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渋野日向子や鈴木愛と賞金女王を争う申ジエの「日韓ゴルフ交流」

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
申ジエ(写真提供=KLPGA)

女子プロゴルフの2019年ツアーもいよいよ終盤を迎え、賞金女王レースも絞られてきた。

期待と注目を一身に浴びる渋野日向子が3位(1億1995万6420円)に後退した一方で、先週のTOTOジャパンクラシックで優勝した鈴木愛が2位(1億2663万円)に浮上して賞金女王返り咲きを虎視眈々と狙っている。

そんなふたりが追いかけるのが、韓国の申ジエだ。3位の渋野とは約1353万円差、2位の鈴木は約685万円差をつけて、目下、賞金ランキング1位(1億3349万円)にある。

アメリカで活躍する韓国の後輩たちも多数出場したTOTOジャパンクラシックではM.J.ハーやスヒョン・オーら韓国系ゴルファーに次ぐ40位タイに終わったが、申ジエのタイトル獲得に期待を寄せる韓国では「TOTOジャパンクラシック40位タイでも申ジエ1位の座を守った…」(『スポーツW』)と報じるところもあった。

ただ、残り3試合になったことを考えると申ジエもうかうかしていられない。前出のメディアも、「日本ツアーの賞金女王争いは3人に絞られたが、残り3試合はいずれも優勝賞金が高額。その優勝の行方によって賞金女王が決まる可能性がある」としている状態だ。

これからますますその行方か気になるところだが、申ジエにはもうひとつ、気になることがあるという。本日11月12日に韓国の光州で行われる『申ジエ&スリーボンド ジュニアトーナメント』のことだ。

同大会はその名の通り、申ジエと彼女のスポンサーであるスリーボンドが協力して行われるゴルフのジュニア大会だ。2015年から行われており、今年で6回目を数える。

それもただのジュニア大会ではない。第1回は韓国・全羅南道で、第2回〜第5回大会は日本・千葉県で行われ、常に日本と韓国のジュニアたちが参加してきた。

以前、申ジエ本人から大会開催に至った理由について聞いたことがあるが、それは彼女の強い要望だったという。

「私がジュニアだった頃はそれこそ練習がすべてでしたが、韓国と日本のこれからのジュニアたちには技術を伸ばすだけではなく人間性も伸ばしてほしい。そのために私の経験を伝えたいという思いに、スポンサーのスリーボンドさんが賛同してくださって実現した大会です」

ジュニアたちの競技力向上とゴルフを通じた日韓交流を促進させたい。そんな思いが込めて始まった大会で、申ジエのマネージメントを担当し、裏方のひとりとしてジュニア大会を準備してきた金愛淑(キム・エースク)さんによると、今では彼女の“ライフワーク”のひとつになっているという。

「彼女はもともと寄付活動やジュニア育成に関して積極的ですが、韓国と日本で実施しているジュニア・トーナメントに関しては特に情熱を注いでいます。彼女はよく、“ゴルフが今の自分を作った”と言うのですが、そのゴルフで、草の根レベルであっても日韓関係の改善や交流促進に役立ちたいと願っているんですね」

確かにその通りかもしれない。国や育った環境が違っても、ゴルフを通じて互いにわかり合えるし、仲良くなれる。ゴルフが日韓交流の一助になれるかもしれない。申ジエも以前、こんなことを言っていた。

「若い頃から交流していれば、互いに距離感が縮まるし、その交流がやがて貴重な財産にもなる。私だって高校時代に出場した日韓対抗ゴルフ選手権のときの日本人選手たちは今でも仲が良いんですから。そういった機会を、これからプロになる若い世代にもたくさん経験してほしい」

今年は小学生の部で男女各10名、中学生の部で男女18名、高校生の部で男女各18名の計92名の韓国ジュニアと12名の日本選抜選手を加えた合計104名の選手たちで行われるという『申ジエ&スリーボンド ジュニアトーナメント』。

大会の最優秀選手には12月にオーストラリアで行われる『ヴィクトリア・オープン』に出場できる特典も用意されているというのだから、俄然も盛り上がることだろう。

「過去の大会では申ジエ選手本人も自ら大会に参加し、プロゴルファーを目指すジュニアたちと交流を深め、彼女自身もそれを楽しみにしていたのですが、今回は残り3試合となったツアーに集中するために仕方なく見送りました。今年こそ賞金女王のタイトルを手にしたい。そんな思いではないでしょうか」(金愛淑さん)

韓国では3年連続(2006年〜2008年)で賞金女王に君臨し、2009年にはアメリカ女子ツアー賞金女王にも輝いている申ジエ。

日本ツアー本格参戦時から「日本でも賞金女王のタイトルを狙う」と公言してきたし、筆者も彼女の口から直接、「いつかそれができると思う」という言葉を聞いたが、2014年は4位、2015年は3位、2016年は2位、2017年は5位と、近づくようで届かなった。昨年も最終的には2位に終わっている。

日本でも賞金女王のタイトルを手にできれば、史上初の韓米日3か国のツアーで賞金女王になるが、果たしてその快挙達成はなるか。

渋野日向子の巻き返しか、鈴木愛の追い上げか。それとも申ジエが振り切るのか。賞金女王レースはこれからますます熱を帯びてきそうだ。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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