Yahoo!ニュース

【独占】G大阪・韓国人トリオ特別座談会「僕らがJリーグで“スゴい!!”と思った選手たち」

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
キム・ヨングォン(左)とファン・ウィジョ(撮影:『スポーツソウル』)

J1リーグのガンバ大阪には現在、3人の韓国人選手が所属する。

ロンドン五輪で銅メダルを獲得したあと、2013年にやってきて大阪生活7年目を迎えたオ・ジェソク(呉宰碩)、2017年6月に来日し昨季は16得点を挙げてJリーグ・ベストイレブンにも輝いたファン・ウィジョ(黄義助)、そしてかつてJリーグでプレーし中国・超級(スーパー)リーグでの6年半の経験を経て、今季からガンバ大阪の一員となったキム・ヨングォン(金英権)の3人だ。

オ・ジェソクとキム・ヨングォンはともに1990年生まれの同級生でロンドン五輪・銅メダルメンバーであり、ファン・ウィジョとキム・ヨングォンは現役韓国代表でもある。

「強いガンバ大阪復活のために」(オ・ジェソク談)に力を合わせて大阪で生きる韓国人Jリーガートリオが語る「日本」「Jリーグ」そして「韓国代表」とは?

―出だしから仲の良さが伝わってきますが、3人が揃ってプレーするのはガンバ大阪が初めてですよね。

オ:「ええ。ただ、実は2015年のACLで対戦しています。僕はガンバ、ヨングォンは広州、ウィジョは城南FCにいてグループリーグを戦っているんです。あのときはまさか3人が同じチームでプレーするとは思わなかった」

ファン:「勝ったのはヨングォン・ヒョンの広州。あのときの広州はACLも優勝して本当に強かったからなぁ」

―ヨングォン選手、中国から見たJリーグはどのように映りました?

キム:「古巣のFC東京や大宮アルディージャの試合結果などもチェックしていましたが、リーグが常に白熱しているように映りました。中国の選手たちも、 “Jリーグは難しい相手だ。簡単に勝てる相手ではない”と警戒している選手が多かったですね。中国とは異なるスタイルのサッカーをして、“手ごわい”という印象をJリーグに抱いていましたね」

―ガンバ大阪についてはどうでしょう?

キム:「伝統があり、優勝もたくさんしてきた名門チームという印象ですね。もちろん、今もJリーグを代表するクラブのひとつだと思います。実際にチームの中に入って感じるのは、選手はもちろん、スタッフ全員がふたたび頂点に立とうという意欲にあふれていることです」

―宮本監督からはどんな要求や指示がありますか?

キム:「特別な要求はあるわけではないですね。ただ、大雑把ではなく、チーム戦術に関しては細かい部分まで具体的な指示があります。FC東京や大宮アルディージャでプレーしていたとき、まだ選手だった頃の宮本監督も覚えていますが、監督は僕が思っていた通りピッチ上で起きていることをしっかり把握し、鋭く的確な指示を与えてくれます。それでいて普段は気さくに声もかけてチームの雰囲気を和ませてくれますね」

―キム・ヨングォン選手は広州時代、マルセロ・リッピやルイス・フェリペ・スコラーリなど世界的名将のもとでもプレーしましたが、宮本監督はこれまでの監督よりも年齢が近いですよね。ヒョンニム(兄貴)・リーダーシップという感じでしょうか。

3人全員:「いやー、ヒョンニムではないですよ〜(笑)。やはり監督ですから」

―ウィジョ選手は昨季16得点を記録し、Jリーグ・ベストイレブンにも輝いた。その分だけ、今季はマークも厳しくなったのでは?

ファン:「マークが厳しくなったとは感じませんが、昨年に比べると対戦相手も僕がどんな動きをするかなど研究しているので、少しやりづらくなった部分はあります。ただ、僕としてもいろいろと動き出しのタイミングやパターンを変えながら、DFのマークをかわそうと意識しています」

(参考記事:蔚山現代の元Jリーガーも絶賛!!「ファン・ウィジョは日本を離れて欧州に向かうべき」)

―Kリーグ時代よりも動きに余裕があり、シュートにも迷いがなくなったように見えます。特に意識していることは?

