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羽生結弦の対抗馬となるか。「羽生に似ている」韓国の新星チャ・ジュンファンとは?

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
2018オータムクラシックでのチャ・ジュンファン(左)(写真:松尾/アフロスポーツ)

10月20日に開幕したフィギュアスケートのグランプリ(GP)シリーズ。

今季から実施されたルール改正も注目されるなか、先週末に行われた第2戦スケートカナダでは、男子シングルの宇野昌磨が逆転優勝を果たした。

男子シングル日本勢の活躍に期待が集まっているが、昨日11月2日に開幕(男子シングル種目は本日3日から)した第3戦のフィンランド大会で特に注目されているのは、羽生結弦だろう。

今年2月の平昌五輪で66年ぶりとなる五輪連覇を果たした羽生は、今季初戦となった9月のオータムクラッシックでも見事に優勝を飾っただけに、GP初戦となるフィンランド大会でも注目度が高い。

韓国も、羽生には関心を寄せている。

もともと羽生は韓国で知名度が高く、“ウセンキョルヒョン”という別名も付けられ、韓国ファンが立ち上げたファンサイトが存在するほど人気を集めていた。

平昌五輪当時は、韓国メディアもこぞって羽生の快挙を取り上げていた。

(参考記事:【画像あり】韓国カメラマンが撮った羽生結弦。記者会見から練習、スホランとのツーショットも!!

ただ、今回のGP第3戦フィンランド大会では、韓国のフィギュア・ファンたちが羽生を注ぐ視線がこれまでと少し異なっている。羽生は今大会、韓国代表のチャ・ジュンファンの“ライバル”として注目されているのだ。

「羽生と似ている」チャ・ジュンファンとは?

チャ・ジュンファンは、韓国フィギュア界で絶大な人気を集める選手だ。

韓国男子選手として史上初めてジュニアグランプリ(GP)ファイナルで銅メダルに輝くなど、早くから才能を発揮して注目を集めてきた17歳。平昌五輪にも韓国男子選手として唯一出場し、韓国男子歴代最高成績となる15位に入った。

韓国では、キム・ヨナの登場以降、女子では平昌五輪で7位に入った“フィギュアの妖精”とされるチェ・ダビンなど“ヨナ・キッズ”たちが台頭しているのに対し、男子フィギュアではなかなか有望選手が現れなかった。

そんななかで国際大会で実績を積み重ねているチャ・ジュンファンに期待が集まっているわけだが、韓国期待の新星は話題性も十分だ。

というのも、チャ・ジュンファンは羽生結弦のコーチでもあるブライアン・オーサーから指導を受けている。

オーサーは、かつてキム・ヨナを五輪金メダリストに導いた指導者でもあるため、韓国でもその名はよく知られているが、そんなオーサーが「チャ・ジュンファンは羽生に似ている」と発言したことも大きな話題になった。

(参考記事:羽生結弦の師ブライアン・オーサーがチャ・ジュンファンを「羽生と似ている」と絶賛する理由

「チャ・ジュンファンがGPを揺らした」

何より、今シーズンのチャ・ジュンファンは勢いに乗っている。

初戦となった9月のオータムクラシックでは、ショートプログラム(SP)で90.56点、フリーで169.22点を獲得し、自己最高となる合計259.78点をマーク。銀メダルに輝いた。

オータムクラシックには羽生も出場したが、フリーでは羽生(165.91点)を上回る点数を記録している。

そして、先週末に行われたGP第2戦スケートアメリカだ。

この大会でチャ・ジュンファンは合計254.77点を記録し、宇野昌磨(277.25点)、キーガン・メッシング(カナダ/265.17点)に次いで銅メダルを獲得。韓国男子史上初のGPでのメダル獲得という快挙を成し遂げたのだ。

韓国との“因縁”もある宇野との対決であったこともあり、もともと大会への関心は高かったが、チャ・ジュンファンのメダル獲得には「17歳のチャ・ジュンファンがGPを揺らした」(『ハンギョレ新聞』)とメディアも大喜びだった。

(参考記事:韓国ファンが宇野昌磨にこんなにも厳しい理由

そんなチャ・ジュンファンが、GP第3戦では“兄弟子”でもある羽生に挑むのだから、二人の対決に韓国が注目するにも当然だろう。

韓国メディアも、「現実的にチャ・ジュンファンが羽生を超えるのは簡単ではないが、羽生と並んで表彰台に上ることを期待したい」(『SBS』)と、羽生を意識しライバル視している。

チャ・ジュンファンは今季GPの出場者のなかでは最年少であり、実力でも経験でもまだまだ羽生に及ばないのは事実だろうが、はたして、勢いに乗る韓国の新星は絶対王者・羽生にどこまで食らいつくことができるだろうか。

韓国も注目する“日韓同門対決”の行方はいかに。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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