局、無観客で開催することを決めたようだが、心配されるのは会場の作りだ。

今回の大会会場となる楊州(ヤンジュ)レイクウッドカントリークラブはレイク・コース(水道コース・花道コース)とウッド・コース(山道コース・林道コース)による全36ホールのゴルフ場。大会はウッド・コースで行われ、レイク・コースが一般客向けに営業されるというのだ。

大会開催時は1日で200人ほどの来場客が予想されるらしく、その一般ゴルファーたちとプロたちとの接触を最低限にするために、レイク・コース来場者はクラブハウスを利用するが、大会に出場するプロとキャディはゴルフ場に付設する練習場の建物を使用し、ゴルフ場入場段階から接触を遮断するという。

また、一般来場客がウッド・コースに立ち入ることがないよう両コースの間にロープを設置し、立ち入りを一切認めないというが、はたしてそれができるだろうか。

何しろ前述した通り、韓国はもちろん、アメリカや日本で活躍するトッププロが一堂に集うのだ。その姿を見ようとする野次馬が出ても不思議ではない。

それだけに一抹の不安も残るが、KLPGAは大会の成功に自信を持っている。

出場選手全員にも事前に問診を受けることも義務化。クラブハウスに立ち入ることができるのは発熱検査後で、ラウンド開始後はもちろん、各ホールのたびに選手やキャディには消毒を義務付ける。選手同士の距離間隔も2メートル確保を徹底させるらしい。

いずれにしても、日本、アメリカ、韓国とそれぞれ主戦場が異なる選手たちか一堂に集う「ゴルフスター総出動」「スターたちの戦争」だ。今後発表が予定されている追加の防疫対策を含め、引き続き注目していきたい。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

慎武宏の最近の記事