ファン:「城南でプレーしていた頃よりも、Jリーグでは特にペナルティボックスの中でのプレーを意識しています。ガンバ大阪はパスプレーが良くてクロスもどんどん入って来るので、ゴールにより近い位置でポジショニングすることに集中しています。そうすることでチャンスも多くなりますし、最近は枠に収まるという確信がなくとも打てると思ったら迷いなくシュートという感じですね。たとえゴールにならずとも、シュートを打てばポストに当たったりGKのミスを誘発できたりと、次のチャンスが生まれますから」

キム:「ウィジョみたいなタイプのストライカーは相手に難しいよ。マークもしづらいし、ペナルティボックスでの動きが良いので非常に神経を使う」

オ:「サイドにポジショニングしていても、どんどん中に切れ込んでくるからね。もともと能力が高い選手であることはわかっていたけど、いざ一緒に練習してみると“こんなこともできるのか”と驚かされたことは一度や二度じゃない。普通、チームメイトとして一緒に練習していると短所などもわかったりするものだけど、ウィジョの場合は長所が次々と発見できる珍しいタイプだよね」

―チームメイトの先輩だけではなく、アン・ジョンファン、チェ・ヨンス、キム・ドンフンなど歴代韓国人Jリーガーたちもファン・ウィジョ選手を絶賛していますよね。

(参考記事:今だからこそ知りたい!! 韓国人Jリーガー、あの人たちは“いま”)

ファン:「子供の頃に憧れた先輩たちから評価されて嬉しいような照れくさいような(笑)。その期待に応えられるよう頑張らなきゃいけませんよね」

―韓国では1999年にJリーグ得点王になったファン・ソンホンの再来とも言われています。

ファン:「ファン・ソンホン監督は僕が少年時代にもっとも憧れ、たくさん参考にしたロールモデルです。Kリーグ時代に監督と直接話す機会があり、いろんなアドバスをいただきました。現役時代、本当にたくさんの努力をされたようで、話を伺っていて“自分の努力はまだまだ足りない”と痛感したくらいですし、監督と話をして僕の考えも変わりました」

―どんなアドバイスをいただいたのですか?

ファン:「“ストライカーはゴールで語れ”という言葉がもっとも強烈に印象に残っています。得点することにどれだけ執着したか、そのためにどんな努力を重ねたかなど、具体的に話してくれました」

―ファン・ソンホン監督はJリーグで得点王になっていますが、得点王、意識しますか?

(参考記事: 「フンミンはすごい、ウィジョは私より優れている」元J得点王が語る韓国代表2人のエース)

ファン:「シーズンは短くないし長いので、目先の結果に焦ったり急いではいません。しっかりコツコツと積み上げていけば、シーズン終盤には良い位置(得点ランキング)に行けると思っているので、常に良いコンディションを維持することに神経を使いたいですね」

ガンバ大阪の韓国人トリオ(撮影:『スポーツソウル』)
ガンバ大阪の韓国人トリオ(撮影:『スポーツソウル』)

―ゴールのためにはチームメイトとの呼吸も大切ですが、ウィジョ選手の動きをもっとも理解してくれる選手は?

ファン:「遠藤(保仁)選手ですね。僕がどの方向に動き、どのタイミングでパスを受けたいか、よくわかってくれていますし、僕も遠藤選手がボールを持ったらアクションを起こすよう意識しています。呼吸がよく合いますし、質の良いパスがズバズバ入って来る。僕がワンテンポ遅れても正確なパスが来るので、相手のDFにとってはやりづらいはずですよ」

―良いチームメイトに恵まれましたよね。ヨングォン選手やジェソク選手はいかがですか?

キム:「僕は今野(泰幸)選手ですね。今野選手とはFC東京でも一緒にプレーしましたが、当時の僕はまだプロになったばかりの新人。今野選手はすでに日本代表で活躍していたのですが、同じポジションということもあって本当にたくさんのことを教わりました。本当にお世話になった人です。その今野選手とガンバでふたたびプレーできて嬉しいですよ」

オ:「同じポジションであっても面倒見てくれるなんて、本当にありがたいよね。僕もガンバ大阪に来たとき、加地(亮)さんが本当に親身になってくれました。同じポジションでしたから警戒されるかなーと思っていたら、逆にDVDプレーヤーをプレゼントしてくれたり、ホームシックにかかってないかと食事に誘ってくれたり。韓国から来た僕の両親も食事に招待してくれたんですよ!! もちろん、ピッチの中でもたくさんのことを彼から学びました」

―具体的には?

オ:「加地さんの心意気を見習って、試合に出場できなくてもチームのために何が出来るかを考えられるようになりましたよね。選手としてはもちろん、人間としても僕を成長させてくれた加地さんには感謝で一杯ですし、僕にとっては“恩人”のような人ですよ」(つづく)

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

慎武宏の最近の記事