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イ・ボミや申ジエの影響!? 韓国ツアーの“美しき実力者”ペ・ソンウが日本に来たワケ

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
(写真提供=KLPGA)昨年「ハイトジンロチャンピオンシップ」を制したペ・ソンウ

今季から日本女子ツアーに本格参戦しているペ・ソンウをご存知だろうか。

イ・ボミ、申ジエ、キム・ハヌル、アン・シネと、日本女子ツアーで注目を集める韓国人ゴルファーは少なくないが、ペ・ソンウもそんな先輩たちに続く選手になるかもしれない。

今季、14大会に出場(7月9日現在)し、2位2回、3位2回、6位1回と5度のトップ10入りと、たしかな実力を見せている。年間獲得賞金も堂々の11位だ。

さらに韓国時代には、実力と美貌を兼ね備えた選手だけが選ばれる「KLPGA広報モデル」も務めており、日本でもさらなる注目を集めることになることは間違いない。

(参考記事:【写真】イ・ボミやアン・シネも選ばれた「美女ゴルファー」の証!! KLPGA広報モデル10年分を大公開

そんなペ・ソンウとの独占インタビューに成功。2回目の今回は、ペ・ソンウが日本に来たワケに迫りたい。

きっかけは「THE QUEENS」

ペ・ソンウが日本でゴルフをしたいと考えるようになったのは、2015年からスタートした「THE QUEENS」がきっかけだった。

日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)、韓国女子プロゴルフ協会(KLPGA)、オーストラリア女子プロゴルフ協会(ALPG)、ヨーロッパ女子プロゴルフツアー(LET)という、4ツアーによる対抗戦として2015年から行われていね「THE QUEENS」。

ペ・ソンウはその第1~3回大会に出場している。興味深いことに、その3大会に出場した韓国チームのキャプテンは、いずれも日本女子ツアーでプレーする選手たちだった。

第1回大会はイ・ボミ、第2回は申ジエ、第3回はキム・ハヌルだ。

「3大会連続で出場したのですが、1年目はよくわからなくて、単純に日本のゴルフ場でゴルフしてみて、日本女子ツアーでやってみたいなとぼんやり思いました。ボミ・オンニ(姉さんという意味)とも日本ツアーについていろいろいと話しましたが、そのときはまだ確信を持てなくて。

2回目の韓国チームのキャプテンは申ジエ選手でした。同じ大学の先輩なんです。ジエ・オンニと日本ツアーについて話したときに、“私がいる間に日本に来れば”とも嬉しい言葉もいただいて。そして3年目にはキム・ハヌル選手とも日本ツアーの話をたくさんして。そんな3年間があって、本格的に日本でやってみたいと思うようになったんです」

韓国ゴルフ界の“チジョン(至尊)”と呼ばれる申ジエをはじめ、“神セブン”に挙げられるイ・ボミやキム・ハヌルから日本ツアーの魅力を聞き、日本への思いを育てたわけだ。

だからといって、すぐに日本に行こうとはしなかった。まずは韓国で「自分の確固たるプレースタイル」を身につけることが先決だったからだという。

「本当は大学卒業と同時に行こうと思ったのですが、両親と話して、自分の確固たるプレースタイルを身につけて、韓国でトップクラスになってから日本に行くべきだと思いました。しっかりとした実力がなければ、日本に行っても仕方がないと。

昨シーズン、韓国女子ツアーの賞金ランキングで2位になったからというわけではないですけど、ある程度、自分のスタイルを固めることができたと思ったので、今シーズンから参戦しています」

ペ・ソンウは実際に日本でプレーして、いくつか印象が変わったことがあるという。

日韓ツアーの違いとは?

例えば、日本の選手たちに対して抱いていたイメージだという。

「これは私個人というか、韓国人選手の多くが持つ先入観でもあると思うのですが、日本人選手はあまり飛距離が出ないと思っていました。そもそも日本はコースも短いというイメージがあって。

でも実際にプレーしてみると、飛ばせれば飛ばせるほど成績が上がるコースになっていました。何よりも日本の選手も飛ばします。私なんかまったく駄目なようです(笑)。韓国にも飛距離がある選手が多いですが、日本にもそういう選手がたくさんいることに御驚きました」

また、会場を訪れるギャラリーたちの試合の見方にも日韓には違いがあるという。韓国のゴルフ・ファンたちは、特定の選手を応援するために会場に訪れる。一方で、日本のゴルフ・ファンは「プレー重視の印象」を受けたという。

「日本のギャラリーは、美術館のギャラリーのようだという言い方をしますよね。その通りで、日本のギャラリーは、良いショットやナイスプレーを称賛してくれます。日本はゴルフを見にくる、韓国は選手を応援するといった印象です。文化が少し違うようですが、どちらもありがたいことです」

日本のギャラリーからお菓子などのプレゼントもらったときは、驚いたという。韓国にはない文化だからだ。「プレゼントの中にはその地域の名産物やスターバックスカードもあった」と笑うペ・ソンウは、そんな日韓の違いをとても楽しんでいる様子だった。

何よりも、日本と韓国のツアーでプレーする選手たちの印象にも、違いを感じるという。韓国は結果重視、日本は内容重視という印象を受けるそうだ。

「韓国女子ツアーはサファリパークのようで、虎やライオンと戦っている感じがします(笑)。とても怖いです(笑)。すべての試合、すべてのホールで火花を散らしながら熾烈に争うスタイルで、最近は若い選手も続々と台頭してきます。

それに比べると、日本は全体的に結果よりも内容を重視するように感じます。韓国は結果に対する追求が強く、日本は内容に対する追求が強いという特長があると思います」

長らく日本女子ツアーへの思いを持ち、今季からその思いを現実のものにさせているペ・ソンウ。ゴルフの結果で存在感を示しているのはたしかだが、初の海外暮らしに苦労はないのだろうか。

次回は、日本での生活や仲の良い選手などを紹介したい。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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