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選手のツバ吐きも禁止せよ。再開が現実味帯びてきた韓国プロ野球のコロナ対策

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
(写真提供=SPORTS KOREA)

プロ野球がない週末が続いている。日本だけではなく世界各国で新型コロナウイルスの影響で各種スポーツの延期・中止が相次いでいるが、それは韓国でも同じだ。

3月28日に予定されていた韓国プロ野球のKBOリーグも依然として新シーズン開幕が延期になったままだ。

各球団は紅白戦などをしながら来るべき新シーズンに向けて調整に励んでおり、『スポーツソウル』の単独取材によれば世界的なスポーツチャンネルとして有名なESPNもアメリカでの中継に興味を示しているというが、ファンの間では「このまま春が終わってしまう」と嘆く声も聞かれる。

ただ、韓国でもようやくプロ野球再開の可能性が高まってきた。

中央防疫対策本部は昨日4月19日、前日の新型コロナウイルスの新規感染者数が8人だったことを発表。一日の新規感染者数が一桁台で収まったのは61日ぶりのことで、対策本部会議に出席した丁世均(チョン・セギュン)首相が「今も現在の社会的距離(ソーシャルディスタンス)を置く根幹を維持しながらも、一部制限については緩和する」とし、「野外スポーツも無観客試合などで危険度を下げることができれば可能だ」とした。

つまり、“無観客試合”という条件付きながらプロ野球やKリーグといった屋外で行われるプロスポーツの試合開催を容認する方向であることを示したのだ。

この一報はKBOリーグにとって大きな追い風となる。

というのも、韓国野球委員会(KBO)は4月21日から本拠地が近い球団同士でオープン戦的な位置づけの“交流戦”を行うことを決めていた。1チーム当たり4試合ずつ、計20試合を4月27日まで無観客試合で行ない、来るべき新シーズン開幕への布石にしようと考えていた。

そうした中で政府も無観客試合を容認したことは大きい。

もともとKBOはシーズン開幕日を決定するための基準として、“社会的な雰囲気”を最重視。3月初めから毎週、緊急理事会や実行委員会(団長会議)を開き、韓国政府の新型コロナウイルス対策を基準にしながら開幕日を議論してきた。韓国政府が大丈夫だと判断してこそKBOリーグも開幕できると考えていただけに、今回の緩和は大歓迎というわけだ。

もっとも、感染者数が大幅に減っているとはいえ、まだまだ安心はできない。そのためKBOでは「KBO新型コロナ対応統合マニュアル第2版」を4月16日に発表し、新型コロナウイルスの予防と安全対策を徹底させている。

そのページ数は計44ページ。かなりのボリュームなので、その内容も細かくかなり厳しい。

(参考記事:選手に審判、バッドガールまで遵守求める「プロ野球コロナ対応マニュアル」の中身がスゴい

例えば球場別に選手や関係者の移動動線を細かく定めているだけではなく、選手たちは起床直後に1回、球場に出発する直前に1回の発熱検査を毎日実施し、KBO独自のアプリを使ったチェックリストに報告しなければならない。

それだけではなく、試合中はフィールド内とダッグアウトを除くすべてのエリア(ロッカールームを含む)でマスクの着用が強く奨励され、選手同士の接触も制限。素手でのハイタッチや握手などの接触を控えるよう勧告されている。試合中に唾を吐く行為に至っては、強く禁止されている。

審判はもちろん、ボールボーイやバットガールなど、試合にかかわるすべての関係者はマスクと衛生手袋の着用も必須という徹底ぶりなのだ。

4月21日から始まる“交流戦”ではこのマニュアルが適用され、状況に合わせて追加事項や修正を加え、さらにマニュアルを補完していく方針だというのだからKBOが新型コロナウイルスの予防と安全対策にどれだけ細心の注意を払っているかが、わかるだろう。

いずれにしても韓国国内の新型コロナウイルス感染状況が収束に向かい始めていることで、待望の“球春到来”も見えてきた韓国プロ野球。

“交流戦”が始まる明日4月21日には、KBOの緊急理事会も予定されているが、そこで一気にシーズン開幕日も決めてしまうかもしれない。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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