『チャングム』『オクニョ』を生んだ“韓国時代劇の巨匠”が語る韓ドラの未来

イ・ビョンフン監督(写真=スポーツソウル)

“韓国時代劇の巨匠”と呼ばれるイ・ビョンフン監督。その代表作をひとつ選ぶのは難しい。

『ホジュン 宮廷医官への道』(1999年)は韓国で平均視聴率47.1%、最高視聴率63.7%を記録しているし、『イ・サン』(2007年)、『トンイ』(2010年)はNHK総合テレビをはじめ多くのチャンネルで日本でも再放送されている。

直近作である『オクニョ〜運命の女(ひと)〜』(2016年)でイ・ビョンフン監督の存在を知った人々も多いことだろう。

ただ、日本でイ・ビョンフン監督の名が知られるきっかけとなったのは、やはり『宮廷女官チャングムの誓い』ではないだろうか。

16世紀の朝鮮王朝時代に実在した医女チャングムのサクセスストーリーを描いた本格時代劇は、2003年に韓国で放送され平均視聴率40%、最高57.8%を記録。日本でも2006年、NHK地上波での放映時は、土曜深夜にもかかわらず16%の高視聴率をマークした。

主演のイ・ヨンエも、『チャングム』によって日本でもその知名度が全国区となり、“韓国の吉永小百合”と称されるほどになった。

(参考記事:【秘蔵写真】こんなイ・ヨンエ見たことない!! デビューから大胆な姿までフォトヒストリー)

「私にとっても『チャングム』は特別な作品です。日本のみならず、アジアや中東、アフリカなど100か国以上に輸出されて放映されました。

嘘か本当かは定かではありませんが、以前受けた取材で“イランやスリランカでは視聴率が80%を超えた”と伺いました。

“理解できない”と問い正すと、“チャンネルが少ないからだ”と言っていましたね。韓国では現在、地上波、総合編成、ケーブルテレビを合わせると200以上のチャンネルがあり、そのうち15〜17の局がドラマを制作していますが、視聴率競争が激しく、それによって地上波の広告収入も落ちるなどして大変ですよ」

ドラマを制作・放映するテレビ局が増えて、視聴率競争が激しくなり、特に地上波が広告収入激減に苦しんでいるという韓国ドラマ業界の現状は前回で紹介した通りだが、イ・ビョンフン監督は2019年の傾向として「視聴プラットホームの変化と新たな脅威の出現」を挙げる。

「スマートフォンが普及し、視聴者たちはいつでもどこでもドラマを楽しめるようになりました。本放送を見逃しても、視聴者たちはいつでも好きなときに自分のタイミングでドラマを鑑賞できるわけです。

さらに最近はYouTubeやNetflixといったものも登場した。もはやドラマはテレビだけのものではなくなりつつある。そういった状況が地上波の没落をもたらし、地上波に依存していたドラマ業界は委縮し危機に直面した状態だと言えます」

ただ、“危機が好機”という言葉があるように、視聴プラットホームの変化は追い風でもあると考えるべきだという。

「逆に言えばYouTubeやNetflixなど、以前よりコンテンツを拡散できるプラットホームは増えたわけです。例えばチャングムの場合、韓国での放送が終わったあとに各国に輸出されたわけですが、今ではリアルタイムで各国に配信できる環境が整っています。世界同時にリアルタイムで韓国ドラマを楽しむことも可能なわけです」

実際、Netflixではすでにその試みが始まっている。

韓国ドラマのNetflix配信と言えば、『ミスター・サンシャイン』や『アルハンブラ宮殿の思い出』、『キングダム』などが有名だ。

いずれの作品もNetflixから巨額の投資を受けてそれを制作費に回している。『キングダム』に至っては1話あたり20億ウォン(約2億円)とされた制作費をNetflixが全額負担。日本を含め約190カ国で配信され、今年はシーズン2も予定されている。

新たなプラットホームによって、韓国ドラマの可能性も広がっていく。イ・ビョンフン監督は言う。

「ドラマは文化交流という点でとてつもなく大きな力を持っています。

例えば『チャングム』を通じて世界中の人々が韓国の歴史や文化、風習を知ることになりました。私は今でも『チャングム』関連の行事などで日本に紹介されるのですが、会場に行くと韓国の伝統衣装である“韓服(ハンボク)”を着て来場してくださる方々も実に多いのです。

ありがたいことですし、時勢が時勢だけに文化交流の重要性を改めて実感します。ドラマを通じて互いの国への理解を深められる。こんな素晴らしいエンターテインメントはありませんよ」

ドラマを通じて互いの国の理解を深め、文化交流の一助になる。今年で75歳になるイ・ビョンフン監督だが、今もその情熱は衰えていないという。

それだけにそろそろ次回作も期待したくなるのが、ファン心理だ。『オクニョ』から3年。“韓国時代劇の巨匠“の次なる挑戦に注目したい。