Yahoo!ニュース

謎の「再陽性」も報告されているが…効果も副作用もある韓国の“徹底”コロナ対策

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
(写真:Lee Jae-Won/アフロ)

日本で連日のように新規感染者数が過去最多を更新し続けているなか、韓国では新規感染者数が落ち着きつつある。

4月6日から一日50人前後となり、4月9日39人、4月10日27人、4月11日30人、4月12日32人、そして4月13日25人と、減少傾向もうかがえる。施設での集団感染の懸念や“再感染”の報告もあり、まだまだ油断できる状態ではないが、2月20日(16人)以来、もっとも少ない新規感染者数を記録した。

韓国の感染者数は4月13日0時現在、累計1万537人。日本の1.5倍ほどだ。ただ累計51万8743人が検査を受けた結果でもあり、新規感染者が増加の一途をたどっている日本とは状況が違うように見える。

韓国で新型コロナの脅威が落ち着きつつあるのは、徹底した防疫対策によるところが大きいだろう。アメリカのメディアも「韓国国民は安全のために一時的に個人の自由を放棄してでも、防疫予防のヒントを実践した」と評価している。

自宅隔離の指示に従わなければ懲役か罰金

なかでも徹底されているのが自宅隔離だ。

韓国では4月1日から入国者全員に2週間の義務隔離を実施しており、自宅隔離者が防疫当局の措置を無視し、意図的・継続的に隔離を拒否する行為をした場合、「懲役刑の実刑を求刑する」(韓国大検察庁)という。

自宅で隔離されるべき人が勝手な行動をとった場合、法的な処罰を受けるということだ。

改正された感染症の予防及び管理に関する法律(感染症予防法)によると、防疫当局の入院または隔離ガイドラインに違反した者は、1年以下の懲役または1000万ウォン(約100万円)以下の罰金刑に処される。

ここまで徹底しているのは、逆にいえば、ルールや決まりを守らない人が少なくないからだろう。

実際に4月10日、自宅隔離を指示されたソウル在住の20代女性が、それを無視してスターバックスや焼肉レストラン、トンカツ専門店などに通ったことがわかり、自治体が「感染病予防法違反の容疑で警察に告発する計画だ」と明かしている。

(参考記事:スタバに行っただけなのに…新型コロナ感染で隔離中27歳女性に何があったのか)

自主隔離や防疫当局に従わない有名人も

また、3月には韓国国立バレエ団のダンサー、ナ・デハンが自宅隔離期間中に日本旅行をした騒動もあった。

国立バレエ団は2月14~15日に大邱(テグ)オペラハウスで行われた『白鳥の湖』の公演後、大邱および慶尚北道地域で新型コロナが急速に感染拡大した事態を受け、自主隔離の実施を決定した。全職員と団員に2月24日から3月1日までの1週間、自宅隔離をするよう求めたが、ナ・デハンは恋人と旅行を楽しんだのだ。

騒動となると国立バレエ団は、3月2日に謝罪文を公開するとともに、その後開かれた懲戒委員会でナ・デハンを解雇処分にした。

日本でも感染が報じられたSUPERNOVAユナクも、韓国中央防疫対策本部から厳重警告されている。

韓国芸能人の感染第1号となったユナクは、3月24日に日本から韓国に帰国し陽性反応が出たのだが、防疫当局の調査を受けた際、曖昧な陳述を逃れようとする傾向を示したため、防疫当局が厳重警告を出したのだ。

韓国中央防疫対策本部は「新型コロナの疫学調査はすべてのケースが非常に重要であるため、積極的な協力が必要だ。もし嘘をついたり、故意に事実を欠落・隠蔽したりすれば、感染症予防法に基づいて2年以下の懲役または2000万ウォン(約200万円)以下の罰金に処されることがある」と強調した。

家族写真を上げて袋叩きに…指摘が細かすぎる?

防疫当局の指示に従わない人が処罰の対象になるのは理解できるが、韓国のネット上では自粛ムードの反動からか過剰な“叩き”もある。

例えば、K-POPガールズグループ「AFTERSCHOOL」出身のカヒは、在住するバリの海辺で子供と撮った写真をSNSに投稿してネット上で袋叩きにあった。

カヒは「私は過去に多くの愛情を受けた芸能人でもあるが、今はただの母親だ。海に出たのも、ただ親の心」と訴えたが、非難は収まらず、カヒの名前が連日ポータルサイトのリアルタイム検索ワードに上がった。

またKBSアナウンサー出身のパク・チユンも、インスタグラムに「楽しかった50分間ほどの登山を終え、疫病のなかに咲く家族愛を実感し、カフェに向かった」というコメントと、子供を連れて知人や家族と行った旅行写真を掲載し、炎上騒動となった。

誰もが自粛しているのに、海や旅行の写真を上げるのは不適切だという指摘だ。

いずれにしても徹底したコロナ対策で一定の成果を上げている韓国。その影響から生じている副作用も少なくないが、今は耐えるしかないだろう。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

慎武宏の最近の記事