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“八百長疑惑”に人気チアへの「セクハラ被害」…韓国プロ野球界が騒がしいワケ

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
アジア大会で優勝を果たした韓国野球(写真:ロイター/アフロ)

韓国プロ野球界が何かと騒がしい。

12月6日には韓国の大手スポーツ新聞『スポーツソウル』が主催する「2018プロ野球スポーツソウル今年の賞」が行われ、日本でも人気の日韓ガールズグループIZ*ONE(アイズワン)が祝賀公演を務めるなど、華やかな出来事も多いのだが、反対に不祥事ともいえる騒動も巻き起こっている。

例えば、韓国プロ野球の一年を締めくくるゴールデングローブ賞授賞式が行われた12月10日。2015年に韓国プロ野球界を揺るがした“八百長事件”の中心人物にあたるイ・テヤンとムン・ウラムが記者会見を開いている。

八百長によって、韓国野球委員会から永久除名された2人。イ・テヤンは記者会見で自分の過ちを認めつつも、「ムン・ウラムは濡れ衣」と主張した。

問題はそこからだ。

韓国プロ野球の“暗部”か

同記者会見でイ・テヤンは自身が八百長に加担した顛末を説明するなかで、数人の現役プロ野球選手の実名を暴露してしまったのだ。彼は「ブローカーのチョ氏から情報提供を受け、八百長に加担した選手たちをなぜ調査しないのか」と検察の調査にまで疑問を呈している。

(参考記事:韓国プロ野球の“暗部”か。八百長の当事者が現役選手の実名を暴露して波紋

さすがにこの暴露の影響は大きかった。

「“八百長疑惑の選手はもっといる”…祝賀の日に波紋」(『JTBC』)、「イ・テヤンとムン・ウラム、八百長加担者の実名公開が波紋…根拠はブローカーの発言?」(『亜州経済』)、「ムン・ウラムの記者会見で言及された投手たち“八百長なんて想像したこともない”」(『聨合ニュース』)などと、韓国メディアも報じた。

実名が公開された選手や所属球団は「事実無根」と反論したが、濡れ衣を晴らす目的で開かれた記者会見で、新たな疑惑が生じる結果となっていることはなんとも皮肉だ。実際に実名を暴露された選手のなかには、ゴールデングローブ賞授賞式に参加できなかった人もいたという。

韓国ではスポーツ選手の多くが引退後の“第二の人生”で壁に直面しており、全体の35%以上が「無職」であることがわかったショッキングな内情がこの夏に明らかになっているが、韓国球界で八百長問題が今も起きている背景には、そうした現実も関係していると言えるだろう。

(参考記事:キム・ヨナ、イ・スンヨプ、あの選手は……引退した10人に3人は「無職」という韓国の現実)

振り返れば今年の韓国プロ野球界は、初の韓国代表専任監督となったソン・ドンヨル監督の辞任や、ネクセン・ヒーローズのメインスポンサー会社の前代表が拘束されて支援が中断されるなど、何かと騒がしかった。そしてそういったアクシデントに対して、韓国野球委員会がうまく対処せず「傍観するだけ」(『スポーツソウル』)で、事態がさらに大きくなる悪循環もあった。

女子高生チアが「セクハラ被害」訴え

そうした地に足がつかない雰囲気のなかで、つい先日には三星ライオンズ所属の現役女子高生チアリーダーが“セクハラ被害”を訴えている。

(参考記事:韓国の現役女子高生チアリーダー、ネット民からの“セクハラ被害”を訴え

今回のセクハラ被害はネット民によるものなので、直接的には韓国野球界と関係ないかもしれないが、韓国NO.1チアリーダーといわれるパク・キリャンなども以前、「チームが負けていると物を投げつけられることがある。トマトをぶつけられた」と話していた。

チアリーダーのなかにはアイドル並みの人気を誇り、アン・ジヒョンなど人気男性誌の表紙を飾るほどの人気者もいるだけに、彼女たちを守る対策も今後は必要だろう。

年間観客数が800万人を超え、サッカー以上の人気を誇っている韓国プロ野球。アジア大会優勝など成果も多かった。いまや韓国の“国民的スポーツ”となっているからこそ、華やかな舞台の裏で起こっている不祥事や疑惑の解決を願うばかりだ。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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