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BTS(防弾少年団)問題、日本のファンたちの意見は? 東京ドーム周辺で聞いてみた!!

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
BTS初のドーム公演に大勢のファンたちが駆けつけていた(写真:ロイター/アフロ)

日本と韓国の両方で連日のように報道されているBTS(防弾少年団)の『ミュージックステーション』出演中止騒動。韓国の一般紙では社説でも取り上げられ、今や芸能ニュースとしてだけではなく、政治ニュースとしても扱われる様相だ。

そんな現状にBTSのファンたちはどんな感想を持っているのだろうか。それを探るために昨日11月13日、『防弾少年団 BTS WORLD TOUR'LOVE YOURSELF'~JAPAN EDITION~』と題されたコンサートが行われた東京ドームを訪ねた。

電車を降りて駅を出てまず驚いたのは、人の数だった。平日の午前中だというのに10代から20代前半の女性たちが数多く、中にはキャリーバッグを引きずる母娘の姿もあった。

「報道は毎日、目にしています」と語ったのは山梨県在住のAさん(30代)だ。韓国の報道もチェックしており、日に日に事が大きくなっていることには気を揉んでいるという。

そんな心配を助長させるように、白山通りと外苑通りが重なる水道橋交差点では一人の男性が街頭演説しながら「日本を嫌う連中なのだから今すぐ帰っていただきたい!!」と声を荒らげていた。

街頭演説する人もいた。(写真:著者撮影)
街頭演説する人もいた。(写真:著者撮影)

ただ、足を止める人はいない。道行く人々の大半がファンだったこともあって、ほとんどが笑顔でその場を通り過ぎていた。

午後になると東京ドーム周辺はあちこちで行列が出来ていた。グッズ版売、ファンクラブ窓口、何かの整理券を待つ列などで、どこに行っても人だかり。

過去に韓国・高尺(コチョク)ドーム公演で、グッズ購入のために並んでいたBTSのファンと警備員がトラブルを起こしたことがあると聞いていたので一瞬、不吉な予感も過った。

(参考記事:ライバルグループを侮辱…防弾少年団・EXOファンの“仁義なき戦い”)

人ごみをかき分けなければ前に進めなかったほどだったが、パニックが起こることも騒然とすることもなかった。

仕事柄、これまで何度か韓流スターやK-POPアイドルたちの東京ドーム公演の会場を見てきたが、“ARMY”と呼ばれるBTSのファンたちはマナーが良い印象も受けた。韓国には“サセン”と呼ばれる一部の悪質ファンもいたりするのだが、それらしき姿も見かけなかった。

「友人がBTSにハマッていて自分も好きになり、ファンクラブに入ってチケットが当たった」と嬉しそうに語っていたのは、横浜在住のBさん(10代)だ。

「BTSの魅力は何かと聞かれても困ってしまう。楽曲も好きだし、生きていてくれるだけでありがとうと言いたい」

Bさんの友人で厚木から来たというCさん(10代)も、「『Mステ』の出演キャンセルについてなんとも思わない。日本に来てくれて、ドームでコンサートをしてくれるだけでもありがたい」と、チケット片手に満面の笑みを浮かべていた。

そんなファンたちの笑顔とは対照的に目についたのは、制服姿の警備員の数だった。女性が多いだけに余計に目立ったのかもしれないが、サラリーマン然とした姿で見回る者もいれば、スーツ姿の警察官らしき男性をあちこちで見かけた。

その数の多さは筆者が経験したこれまでの東京ドーム公演取材の中でも異例の数。それだけ厳戒態勢だったということだろう。警備員たちの表情にはピリピリとした緊張感が漂っていた。

そんなことも気にかけず、東京ドーム外周の柱に巻かれたメンバーたちのポスターを記念撮影するファンたち。

取材したファンたちに好きなメンバーを尋ねると、「ジョングッ」「ジン」「シュガ」「ナムジュン(RMの本名)」、「テヒョン(Vの本名)」「ジェイホープ」と人それぞれで、事の発端となったTシャツを着用した「ジミン」と答えるファンも多かった。

千葉県から来た40代のDさんも「BTSはとにかくパフォーマンスが素晴らしい。その中でもジミンのダンスは本当にカッコイイ」と大絶賛していた。ジミンは特に10代に人気があると思っていたので意外でもあったが、彼女はこんなことも言っていた。

(参考記事:米国の10代向け雑誌、BTSのJIMINを絶賛!!「冷えきった心を溶かす笑顔」)

「ドームツアー前のタイミングで騒動が起きてしまって騒がしいけど、ファンとしてはただ彼らのパフォーマンスを楽しみたいだけ。BTSのこれから? 報道されている通りに今後テレビでBTSを見られなくなったら残念だけど、こんなに人気のあるグループを起用できなくなったらテレビ局も視聴率が取れなくなって困るんじゃない?」

ファンゆえにBTS擁護に回るのは当然だとしても、テレビ局のことを心配するのは少々的外れなような気がした。2012年夏以降、K-POPアーティストたちの露出が減って終息していった“第2次韓流ブーム”を目の当たりにしてきただけに余計にそう思った。

ただ、この日、東京ドームで話を聞いたファンの口からは今後についてもネガティブな声は聞こえなかった。

「今回の騒動で離れたファンもいるだろうけど、私たちは彼らの音楽が好きだから」 (20代女性)

「政治と文化は関係ないと思っている。(今回の騒動が)気になったりしたことはない」(10代女性)

「今回の騒動に関して僕らファンのほうからは何も言えない。今、一番いろいろと考えているのはメンバーたちだと思うし、これからのこともBTSが決めることだと思うので」(10代男性)

好意的で寛容なのがファンというもの。それだけに危機感も事態の深刻さを懸念するような声が少なかったのは、当然だったかもしれない。

ただ、十人十色の意見があるのが世の中だ。

昨日の東京ドーム公演でメンバーのジミンは「ARMYの皆さんだけではなく、全世界の多くの皆さんが驚かれ、ご心配されたと思います。本当に心が痛いです」と語り、公演直後には彼らが所属するビッグヒット・エンターテインメントがついに沈黙を破って公式見解を発表している。

(参考記事:BTSの所属事務所が一連の騒動について公式謝罪。「成熟な対処」の声)

ファンはその言葉をどのように感じたのだろうか。日本と韓国の世論は、どう受け止めるのだろう。引き続き注目していきたい。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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