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変わる韓国の兵役。韓流スターやアイドルもOKのスマホ利用で弊害も?

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
義務警察除隊時のチェ・シウォンとチャンミン(写真:Lee Jae-Won/アフロ)

文在寅政権が昨年7月に発表した「国防改革2.0」に基づき、韓国の兵役制度が変わりつつある。

最も大きな変化といえるのは、兵役期間の短縮が決まったことだろう。昨年10月から2週間に1日ずつの割合で兵役期間が短くなっており、2020年6月15日以降はすべての入隊者が本来より3カ月短縮された18カ月の服務へ突入する。

これは現役兵のみならず、俳優チャン・グンソクやイ・ジョンソクなどが務めている社会服務要員や、かつて東方神起のチャンミンやJYJのキム・ジュンスらが属し2023年に廃止予定の義務警察などにも適用されるため、兵役中や入隊予定の韓国スターのファンたちにとっても朗報だ。

(関連記事:2019年、大物韓流スターの除隊ラッシュ続く。除隊するのは誰?予定日はいつ?

ほかにも兵士たちの給与引き上げや、日課後に外出可能(月2回・1日4時間ほど)、規定を破った兵士を軍隊内の留置所に閉じ込める營倉制度の廃止など、さまざまな変化がある。

なかでも特筆すべきは、スマートフォンの使用が可能になることだ。今年の4月から韓国のすべての兵士たちは、日課後にスマホを使って情報検索や動画視聴などを自由に使用できる。

部隊内で電話やパソコンが使えず、社会との断絶が当たり前だった時代もあったことを考えると、これはまさに画期的な出来事だ。社会と隔離された生活を送るということで、「人生の空白期間」「社会との接点が絶たれる日々」とされる兵役だが、その敷居がぐっと下がって芸能人の兵役に対するアプローチも変わってくるかもしれない。

(参考記事:「えっ、そんな理由で?」兵役を免除された20人の韓国芸能人を一挙紹介)

携帯電話の普及したこのご時世、「休暇中の軍人が使う」という理由で公衆電話を残してきた韓国だが、今後は街で公衆電話を見つけることもますます難しくなるだろう。

もちろん、軍隊という特殊な場所で日常を過ごしているため、さまざまな制限もあるという。使用時間は平日の日課後である午後6時〜午後10時、休日は朝7時〜午後10時まで。保安のために撮影や録音、使用時間などを制御するアプリが適用されるが、それでも兵士たちからは歓迎の声が上がっているそうだ。

その一方で、懸念する意見も少なくない。

実際に昨年4月から今年の1月まで試用期間を設けた結果、ギャンブルサイトに接続したり、部隊内部を撮影して生配信したり、AVを視聴するといった191件の不正使用が摘発された。

また、時間外の使用や許可されない機器を無断で搬入したケースもあったという。ここ数年でユーチューバーとして活動する若者も増えているだけに、スマホ使用によるトラブルが完全に無くなるとは言い切れないだろう。

昨今、兵役中の韓流スターやアイドルの写真がSNSなどで上がって何かと話題になってきたが、彼らも日常的にスマホを使えるが、発信はご法度というわけだ。

(参記記事:兵役中のG-DRAGONが別人!? 「ふっくらして可愛い」「イケメン注意」と話題)

スマホや通信機器の使用許可が出たことで、韓国の“正しい未来党”のハ・テギョン議員は「兵士たちの弱音を聞いた親が部隊へ直接抗議しに来る」という可能性を指摘しているが、ありえない話でもなさそうだ。

実際に、韓国陸軍が兵士たちの近況を家族に知らせる目的で製作したスマホアプリには、兵士の親からの無理な要求やクレームなどが相次いでいるという。

新兵教育部隊の関係者によると、「うちの子が手紙を受け取ったか確認してほしい」「うちの子の写真をアップしてくれ」「うちの子は靴の紐がうまく結べないので、面倒をみてほしい」といった書き込みもあったようで、「まるで保育園児のための伝言連絡帳」と皮肉る声も寄せられている。今後は学校ならぬ軍隊でも“モンスターペアレント問題”に頭を悩まされる日が来るかも知れない。

いずれにしても、時代の変化とともに変わっていく韓国の兵役。平和に役立ってほしいと願うばかりだ。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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